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進撃①

進軍する、魔物たち。

そしてその先頭。

そこには、アレンを中心にガレアとクリスも居た。


途中に点在していた村。

そこは、「剣聖クリス様の為ならば」と応じ、抵抗することなく村を開放。


その光景。

それは、いかに剣聖クリスが人々に敬われていたかを如実に表していた。


なので魔物たちは一切、人々を傷つけることも村を破壊することもなく--


「これよりこの村は我らの庇護下にはいる」


そうフェアリーは声を響かせ、自由と平穏を約束したのであった。


〜〜〜


「お、おい!! なんだあの軍勢は!?」


「クリス様ッ、クリス様はどうした!?」


「くっ。よもやクリス様まで!!」


砂埃と咆哮。

それが舞い、宮殿へと一直線に向かってくる魔物の軍勢。

その数、およそ数十万。


それを宮殿から見つめ、残った戦力たちは血相を変えていた。


森林に包まれ、それが自然の防壁となる剣聖クリスの宮殿。

だが、それも今や。


勇者の加護。

それのおかげで、木や草。そして岩もまるで自ら意思を持っているかのように道を開ける始末。


木はその幹をくねらせ、草はその身を倒し、岩はコロコロと転がって。


「た、戦えるモノは前へ!!」


「たとえクリス様が居なくともッ、最後の最後まで諦めるな!!」


「「おぉぉ!!」」


響く兵たちの鼓舞。

しかしその鼓舞。

そこには確かに、諦めの思いも漂っていた。


そんな兵たちの姿。

それに、ゴウメイは焦る。


「おッ、おい!! こりゃ一体どういうことだ!?」


声を張り上げ。


「まッ、まさかあの剣聖クリスも勇者と魔王にやられちまったのか!? どうなってんだよ!!」


焦り、汗を散らすゴウメイ。

そしてそれに倣い、マリアもまた焦燥し絶望。


「お、終わりよ。全部終わり」


その場でしゃがみ、マリアは頭を抱え震える。

まるで、処刑間近の罪人のように。


そんな二人に、側に居た女兵士は声をかけた。


「お二人方ッ、ここはこれより戦場になります!! はやくお逃げになってください!!」


しかし、ゴウメイはその女剣士を見据え--


「おッ 終わってたまるか!! 俺はまだ終わらねぇ!! なぁッ、そうだろッ、おい!!」


叫び。


「ぐっ。な、なにを」


女兵士の首。

それを後ろから裸絞めにし、耳元で囁くゴウメイ。


「死にたくねぇなら俺たちを転移させろ。備品置き場にひとつぐらいあるだろ」


「……っ」


「おっと、大声は出すなよ。その気になればこの首をへし折ることもできるんだぜ?」


歪んだ表情と笑み。

それをたたえ、女兵士を脅すゴウメイ。


「それにしても。てめぇ、いい匂いがするな。俺と一緒に来い。さもねぇと、この場でぶち殺す」


「げ、下衆め」


「なんとでも言え。俺はなにがあっても死なねぇ。世界に存在する宿屋。その為にな」


鼻で笑う、ゴウメイ。


そして。


「おら、さっさと備品置き場にいくぞ。マリア。お前も一緒にこい」


そう声を響かせ、ゴウメイはマリアを促す。

だが、マリアは動かない。


頭を抱えたまま。


「終わり。終わり。終わりよ。なにもかも」


そうぶつぶつと独り言を呟き、己の犯した所業に対し後悔の念を発露することしかできない。


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― 新着の感想 ―
[一言] 仲間の噂話程度に聞いた故郷を滅ぼされたって話、裏切った勇者の口から出た身の上話、証拠もなく、確認も取れてない話を何の疑いもなく信じる人(魔王含む)たち・・・
[良い点] この状況でもブレない宿屋の主人。 魔王とフェアリーを堕としたら本物だよ期待してる。 人間側と魔王側の立場が入れ替わっていき、魔王側が腐った人間のようになってきているのが良いね。
[一言] 世界に存在する宿屋のために何があっても死なないってなんやねん。 欠片も意味わからん。 テキトーにも程がある。
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