表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

114/128

雷鳴③

〜〜〜


揺れる、蝋燭の火。

その灯火に照らされ、台座に横たわったその者の身。

そこから漏れるは、仄かな青のオーラ。

そんな亡骸と化した青髪の女性を側。

そこに佇み見つめるは、かつて冥府に支配されし少女。


名はヨミ。

真紅の双眸に、銀色の髪。

その身には黒を纏い、その肌の色はどこまでも白くそして透き通っていた。


ゆっくりと、ヨミは頬を撫でる。

冷たくなった女性の頬。

それを優しく、まるで慈しむように。

そして、名を呟いた。


「らんす、ろっと」


と、掠れきった声で呟いたのであった。


〜〜〜


魔王城。

そこにある、一室。

その中でベッドに腰掛け、アレンは虚な瞳をもって天井を見つめていた。


"「寂しかった。せつなかった」"


聞こえた声。

それにアレンは、問いかける。


「ソフィ。俺は、どうすればいい?」


己の胸中。

そこで痛む心を堪えながら。


滅ぼして欲しい。

救うなんて考えないで欲しい。


「……っ」


頭を抑え、アレンはソフィの声に苛まれる。

そんなアレンの姿。

それを窓の外からこっそり見つめる、フェアリー。

そしてその表情を曇らせ、フェアリーは静かにその場から飛び去る。


"「フェアリーよ」"


"「はい、ガレア様」"


"「アレンの様子。それを伺ってきてはくれぬか? 」"


"「かしこまりました」"


その自分とガレアとの会話。

それを思い出し、「ガレア様。アレン様は色々とお抱えになられております」そう呟き、フェアリーは微かに瞳を潤ませたのであった。


「ガレア様」


「フェアリー、戻ったか」


「はい。あれ? 先代様はどこに?」


「少し席を外しておる。して。アレンの様子は?」


「……」


目を伏せ、玉座に座すガレアの元へと近づいていくフェアリー。

そしてガレアの肩に腰を下ろし、言葉を続けた。


「アレン様はたくさんのお悩み事を抱えておられです。あのバロールとの一件。そして元勇者セシリア様との一件。それにより、たくさんの」


先刻見たアレンの姿。

それを思い出し、フェアリーは涙ぐむ。


「ガレア様」


魔物わたしたちがアレン様の為にできること。それがあれば」


「フェアリーよ」


「はい」


視線を前に向けたまま、ガレアは声を発する。

出会った頃のアレンの面影。それを思い出しながら。


「アレンは強い」


「身も心も強い。そう我は思っておる」


響くガレアの言葉。

それにフェアリーもまた頷く。


「だからこそ」


ゆっくりと玉座から立ち上がる、ガレア、

そしてその瞳に光を宿し、言い切った。


「我はそんなアレンの側にどんなことがあろうと寄り添うつもりだ。たとえ、アレンがこの世界を滅ぼすという選択をとったとしても……我は、アレンの側に」


「ガレア様」


ガレアの意思。

フェアリーはそれを受け、自らまた頷く。


「わたしも。ずっと、ガレア様とアレン様のお側にお仕えします。なにがあっても絶対に」


そのフェアリーの声。

それに微笑み、ガレアは更に言葉を続けた。


「だが、我は信じておる」


瞼を閉じ、ガレアは己の胸に手を当てる。


「アレンのことを。なにがあっても」


反響する、ガレアの声。そこに宿ったガレアの意思。

それは決して揺らがない。

アレンを信じる、ガレアの思い。それは決して。


〜〜〜


「俺の故郷に行ってもいいですか? ソフィに。これまでのことの報告がしたくて」


翌朝。

アレンは、ガレアへと問いかけた。

心の痛み。それを顔に出すことなく、いつもの表情でアレンは声を響かせた。


そのアレンの問い。

それに、ガレアは答えた。


「我に問う必要などない。アレン、お主がそうしたいのなら」


優しく笑う、ガレア。

その笑顔。それにアレンもまた柔らかな笑みをもって応えた。

そして踵を返し、玉座の間を後にしようとするアレン。


その背を見つめ、クリスはアレンに声をかける。


「アレン」


「はい」


「一人で大丈夫か?」


「はい。クリスさん、ありがとうございます」


クリスの気遣い。

アレンはそれに礼を述べ、歩みを進めていく。

胸を抑え、ソフィの面影に痛みを堪えながら。


そのアレンの姿。

それにクリスとガレアは互いに視線を交わし、ちいさく頷き合ったのであった。


〜〜〜

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ