4,大親友!
3日後。
プランの下準備を進めていたところ──
突然、楓さんが我が家にやって来た。
不意打ちが好きだね、この人は。
さて狙いはなんだろう。
「やぁ、イコ君! 良かった、家にいたんだね」
「今日は休みなんですよ。最近、阿修羅さんが張り切っちゃって、僕の出番が少なくて。阿修羅さんって、知ってます? どうぞ、上がってください」
楓さんを客間に通してから、緑茶と煎餅を出した。
「すいません、いまは炬燵がないんですよ」
楓さん、煎餅をかじって。
「ボク、炬燵派じゃないから構わないよ。ところで妹ちゃんは?」
「美弥は【無限ダンジョン】で勤務中ですよ。それでお姉さんは、今日はどんな用事で?」
「うん。雲林院家の金塊のことでさ。よくよく考えてみると、御影を倒したのはイコ君の手柄でもあるわけだし」
「いやいや、お姉さんのおかげでもありましたよ」
「いやいや」
「いやいや」
「で、イコ君に金塊の半分を渡そうと思ってさ。山分けだよ、ね? 金塊は後日、キミの指定した場所に運ばせるよ」
楓さんが自分から譲歩してきた。
ふむ、怪しい。
金塊の件で僕が恨んでいると、楓さんは察知してはいるようだね。
だから金塊の半分を渡す、と言ってきた。
だけどさ、信じられないなぁ。
佐伯楓さんが、せっかく自分のものにした金塊を半分でも諦めたりするかな。しないよね。
楓さんのこの二枚舌。目的は、僕を騙すことだろうけど。
そのうち嘘がバレるのに、そんなことして意味があるのかな?
意味があるとしたら──
ははぁ。
このお姉さん、僕を殺す気だ。
いざ殺すときまで、油断させるための嘘だね。
さては、僕に対する利用価値より『邪魔要素』が強くなったかな。
キッカケは金塊──いや、雲林院御影さんを僕が本当に殺しちゃったことだね。【四徳家】のライバルを潰したかわりに、モンスターのライバルができても困るわけだ。
「お姉さん。金塊を山分けなんて──僕は大感激ですよ」
「イコくん。ボクたち、大親友じゃぁないか。人間とモンスターの垣根をこえて、この友情は永遠に語り継がれるのだ」
「はい。そのうち、辞書で『大親友』を引いたら、僕と楓さんの顔写真が載ることになりますね。『大親友とはこの2人のことだ』と」
「大親友!」
「大親友!」
僕と楓さんは、大親友のハグをした。
ハグしたまま楓さんが言う。
「ところで、そろそろ次の【四徳家】を倒しちゃわない? ボクと、イコ君たちのチームでさ」
僕もハグしたまま答える。
「もちろんです」
「で、イコ君のチームはいつ退院するの? ほら、潮崎佳奈、東浦早苗、小梨祐一の3人だよ」
ふむ。3人の退院する日が気になるのかな?
さては楓さん──僕だけではなく、僕のチームも一網打尽にするつもりだよ。
モンスター病院に入院している間は、命を狙えないからね。
「実は3人とも、退院は明日なんですよ」
「そっか、そっか。じゃ、ボクはそろそろお暇するよ。またこっちから連絡するからね」
「了解です」
楓さんを見送ってから数時間後。
美弥から電話があった。実は美弥も今日は休みで、とあることをしていた。
[兄貴、探していた人間を見つけたわ]
「さすがだね美弥」
★★★
──佐伯楓の視点──
翌日の夜。佐伯家の執務室にて。
楓のもとに、葉島小夜から電話報告があった。
[各班、配置につきました]
葉島は襲撃部隊の指揮を執っている。
そして3つの襲撃班を、東浦家、潮崎家、小梨家の近くに配置させてある。
ちなみに小梨家は新築だ。なんでも古い家には、数か月前イコライザーが大型トラックで突っ込んだらしい。その後、イコライザーが建て替え費用を出したとか。
とにかく、あとは早苗(影女)、佳奈(死体女王)、祐一(蝙蝠男)の3人が帰宅するのを待つだけ。
そこを襲撃して、皆殺し。
仲間が殺されたと知ったら、さすがのイコライザーも激怒するだろう。
そして首謀者が『佐伯楓』と知ったら、この佐伯家に乗り込んでくるはず。
楓はすでに、イコライザーを迎え撃つ準備を整えてある。
ところが──
楓のスマホに、イコライザーからメッセージが入った。
『お姉さん、報告しまーす。小梨くんたち3人の入院が延びました。無期限で、モンスター病院に入院します』
「おやおや、イコ君。ボクの企みに気づいたようだね。けど詰めが甘いなぁ」
葉島小夜に電話して、
「葉島ちゃん、計画変更。標的たちの家族を人質に取るんだよ。いまはモンスターでも、元は人間。家族を人質に取られたら、手も足も出ないでしょう」
[承知しました]
ところが──
数分後、葉島から電話報告。
[各班から報告がありました。どの家も無人とのことです。標的の家族はいません]
「逃げられた? だけど、どの家も見張りを立てていたはず──」
楓はハッとした。
影女の《影跳躍》と《影保管》を使えば──。見張りに気づかれず、全員の家族を避難させられる。
(すると、とっくに退院していたわけかぁ。イコ君、小癪なことを)
ふいにスマホに電話着信。
ディスプレイを見ると、『オイシイ堂』の四代目からだ。電話に出る。
「もしもし四代目。ごめんね、いま取り込んでいるからさ」
しかし応答した声は、四代目ではなかった。
[僕ですよ、イコライザーです。失礼ながら、四代目さんは人質にとっちゃいましたー]
気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。




