3,相手が上司でも、自分の主張はちゃんと言おうね。
やっと早苗さんたちが入院している病室に到着。
「みんな、お見舞いに来たよ~」
早苗さんがベッドから飛び上がって、僕にタックルした。
たぶん早苗さんとしては、抱きついたつもりなんだろうけど。
「うげっ」
仰向けに倒されたとき、後頭部を激しく損傷。地味に死んだので、完全再生。
「あの早苗さん、地味に殺さないで」
「知樹くん会いたかったよー! 知樹くんの匂い、好き~! くんくん」
「早苗さんは、欲望に忠実だなぁ~」
美弥が早苗さんの脇腹を蹴とばす。
「ちょっと変態。いい加減、兄貴から離れなさいよ」
とりあえず早苗さんを押しやってから立ち上がる。
小梨くんは仏頂面でベッドに座っていた。巨大コウモリのサイズにあった、でかいベッドです。
「小梨くんも、もう大丈夫そうだね。でもなぜ不機嫌そうなの?」
早苗さんが僕の耳元で囁く。小梨くんには聞かせたくないようで。
「雲林院綱紀に歯が立たなかったのが、悔しかったみたいだよ。もっと強くなりたいみたい」
小梨くん、勝手に修行パートとか入りそう。
一方、カナさんは掛け布団にくるまって丸まっていた。
「カナさんはどうしたの? まだ具合が悪いの?」
「ううん、佳奈さんの肉体損傷は回復済みだよ。ただ──昨夜、暴走したことを恥じてるみたい」
「あ、そうなんだ。僕はてっきり暴走中に人肉食べたのを引きずっているのかと」
掛け布団を蹴散らすようにして、カナさんが起き上がる。青ざめた顔で(ゾンビだからもともと顔色は悪いけど)。
「わたし──まさか人肉を???」
早苗さんが僕の脇腹をつついて、小声で言う。
「知樹くん知樹くん、人肉喰いの件はまだ話してなかったんだけど」
「……カナさん、ゾンビにとって人肉を食うのはおかしなことじゃないから。人間がフライドチキン食べるようなものだから」
ここで美弥が余計なことを言う。
「けど人間だって生の鶏肉は食べないわよね。人肉を食べるにしても、焼くでしょ普通。せめてレアでしょ」
カナさん、泣き出す。ゾンビなのに涙腺が機能してるって凄いよね。
「やっぱりわたしは、もう人間じゃないんですねぇぇ!」
美弥がカナさんを指さして、冷ややかに言う。
「ねぇ、兄貴。あそこのゾンビ女は、なにを今更なことを言ってるの?」
「人肉を食べる一線を越えたので、より自分が人間ではなくゾンビであることを実感したんじゃないかな」
ふいにカナさんが泣き止んで、晴れやかに言った。
「分かりました。わたし、これからはもっとゾンビとしての自覚をもって生きます! 人肉もばりばり食べていきます!!」
美弥がまたカナさんを指さして、
「あのゾンビ女、立ち直りが早いわね」
「カナさんは不幸の星のもとに産まれたような人だからね。いろいろと鍛えられてきたから、メンタル強度は高め」
とりあえず、みんな元気そうで何よりだ。新しいダンジョン・マスターに呼ばれてもいるので、僕はそろそろ行こう。
「じゃ、みんな。またダンジョンで会おうね」
早苗さんが哀願するように言う。
「知樹くん。また元のメンバーで第1階層に配置替えされないかな?」
「うーん。これから新しいダンジョン・マスターと会う予定なので、ちょっと頼んでみるね」
モンスター病院を後にして、エレベーターに乗り込み最下層へ。
そこで待っていたのは、レスラーのようなヒト型の巨大カエル。このカエルが、髑髏の玉座に座っていた。
おお、これはまたオリ子とはタイプの真逆なダンジョン・マスターだなぁ。
「イコライザーです、ただいま参りました」
「我が名はバルバロ。
貴様がイコライザーかぁ。【取締役会】の主義に反し、地上に出ては最上級国民を狩る愚か者。ついには【四徳家】にまで手を出しおって。貴様のような秩序を乱す者は、【無限ダンジョン】に必要ない。よって解雇する」
「解雇? つまり追放的な?」
「そうだ追放だぁ! ただちに【無限ダンジョン】から出ていけぇえ!」
「ふむ」
僕はてくてくとバルバロの前まで歩いていく。
バルバロが首を捻った。
「なんだ?」
《地獄神》を召喚し──バルバロの眉間を貫く。ぐぉぉぉ。
「ぎゃぁぁぁあああああアアアアアアアアアああああああ!!! なにをするんじゃぁぁぁぁあああああぁぁあ!!!」
「これは不当解雇です。断固として拒否します。殺してでも拒否します」
相手が上司でも、自分の主張はちゃんと言おうね。
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