3,プランを立てよう。
〈秘密の部屋〉の話を聞いた僕は、勤務中だった美弥と合流。
美弥の配属先は、第2222階層。
「美弥、〈秘密の部屋〉を探すよ。〈秘密の部屋〉では、ダンジョン内のアイテムが創造されているらしくてね」
「あのさ、兄貴。〈秘密の部屋〉もいいけど、佐伯楓を殺すんじゃなかったの? 先日のあの怒りはどこにいったのよ?」
オリ子によると、楓さんのスキルは《残機無限》というそうだ。
残機が無限ということは、僕の《殺しようがない》とかなり似ているよね。
で、どうやって殺そうか?
「美弥。世の中には優先順位というものがあるんだ。楓さんを討つのも大事だし、金塊を取り戻すのも大事だ。しかし、この寒い冬の季節に失った炬燵を手に入れるのは、もっと大事なことなんだよ」
すると美弥は、まるで『祖国が滅んだ!』みたいな顔をした。
「え、兄貴? まさか我が家の炬燵が──」
「僕たちの戦友だった炬燵は、逝ってしまった」
「そんな──」
涙ぐむ美弥を慰めてから、僕は〈秘密の部屋〉なら希望があると話した。
「新しい炬燵を作ってもらうんだ。南波家の新たな仲間を──」
「それで兄貴、〈秘密の部屋〉を見つけられそうなの?」
「テキトーに歩いていたら、そのうちに見つかるんじゃないかな?」
30分後。
テキトーに歩いていたら、〈秘密の部屋〉を見つけた。没個性的な扉を開けると、すべての空間が漂白されたような部屋に出た。
サバンナのように広いのに、地平線が存在しない。奇妙奇天烈な空間の中、300歳くらいのご老人が腰かけていた。
「はじめまして、イコライザーです」
ご老人は驚いた様子で僕を見返した。
「これはとんだお客さんだな。グランド・マスターでなければ、この〈秘密の部屋〉は見つけることも入ることもできないというのに。まさか元人間の新米モンスターが、ここに足を踏み入れるときが来ようとは。
なぁ坊主、どうやって〈秘密の部屋〉を見つけたんだね?」
「テキトーに歩いていたら見つけたんですよ。ね、美弥。あれ──美弥?」
おかしい。美弥の姿がない。
というか、振り返ったら入ってきた扉もないんだけど。
「あの、妹が一緒に入ってきたはずなんですけど?」
「どうやら坊主の妹は、グランド・マスターではなかったようだな」
「はぁ。僕もグランド・マスターになった覚えはないんですけどね」
「グランド・マスターの格付けが出来るのは上のお方だけだ。つまりは、自分の意志でなれるわけでもない。さて、坊主。なにを求めて、この〈秘密の部屋〉に入ってきたんだね?」
「炬燵を特注したくて」
「いいだろう坊主。神格アイテム〈竜の炬燵〉を作ってやる。5日後、取りにきな」
「はぁ、ありがとうございます」
注文がとんとん拍子で済んだので、僕は〈秘密の部屋〉から出ることにした。『出よう』と思ったとたん、目の前に扉が出現した。便利な場所だね。
扉から出ると、元の【無限ダンジョン】内。
目の前に美弥がいた。
「美弥、いま〈秘密の部屋〉に行ってきたよ」
「はぁ? 兄貴、なに言っているの? ずっと一緒にいたじゃない」
「え、美弥とずっと一緒に?」
おかしいな。僕だけ〈秘密の部屋〉に行っていたのだから、その間、美弥の前から僕は消えていたはず。
それなのに美弥は、僕とずっと一緒にいたという。まさか偽物の僕がすり替わっていたわけじゃないだろうし。
もしかして、〈秘密の部屋〉の中にいるあいだは──。
「ふーむ。美弥、思いついたかもしれない」
「何が?」
「佐伯楓の殺しかた」
そのためには、プランを立てなきゃだね。
気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。




