1,すべては炬燵が壊れたことから始まった。
雪が降り積もる休みの日でした。
我が家の炬燵が壊れたのは。
炬燵とミカンは日本人の外せぬ嗜み。それはモンスターになってからも同じこと。
新しい炬燵を買いに行こうとして、僕はハッとする。
「【無限ダンジョン】にあるんじゃないかな?」
というわけで、【無限ダンジョン】へ向かった。
第656階層まで降りて、阿修羅さんを捜す。
「どうもです、阿修羅さん」
阿修羅さんたちは、最上級国民パーティとの激しい戦闘の最中だった。
僕もつい反射的に、《地獄神》を召喚するところだった。しかし残念なことに、僕は休日の身。オンオフの切り替えって大事。
「おお、これはイコライザー様。御用でしょうか?」
交戦中の阿修羅さん。
その6本ある腕から、破壊光線が発射される。
容赦なき破壊光線は、近くにいた最上級国民さんを両断していった。切断しても血が噴き出ないのは、破壊光線が切断面をこんがり焼いているから。
さすが第656階層フロアボス、ここぞというときは威厳があります。
「阿修羅さん、【無限ダンジョン】のアイテムリストって持ってます? ちょっと見せてほしいなと思って」
【無限ダンジョン】内に配置される宝箱。その中に入っているアイテムの一覧は、フロアボスだけが所持できる。
第1階層でフロアボスしていたころ、僕もアイテムリストを持っていた。けど配置替えのとき返却したのだった。
「構いませんが。アイテムリストをご覧になって、どうされるのですか?」
「炬燵を探そうと思って」
「炬燵……ですか?」
最上級国民さんの一人が、僕に向かって斬りかかってきた。青紫色に輝く長剣の刃が、僕を頭から一刀両断。
すぐに完全再生。
阿修羅さんが、僕を斬った最上級国民さんを引きちぎっていた。
「この下等生物が! 【魔物の王】を斬るとはいい度胸だな!」
僕の通り名、多すぎじゃありませんかね。
けどダンジョン起業したら、【魔物の王】とか名乗ってもいいかも。響きがいいよね。
「イコライザー様、炬燵をお探しとのことですが」
「我が家の戦友だった炬燵が逝きました」
「でしたら、ご近所のホームセンターに行かれたほうが早いのでは?」
「ふっふっふっ。阿修羅さん、まだまだ甘いですね」
「なんと! さすがイコライザー様でございます!」
「まだ何も言ってないんですけど」
「【無限ダンジョン】アイテムの炬燵のほうが、市販の炬燵より性能が良いはずだ。そういうことでございましょう、イコライザー様?」
「まさしくそうです」
「深いお考えです。さすがイコライザー様でございます!」
「うん、どうもです」
こうしてアイテムリストを借りて、さっそく炬燵を探す。
35分後、【無限ダンジョン】アイテムに炬燵がないことが判明した。
「バ、バカな……お役立ちアイテムの中に、炬燵がないなんて」
「イコライザー様。この№5687〈灼熱毛布〉で代用はできませんでしょうか?」
「阿修羅さん。毛布と炬燵は似て非なるものですよ。うーん。にしても炬燵がないなんて、考えもしなかったなぁ」
「でしたらイコライザー様。〈秘密の部屋〉に行かれたらどうでしょうか?」
「〈秘密の部屋〉?」
「はい。【無限ダンジョン】アイテムを創造しているのが、〈秘密の部屋〉なのです。〈秘密の部屋〉ならば、イコライザー様のための特別な炬燵を創造してくれることでしょう」
「分かりました、阿修羅さん。行ってみます! で、〈秘密の部屋〉ってどこにあるんです?」
「不明です。〈秘密の部屋〉ですので」
……阿修羅さん。
★★★
──佐伯楓の視点──
『オイシイ堂』にて。
四代目が、商品を生きたまま解体するのを眺めながら、ふと楓は思うのだ。
(イコライザー君、利用価値よりも『邪魔要素』のほうが強くなってきたね)
商品──つまり人肉用の人間が悲鳴を上げながら走ってきた。腰を途中まで切断されたのに、よく動けるものだ。
楓が蹴とばすと、腰の残りが千切れて上半身がもげた。
うごめくハラワタを見ながら、なんとなく決断。
(イコ君、妹ちゃんと一緒に殺しちゃおー)
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