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5,虚無女王さんが来ました。

 


 ──主人公の視点──


 先日、美弥が見つけ出した人物こそが、四代目さん。

 そして今日のために、四代目さんを拉致っておいたのです。


「楓さんも、四代目さんを失うのは痛いですよね? 五代目は育ってないんですから」


 電話相手の楓さんが答える。


[イコ君、イコ君。人肉を見る目というのは、才能なんだよ。四代目の代わりは、簡単には見つからないんだからね]


「楓さん心配しないでください。人質の四代目さんは丁重に扱ってますよ。指一本、触れたりしては──」


 チラッと見たら、美弥が四代目さんの首を切断していた。鼻歌まじりに。


 あれ。僕の妹、『人質』の概念が分かってないぞ。もしくは『人質とは首を切断しておくもの』と勘違いしているぞ。


 まぁいいか。一般市民には手を出さないのがモンスターの掟。とはいえ四代目さんは、同じ一般市民を捕まえては人肉として売っていたんだからね。


[どうかしたのイコ君?]


「とにかく、楓さんが僕たちを殺す気なのは分かっていましたよ。実は僕も、楓さんを殺す気だったんですよー。僕たち、気があいますね」


[大親友だから考えることも同じなんだね!]


「じゃ、四代目さんを迎えに来てくださいね。そしたら、僕と楓さん──2人で決着をつけましょう」


[ボクの家に来てくれてもいいんだよ、イコ君?]


「遠慮しますよ。楓さんのことだから、自邸にトラップとか仕掛けまくっていそうですし」


[で、キミたちは今どこにいるのさ?]


「スマホの位置情報からもう分かっているくせに。じゃ楓さん、待ってまーす」


 通話を終えて、僕はベランダに出た。月明りに照らされた校庭を見下ろす。

 ここは美弥が通っている中学の校舎(つまり、僕の母校でもある)。


 最終的に楓さんには、【無限ダンジョン】に来てもらう計画。

 しかし、はじめの段階で自ら【無限ダンジョン】に来るとは思えない。たとえ四代目という人質があったとしても。


 僕の影から、早苗さんが顔を出す。


「知樹くん。例のスキルだけど、うまくいくか心配」


「大丈夫、早苗さんならできるよ。それに早苗さんが成功したら、僕は嬉しさのあまり『一緒に温泉旅行に行こう』と誘うだろうし」


「知樹くんと温泉旅行! 同じ部屋で一泊! あっ、ここで『ついに知樹とエッチするときが来たよ!』なんて張り切ったことは、口が裂けても言えないよね」


「うん、早苗さん。フツーに心の声がダダ漏れだよ」


 軍用ヘリが低空飛行してきて、視界の上を横切っていった。


「屋上だね」


 僕は美弥と合流して、屋上に向かった。

 軍用ヘリは上空でホバリング中。そしてヘリから降下してきた女性は──


「あ、葉島小夜さんじゃないですか!」


 美弥が右眼を抉り取って以来の再会です。

 ところで──なんで左眼も抉られているんだろうね。


 そして葉島小夜さんは、両目がなくとも僕たちが分かるようだ。視力を失ったことで得た超感覚的な?


「貴様──我が眼球の仇を取らせてもらうぞ」


「え、眼球? 弟さんを殺した件はいいんですか?」


「……は?」


「あれ、ご存じでない? 弟の彰浩さんを、うちの妹の美弥が首チョンパしたことを?」


 しばし小夜さんが無表情になった。まさしく能面のように。ついで、一気に激怒の火炎が燃え上がる。


「貴様らだったのかぁぁぁぁあ、彰浩を殺したのはぁぁぁぁぁ!!」


 本当に知らなかったんだ。どうしてだろ。

 で、気づいた。楓さんが情報を遮断していたのだね。なぜか? それは彰浩さんの居場所を僕に教えたのが、なにを隠そう楓さんだから。


 悪い人だなぁ~。


「兄貴。あの女は、あたしの獲物よ」


 美弥が《闇黒の爪(ダークマター)》を閃かせながら、前に進む。

 対する小夜さんの全身からは、虚無(ゲヘナ)が噴き出していた。触れるだけで、消滅させられる虚無が。


 あれはもう人間というより、《虚無女王(ゲヘナ・クイーン)》。


「おーい、イコライザーく~ん!!」


 ふいに校庭のほうから声がした。

 屋上の縁まで行って見下ろすと、校庭で楓さんが両手を振っている。


 楓さんのそばには、長身の男が一人いる。

個人情報取得プライバシー・ゲット》によると、名前は甲山。

 スキルは《媒介(ミーディエーション)》。能力内容は、他人のスキルを媒介すること。


 ふーむ。何か罠っぽいけど。行ってみようかな!


「じゃカナさんには、美弥の援護をお願いするね」


 カナさんが影から這い出してきた。早苗さんと《影同化シャドウ・シェア》していたのだ。


 さらに早苗さんが《影保管シャドウ・ストレージ》から、〈灼熱の蹂躙者〉ゾンビと〈猟犬野郎〉ゾンビを出す。

 カナさんの腹心たちを。


「了解しました、知樹さん」


「知樹くん、わたしは?」


「早苗さんは、《影跳躍(シャドウ・ジャンプ)》で僕を追ってきてね」


 僕は《自爆セルフプレイ》して、楓さんの後ろに完全再生。


「どうもです、お姉さん!」


 楓さんの後頭部にドリルビットを叩き込む。

 しかし楓さんは余裕の笑みで、振り返る。


「どうもだよ、イコライザー君!」



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