2,王を狩る魔物たち。
新しいダンジョン・マスターからの呼び出しかぁ。
まてよ。現ダンジョン・マスターからしたら、僕は前ダンジョン・マスターであるオリ子のお気に入り。なんか冷遇されそう。
エレベーターで最下層に向かう前に、モンスター病院に寄って行くことにした。
昨日、雲林院綱紀という人に、小梨くんと早苗さんは負傷させられている。あとカナさんは暴走しているときに、全身の関節が外れたとか。
病院に入ると、美弥が1階の自販機のところにいた。
「美弥もお見舞い?」
「ええ。ねぇ兄貴、噂は聞いた? あたしたち、雲林院家を滅ぼしたことになっているわよ」
「らしいね。それで、美弥としてはどうなの?」
「複雑ね。当主の御影を殺したのは、兄貴なわけだし。その弟を食ったのはカナ。だから雲林院家潰しのほとんどは、あたし達の手柄といっていいわけよ。けど、利用されるのは腹が立つわよね」
受付で早苗さんたちの病室を尋ねよう。
受付ではナース服を着たオークさんが働いていた。ナース服がはちきれているけど、何も言うまい。
「すいませーん」
と声をかけるも、作業中らしく対応は冷ややか。
「いま忙しいんだよ、見てわかれ」
そんな対応に、美弥が怒る。かつて飲食店でバイトしていたころは接客態度が完璧だった、美弥なのだ。
「ちょっと、ちゃんと対応しなさいよ。小梨祐一、潮崎佳奈、東浦早苗の3人よ。病室はどこなの?」
「人間が入院してるわけねぇだろボケ」
美弥が《闇黒の爪》を出したので、僕は慌てて止めた。
「美弥、落ち着いて。人間の名前じゃダメだって」
改めて僕は、みんなのモンスター名を口にした。これが【無限ダンジョン】に正式登録されている。
「影女、蝙蝠男、アンデッド・クイーンの3体なんですよ」
とたんオーク看護婦さんが叫んだ。
「えぇぇぇえ! それは元第1階層レジェンド・メンバー、【王を狩る魔物たち】のお三方ではないですかぁぁ!」
「え、【王を狩る魔物たち】? そんな中二病っぽいグループ名だったかなぁ? でも元第1階層メンバーなので、そうです」
ふいにオーク看護婦さんが、何かに気づいた様子で。
「ま、ままままままままま、まさか──あなた様がたは、【王を狩る魔物たち】の中心となる兄妹、【悪鬼羅刹を統べる兄妹】では?」
「え、【悪鬼羅刹を統べる兄妹】? そんな中二病っぽいグループ名だったかなぁ? でも兄妹なので、そうです」
「お、おおおおお! も、申し訳ございませぇぇぇぇぇん! まさか生きるレジェンドの方々でしたとは! なんとお詫びすれば──右腕を捥ぎます!」
本当に右腕を捥いだので、受付に血だまりが出来た。オークって、変わった種族だね。
とにかく早苗さんたちは、3人で同じ病室にいるそうだ。
「どうもです」
1階の廊下は、モンスターたちで混雑していた。するとさっきのオーク看護婦さんが怒鳴る。
「元第1階層のレジェンドであらせられる【悪鬼羅刹を統べる兄妹】がお通りだぞぉぉぉぉおお!!」
一瞬、廊下のモンスターたちが僕と美弥を見て固まる。そして大慌ててで廊下の左右にどき、壁に張り付くようにした。
そして、優勝パレードみたいな歓声と拍手。
「四徳家がひとつ雲林院家を潰した伝説の方々だぞ~!」
「時の支配者である雲林院御影を倒したのは、あの方らしいぞ!」
「きゃぁぁイコライザーさん素敵ぃぃぃ!」
「見ろ、女も子供も八つ裂きにされた猫娘さんだ! 同じネコ族モンスターとして、オレも誇らしいぜ!」
「あなたたちは【無限ダンジョン】の希望だぁぁあ!」
美弥は楽しそうに歩いていく。
「これは気分がいいわ。ほら、兄貴も歓声に応えなさいよ」
手を振って上機嫌な美弥。
「……僕はとても恥ずかしいんだけど」
こういうのは苦手です。
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