加護③
しかし、そのガレアの心配。
それをアレンは払拭する。
「どんな加護があろうと」
響くアレンの声。
ガレアを仰ぎ見、更にアレンは続けた。
「俺は負けない。だから、魔王様」
瞳に闇をたぎらせ、アレンは言い切る。
己の心。
そこに宿った己の思いを吐き出すようにして。
「この世界を、魔物たちのモノに。人間たちの手から、この世界を守る為に」
顔は笑っている。
しかし、その表情はどこか冷たく感情が宿っていない。
言うなれば、まるで仮面のような笑み。
そのアレンの声と表情。
それを見つめ、クリスもまた声を響かせた。
「勇者」
「はい」
「その心に。三度、光が戻ること。それを俺は待っている。どれだけ時間がかかろうと、な。俺はあの時の勇者の表情。それを忘れない。希望に満ち、世界を救わんとしていた……あの顔を」
アレンの側。
そこに歩み寄り、言葉を紡いだクリス。
視線は空に向け--
初めて会った時のアレンの姿。
それを思い出しながら。
そんなクリスに、アレンは応えた。
自分もまた空を見つめ、ぽつりぽつりと。
「光が戻る。そうなれば、いいですね」
虚な瞳。
そしてそのアレンの声に呼応するように、雨が降り注ぐ。
ほつぽつと。
まるで、アレンの心を代弁するかのように。
その雨の中。
ガレアもまた空を見上げ、降り注ぐ雨にその身を濡らし小さく呟いた。
「アレン。我は決してお主を見捨てない。我が城で見せた、あの涙。それを、我は決して忘れぬ」
己の胸中。
そこでアレンに対する思いを織り交ぜながら。




