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竜騎士①

 だが、その空気。

 それを打ち破る、巨大な咆哮。

 そして同時に空を覆う巨大な影。


 それに、面々は上を見上げた。


 瞬間。


「……っ」


 フェアリーの顔。

 そこから余裕が消失し、ふらふらとアレンの足元に墜落。

 その様。

 それは羽を無くし地に落ちた羽虫そのもの。


 だが、アレンの表情は変わらない。


 吹き下ろす、風。

 それに髪を揺らし、アレンはソレを見る。

 どこまでも巨大で、すべての生物の頂点に立つ種族。


 あらゆる侵害。

 それから身を守る深緑色の硬い鱗。

 あらゆる障害。

 それを灰と為す、真紅の炎。

 そして、あらゆる生物。

 それに死の畏怖を与える、そのモノの名。


 それは--


支配者ドラゴン


 アレンの口。

 そこから紡がれる、言葉。


 そのアレンの言葉。

 それに呼応し、更に無数の咆哮が空を覆う。


 同時に。


「よもやッ、このようなことがあろうとはな!! 王の命で偵察に来てみればッ、この有り様!!」


 野太い声。


勇者アレンッ、剣聖クリス!! そして、魔王!! この世界に仇為す不届き者共!! この龍騎士ラグーンがその命ッ、貰い受けるぞ!! 神龍様の加護ッ、それがある限り!! てめぇらなんぞ敵じゃねぇ!!」


 そして更に響く、威勢に満ちた声の反響。


「一匹残らずッ、灰にしてやる!!」


「魔物も人間も全てだッ、この地はもはや地図には必要ない!!」


「はっはっはっ!!」


 ドラゴンの背。

 それに跨り、龍騎士たちはそれぞれのドラゴンに命を下す。


 その瞳に歪んだ光を宿し--


「「燃やし尽くせ!!」」


 響く、命令。

 そこには愉悦が滲む。


 大小様々なドラゴン。

 その開かれた口から放たれる、およそ人では放つことできない巨大な火球。


 静かに、剣の柄に触れるクリス。

 その身から自身の加護をたぎらせ、「万物両断の型」と小さく呟いて。


 ガレアもまた迫りくる火球に手のひらをかざす。


「さて、勇者よ。この状況。お主ならどうする? 神龍の加護。ドラゴンを自在に操る加護……中々に厄介だぞ」


 蒼色の魔力。

 それを纏い、アレンを仰ぎ見るガレア。


 その二人の姿。

 それにアレンは、応える。


勇者オレの加護がひとつ--ほむらの加護」


 アレンの双眸。

 そこに瞬く、真紅の光。

 刹那。

 アレンを含む、街全てにかかる焔の加護。

 それは、火とつくモノ全てを無効化する加護。


 そして、更に。


「風の加護」


 アレンは更に加護を自身に付与。


 アレンの身。

 そこに吹きつける、加護を帯びた風。


 そしてそれは、アレンの身を包み--


 空へと。

 巨大なドラゴンの元へと。

 勇者アレンを導くのであった。

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