リリス④
「して、アレンよ」
「はい」
「その小娘。どのようにするつもりだ?」
アレンの肩。
そこに担がれた、リリス。
その幼い人間に、ガレアは興味を示す。
「賢さが皆無。であるなら、我らの先兵として利用するのも手だと思うのだが」
声を発し、アレンの元に歩み寄るガレア。
そのガレアの声。
それにリリスは反応を示す。
「こ、殺さないでください!!」
賢さが皆無。
しかし本能的に死を感じることはできる、リリス。
アレンはそれに、自分のしたことを思い出せる為に加護を付与。
賢さ付与。
瞬間。
その両目。
そこから涙を流し--
「ごめんなさいっ、も、もうあんなことはしません!! アレンもッ、ごめんなさい!! 勇者様の気持ちッ、それを考えずにあんなことをしたわたしを許してください!!」
ガレアとアレンに対し、リリスは助けを求める。
そのリリスの本能に従い、一切の感情を懺悔に彩った表情と声。
それにアレンは、はじめて出会った頃のリリスの姿。
それを思い出してしまう。
"「おっす、勇者様。わたし、リリス。この村で一番の魔法使いなのだ」"
とんがり帽子に、丈のあっていない黒ローブ。
そして、穢れのない純真無垢な瞳。
アレンの頭。
そこに蘇る、リリスの無邪気な笑顔。
"「おっ、なんだねその顔は。ははん……さてはこの私の実力を疑ってるのだね? いいだろう、見せてあげよう。いずれ賢者に至る私のすごさって奴をね」"
自らの額。
そこに手を当て、アレンはソレを闇で塗り潰そうとする。
だが、しかし。
「勇者……さま。リリスは、リリスは」
生を諦めたリリスの消え入りそうな声。
そしてとめどなく滴るリリスの涙。
それに--
「……っ」
声を押し殺し、アレンはガレアにリリスを預ける。
賢さの加護。
それを再び解除した状態で。
その行動。
そして、押し殺された勇者の感情。
それを汲み、ガレアもまた静かにリリスを抱き抱えた。
痣だらけになった、リリスの幼い顔。
そして涙で濡れ、掠れた嗚咽を漏らすリリス。
「ウンディーネ」
「はい、魔王様」
控えていた水精霊。
それに目配せをし、ガレアはリリスを渡す。
「この人間に治癒を。そして我らの駒として使える状態。それにしておいてくれ」
「かしこまりました」
ガレアの意思。
それを受け、リリスへ治癒をかけていくウンディーネ。
その光景。
それをしかし、アレンは見ることはしない。
再びその瞳に闇を宿し--
ゆっくりと。
その足を踏み締め、前へ前へと進んでいったのであった。
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