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小説家になろうラジオ大賞投稿作品

鏡の中の私はきっと何より美しい

作者: 熱湯ピエロ

 私は究極の超然たるイケメンだ。

 絶世の美女と呼ばれる者さえ、私の美貌に屈服して首筋を差し出すことからも、それは疑いようがない。

 かのミケランジェロの彫刻をも超えるパーフェクトグッドルッキングガイなのである。

 ただ一つだけ、問題がある。

 私は私の顔を見たことが無い。


 引っ張る意味もさほど無いのでネタバレするとしよう。

 私は吸血鬼ヴァンパイアである。

 闇夜に美しく舞い、美女の生き血をすする、耽美たんびなる美獣のヴァンパイアなのだ。

 ふっ……我が種族を紹介するだけで『美』という文字を四回も使ってしまったか。この美しさ……罪深い……

 罪深き我が種族は美しき特殊能力の数々を備えているのであるが、その中の一つに『鏡に映らない』というものがある。ご存知の方も多いことだろう。

 ただ、実はこれは正確に記述すると、『いかなるものにも投影・撮影されない』なのである。

 鏡、ガラス、水たまり、吸血相手の瞳の中はもちろん、キャメラ、ビデオ、スマホも駄目。

 自分で自分の顔を見るには、何かに『映る』必要がある。つまり、ヴァンパイアという種族は自身の形姿けいしを生涯確認出来ぬということだ。

 人間の撮影機材の進化は目を見張るものがあるが、それでも……それでも未だ我が美しさは捉えられない。ナイトモードというならば、夜の支配者たる我を映さず何を映すというのだ! ええい、14Sはまだか!

 あぁ、大宇宙のあまねく美を凝縮したであろう私は一体どんな顔なのだろう?

 私以外はこの美を享受出来るのに、何故、本人だけがこの美を享受出来ぬのか?

 はぁぁぁう、見たいぃぃぃぃ! 私の美顔見たいよぉぉぉぉぉ!!

 ……失礼。少々取り乱してしまった。

 美しき者が自身の美しさを知らぬなど、悲劇。悲劇としか言いようがない。

 絵画や3Dスキャナーも試してみたが駄目だ。やはり、我が美は創造物で再現出来るようなものではない。

 私が、私自身のまなこで見ねば、意味がないのだ。

 あぁ……美! 我が美よ! 何故そなたは我が瞳に映らぬ……

 奇跡よ。鏡に我を映せ。神の十字にさえ、私は祈ろう。

 一目でも見ることが叶うなら、この心の臓に杭が打ち込まれようと構わない。

 後悔など、ないはずだ。


 私は千年の今日も、自身の姿を夢見て眠りにつく。

 鏡の中の私はきっと何より美しい。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 絵として描いてもらえば……と思いましたが、それでもダメなんですね。こだわりが強い吸血鬼さん、何だか愉快な性格をしているなと思いました。
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