7,炬燵が届きました。
僕の体の一部を、地球に置いてきてある。
体の一部からの完全再生なら、距離は関係ない。
なので月面から一気に地球まで戻って、完全再生できるのです。
ただそのためには、完全再生が必要なんだよねぇ。
完全再生するためには、体が跡形もなく消滅するしかない。しかし、跡形もなく消滅するための《自爆》を封じられている。
ふむ。楓さん、やりますね。
月面に、大の字になって寝転がった。ふと横を見ると、星条旗が立てられている。
あれが有名なアポロ11号の星条旗だね。近くで見てみよう。
惜しいなぁ。スマホが壊れてなかったら、記念撮影するんだけど。星条旗のポールをつかんでみたら、なんか抜けちゃった。
あ、まずい。戻しておかないと。星条旗を立て直そうとしたとき──ふいに虚空が裂けて、配達トラックが飛び出してきた。
配達トラックは月面に着地し、表土をまき散らす。つづいて運転席のドアが開き、空色の髪をサイドテールにした幼女が降りてきた。
幼女の全身は、地球色の球体で包まれている。幼女が近づいてきたので、僕もその球体の中に入ることになった。
「あ、この球体の中は大気があるんですね」
幼女はクリップボードに挟んだ書類をチェツクしながら、
「うぃーす。【宅配の王】でーす。デリ子とよんでちょーだい。はい、あんた南波知樹またの名をイコライザーだねぇ。じゃ、ここ受け取りサインしてねー」
「あのー。ここ月面って、分かってますかデリ子さん?」
「分かってっから、神格アイテムがひとつ〈環境適応球体〉に入っているんでしょーが。それにね、ウチは宅配のためならどこまでも行くかんね。以前、島流し中のタミ子のため、火星まで行ったかんね、ウチは」
「はぁ。えっと、民子さんですか?」
「はぁ? 違う違う。【終了の王】でタミ子。常識っしょ」
どれだけ幼女が出てくるんだ。
「とにかく、サインしてほら。ウチ、忙しいんだからさ」
「あ、すいません。ところでデリ子さんって、オリ子さんと友達ですよね?」
「【原初の王】のオリ子? ちっ、あいつ貸したカネまだ返してこないんだよね。お宅からも言っといてよ、借りたカネは返せボケって。はい、サインどーも。これ、品物ね」
トラックの荷台が開いて、でかい段ボール箱が浮遊してきた。そして月面に降り立つ。それを見届けてから、デリ子さんが運転席に乗り込んだ。
「あ、デリ子さん。【無限ダンジョン】に戻るんですよね? 僕も乗せていってくれません?」
「あのっさ~。これ、なにに見える? 配達トラックだよね? タクシーでもバスでもないよね?」
「つまり──ダメ?」
「あったりまえだよねぇ。ったく、これだから最近のモンスターは」
デリ子さんは舌打ち連発しながらドアを閉めた。僕は〈環境適応球体〉から弾きだされてしまったので、また死に出す。
一方、配達トラックは走りだし、虚空の裂け目に飛び込んでいった。裂け目が閉じて、元通り。
僕は気を取り直して、段ボール箱を開けてみた。
炬燵のセットが入っている。あとはミカンとお茶で、すぐに日本人の冬を始められるぞ。月面だけど。
〈秘密の部屋〉のおじいさんからのメモも入っている。
『坊主。約束の神格アイテム〈竜の炬燵〉だ。それとよ、温度調節には気をつけなよ』
温度調節?
〈竜の炬燵〉の温度調節ダイヤルを見てみると、最高温度が『竜の息吹』だった。
試しに『竜の息吹』にしてみると、マグマなみの超高温が発生。
僕の体は跡形もなく溶けてしまった。
★★★
地球は我が家の自室に置いてきた、右手の小指の先端。
そこから完全再生。
無事、地球に帰還!
なんか星条旗も持って来ちゃったけど、細かいことは気にしないでいこうよ。
さて、楓さん。ここからは僕のターンですよ。
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