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VSバロール②

自らの身。

それが抗いようのない力に包まれ、滅っせられる感覚。

それに、そのモノは身を委ねた。

死の厄災。そして、勇者ふたりの加護。

勇将と魔眼。それに代わり、世界の光と影になった存在たちの力。バロールはそれを、一身に受けた。


"「ねぇ、バロール。手を組まない?」"


"「わたしと貴方が手を組めば、世界のカタチを変えられるかもしれない」"


「魔眼の、主」


バロールの口。

そこから呟かれる、消え入りそうな声。


〜〜〜


両目に闇をたたえ、玉座に座し微笑む黒髪の少女。

その姿が、消えゆくバロールの頭の中に走馬灯のように浮かぶ。


"「魔眼わたしたちと、勇将あなたたちは終わらない」"


"「ずっと、ずっと。光と影として、この世界に存在し続ける。そうでしょ?」"


バロールの膝の上。

そこに座りこちらを仰ぎ見、幼き魔眼は微笑んだ。


わたし。

あなたとなら。

ずっとこの世界に居てもいいかも。

って、思っちゃった。


バロールの漆黒の魔眼。

そこよりつたう枯れたはずの涙。


「勇者、魔王」


「オマエたちさえ。現れなければ」


「光と影。その席に、とって変わらなければ」


"「バロール」"


「ディ、シア」


崩れゆく記憶。

その中に浮かんだ、消える間際の少女ディシアの儚い笑顔。

それに手のひらを伸ばし、記憶の中のバロールは止まらぬ涙を流し続けた。


「俺は、誓う。この世界に、もう一度。魔眼と勇将。光と影をーー」


ひび割れた記憶の最後。

そこでバロールはそう呟き、少女から魔眼を託された。

加護。そんなカタチをとって。


〜〜〜


「この世界は幾多もの光と影が存在し、そして消えていった。此度の勇者と魔王もいずれは……その存在。その概念ごと消されるやもしれぬな。まだ見ぬ」


天を見上げ、魔王は紡ぐ。


「遥か彼方からこの世界を見下ろす存在に」


響いたその魔王の言葉。

アレンはそれに答えた。

光に飲まれこの世界より消滅していく、バロール。

その朽ちかけた巨体から目を逸らさずに。


「俺は終わらせない」


心眼の加護。

それをもって見た、バロールの決意。

そして、そのバロールが思い続けた少女の儚い願い。

それに、応えた。


"「わたしはいつか。そんな世界を変えたいんだ」"


セシリアの言葉。

そこに込められた、様々な意味。

それが今ならわかる。


〜〜〜


"「ねぇ、バロール。わたしの目、どう思う?」"


"「ど、どうも思わない」"


"「へぇ、なにも思わない? その割には顔が真っ赤じゃない」"


バロールと、ディシア。

そのあり得たであろう未来。

幸せに手を取り合い、微笑み合う結末。

それがあったかもしれない。


〜〜〜


「これまでの光と影の思い。終わらせない。ここで、俺が。いや、俺たちが止める。光と影。その歪な世界の理。それを止めてみせる」


響いたアレンの意思のこもった言葉。

それに、魔王は静かに頷く。

そして、その二人の姿。


それをもはや見ることさえ叶わなくなったバロールは、感じる。

そして、響かぬ声を呟く。


「勇者、魔王。此度の光と影は」


力の失った魔眼。

それをもって、こちらを決意に満ちた瞳で見据え居並ぶ者たちを見渡しーー


"「この世界のカタチを変えることができるかもしれない」"


ディシアの声。

それに目を閉じ、バロールは己の胸中で言葉を紡ぐ。


「ほんとうに、この世界を」


変えてくれるやもしれぬな。


聞こえぬはずのバロールの声。

それがアレンには聞こえたような気がした。


漆黒と真紅。

その光の粒子となり、霧散するバロール。

そして黒と赤の残滓の中、ガレアは息を切らしアレンの元へと駆け寄った。


「アレン!!」


そうやって泣きそうな声を響かせながら。

そんなガレアを受け止め、アレンは魔王へと問いかけた。


「バロールはなぜ。破壊の魔眼で、この世界を」


それに魔王は答えた。


「バロール。あの者は心のどこかでこの世界が変わるのを待っていたやもしれぬ。いつか自分に代わる存在が現れ……そして、自分たちではなし得なかった世界の改変。それを望んでいたのかもしれぬ」


自分たちにとって変わった光と影。

それを憎みつつ、心のどこかで自らの思いを託そうとした。


だから、最初から。


「気を失わせるだけで済ませた」


「い、命拾いした」


バロールの霧散。

その結果により、気を取り戻しその場に佇むクリスとマーリン。


そして。


「セシリア、さん」


「泣くな、スズメ。てめぇが泣いちまったら、俺まで」


「……っ」


セシリアの死。

その現実を目の当たりにし、セシリアの仲間たちは皆、涙を堪え、唇を噛み締めることしかできない。

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