表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

32/128

領土拡大②

 轟く、地響き。

 それに人々は逃げ惑う。

 魔物たちの進軍。

 それが目前に迫っているとなれば、それは当然の反応。


「おいッ、さっさと戦闘態勢を整えろ!! このままではこの街も陥落してしまう!!」


 響く男の怒声。

 それは、明らかに殺気だっていた。

 場所は、剣聖の宮殿から少し離れた街。

 周囲に点在する村々より多少は発展している、いわば剣聖クリスのお膝元だった街。


 だが、そこは今や。


「魔物たちがこの街にも迫ってきています!!」


「その数ッ、およそ数十万!! そしてその先頭ッ、そこには剣聖クリス様と、勇者アレン魔王ガレアも!!」


「い、一体なにがあったというんだ!? つい先日まで魔王討伐は時間の問題だ。と噂されていたにも関わらず!!」


 まさしく、混乱の極致。

 だが、剣聖の加護が未だ解かれていないのこと。

 それがせめてもの救い。


 兵たちは皆、剣や鎧を装備。

 ある程度は、兵士としての様相を呈している。

 しかし、その身は震えていた。


「報告ですッ、既にいくつかの村は魔物の手により陥落!! 剣聖クリス様の宮殿ッ、そこも今や魔物たちに掌握されているとのこと!!」


「なッ、なんだと!?」


 血相を変え。


「だとすればッ、この地は既に--」


 おしまいだ。


 そう声が響こうとした、瞬間。


「「きゅっ」」


 大量の羽スライム。

 それが空から飛来。


 そして。


「きゅっ。きゅっ」


 と、鳴き声をあげ、まるで兵たちを鼓舞するかのように薬草らしきものを中から出し渡そうとする。

 それに、顔を見合わせる兵士たち。


「こ、この魔物たち」


「もしかして、俺たちの」


「み、味方なのか?」


「きゅっ」


 飛び上がり、好意的な仕草をとるスライムたち。


 それに兵士たちは頷き、スライムたちから薬草らしきものを受け取っていく。


 そして、気づく。


「こ、これは幻の」


「口に含むだけで」


「戦意を向上させる、鼓舞草!?」


 だが、それは賢さを付与されたスライムたちの計画。


 兵たちが鼓舞草と思って受け取ったソレ。

 それは実は、鼓舞草と瓜二つの眠り草。


 使えば数時間は深い眠りに落ちる、優れものだった。

 それを兵たちは嬉々として使っていく。


 その光景。

 スライムたちはそれを、「してやったり」という雰囲気を醸し見つめていたのであった。


 〜〜〜


「これは」


 眠りに落ちた、兵士たち。

 それを見渡し、ガレアは微笑む。


「お前たちがやったのか?」


「「きゅっ」」


 ガレアの声。

 それに嬉しそうに鳴き声を響かせる、スライム軍団。


 まさしく、無血降伏。

 一切の血を流すことなく、街は魔物たちの手に落ちた。

 その事実に、フェアリーは興奮。


「すげぇっ。これも勇者様の加護の賜物」


 兵士たちの寝顔。

 それを一人一人確認しながら、飛び回るフェアリー。


 そして、アレンもまた。


「流石、魔物みなさんです」


 ガレアと同じように頬を綻ばせ、魔物たちを褒める。

 そんなアレンに、スライムたちは擦り寄っていく。


「きゅっ」


 と鳴き声をあげ、まるでアレンに懐いた動物のように。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ