女剣士③
女魔王の気配。
それを感じ、ガルーダは命乞い。
「お、おいアレン。ま、まさかだと思うが……わ、わたしを殺したりしねぇよな?」
装備。
それを失い、加えて筋力が幼子以下になったガルーダ。
かつて、最強と呼ばれた女剣士もこうなってしまえばおしまい。
「な、なぁアレン。わた。わたしと手を組まないか? わたしと組めばあの生意気な魔法使いリリスと、聖女。そ、その二人なんて瞬殺できるぜ?」
先程までの偉そうな態度。
それを忘れたかのような、言い草。
「そ、そうだ。きょ、今日からわたしは勇者のモノになる。な、なんでも言うことを聞く。だ、だから……な?」
そのガルーダの声。
それを、ガレアは遮る。
「ほぉ……なんでも、か」
そのガレアの声。
それに希望を見出す、ガルーダ。
「そそそ。そうだ。なんでも聞く、だッ、だから!!」
「ならば苗床にでもなってもらおうか」
「えっ?」
冷酷な表情。
それをたたえ、アレンの元に歩み寄るガレア。
そして。
「のう、勇者よ。この雌の身体つき。それは苗床にぴったりなのだ。魔物のタマゴ。それを産み落とすには、人の雌が一番いい材料なのだが」
吐き捨て、ガレアはガルーダを蹴り上げる。
べきっ
「うぐっ」
蹴られ、仰向けになるガルーダ。
筋力は幼子以下。
なので受ける衝撃は常人の数倍。
「ほぉ、中々良い筋肉をもっておるな」
ぐりっ
「あがっ」
露わになった腹筋。
それを踏み躙り、ガレアは冷たく微笑む。
そんなガレアとガルーダのやり取り。
それを見つめ、アレンは声を発する。
「魔王様のお好きなように。俺はもう、人間側の勇者ではありませんので」
それに、ガルーダは絶叫。
「おッ、おいアレン!! てめぇッ、ふざけんなよ!! わッ、わたしをそんな目に合わせてみろぉ!! わたしの師匠がッ、あの最強の剣聖様が黙ってねぇぞ!! 撤回しろぉッ、まだ間に合うからよぉ!!」
「耳障りなんだよ、雌犬」
呟き、アレンは解除する。
ガルーダにかかっていた声の加護。
それを、一切の躊躇いもなく。
瞬間。
「……!!」
ガルーダは声を発することができなくなってしまった。
目を見開き、その顔に汗を滲ませるガルーダ。
それを見つめながら、アレンは声を発する。
ガレアに向け--
「これで耳障りな悲鳴を聞かなくて済みます」
それに、ガレアは頷く。
「上質な苗床よ。こやつなら数週間は保つであろう……オーク騎士よ。この雌犬を城に連れていくのだ。そして地下の牢に手足を拘束し、ぶちこんでおくのだ」
「かしこまりました」
ガレアの側。
そこに控えていた巨大なオーク騎士。
その騎士はガルーダを肩に担ぎ、魔王城へと引き返していく。
相変わらずなにかを叫ぼうとしている、ガルーダ。
だがそれは全く以て無意味だった。
そして。
「して。アレンよ」
「はい」
「残ったこやつらは?」
ガレアの声。
それに鼻息を荒くする、魔物たち。
「作戦名--蹂躙。一人残らず」
響くアレンの声。
それに応える、魔物たち。
そして文字通り。
魔物たちは、残ったガルーダの取り巻きたちを情け容赦もなく蹂躙していったのであった。