1,オリ子、発見される。
翌日。
──主人公の視点──
まだ生存しているタピオカ店で、オリ子を発見した。
制服を着て、だるそうに働いている。オリ子の正体を知らないと、ただの児童労働にしか見えない。見た目は幼女だし。
というか、オリ子はなぜあんなところで働いているんだろう。
店内に入って声をかけた。
「オリ子さん、こんなところで何してるんですか?」
「なんじゃ、イコか。昨日、雲林院家を潰したそうじゃな? しかし一族郎党まで皆殺しとは、よくやるもんじゃ。幼児の心臓さえも抉りだしたとか。わらわの弟子がこんなに成長して、ちょっと感動してしまったのじゃ」
「いえいえオリ子さん。さすがに幼児の心臓を抉りだす鬼畜じゃないですよ、僕は。優しいモンスターですし」
オリ子は周囲を見回して、
「どこに優しいモンスターがいるのじゃ?」
「……」
メニューを見て注文。
「この黒糖タピオカミルクというのをください」
「ほら。これは店の奢りじゃ」
おしゃれな容器に入った黒糖タピオカミルクをカウンターに置いて、オリ子はそう言った。
「店長に怒られるんじゃないですか?」
「この店は、わらわの友達の店じゃから問題なしじゃ」
「はぁ」
タピオカって、ただのプニプニした変な球体だよね。
「ところでオリ子さん。たしかに雲林院御影と弟の綱紀は、僕らが殺しましたけどね──」
昨夜。
雲林院邸に戻ったところ、暴走中のカナさんが男の人を食らっていた。早苗さんによると、その犠牲者は御影さんの弟だとか。
ちなみにカナさんの暴走は、つむじを突くことで正気に戻した。
その後、警察が来る前にと雲林院邸から撤収したわけだけど──
僕と美弥を抜かした全員が、モンスター病院に入院することになった。なかなかタフな戦いでしたね。
「一族郎党には手を出してませんよ」
オリ子が楽しそうに笑って、
「ならば、お主たちは罪を着せられたようじゃな。最上級国民たちの間では、『【無限ダンジョン】のイコライザー一派が雲林院家を皆殺しにした』と噂じゃぞ」
ふーむ。当主とその弟を殺したのは事実なので、『一部に真実の混ざったフェイクニュース』ということかぁ。
「誰がそんな噂を流したんですかね?」
「最上級国民どもに影響力を持つ者じゃろうな。その者の言葉ならば、疑う必要がないというほどの。すなわち、【四徳家】のどこかじゃ──いや、いまは【三徳家】じゃなぁ」
ということは、佐伯楓さんしかいないじゃないか。
うーん。フェイクニュースを流したのが楓さんならば──。
雲林院家の一族郎党を皆殺しにしたのも、楓さんでは?
「なーんか、いいように利用されちゃいましたよ」
「などと言いつつ、とくに怒っているわけではないようじゃが?」
「まぁ、楓さんとは友達みたいなものですし。それに最後には、僕が殺しちゃいますし」
「我が弟子、イコよ。ひとつ聞かせて欲しいのじゃ──タピオカの何が美味しいのじゃろう?」
「というか、タピオカ店ってもう絶滅したと思ってました」
オリ子はしみじみと言う。
「タピオカブームが終了したからこそ、ウチのような優良店が生き残ったのじゃなぁ」
「ところでオリ子さん、【無限ダンジョン】のダンジョン・マスターは辞めたんですか? オリ子さんがいなくなったせいで、僕たち第1階層メンバーは散り散りになったんですよ」
そもそも、オリ子が僕をスカウトしたことが、全ての始まりだというのに。始めた者が一抜けするなんて、けしからん。
ところでタピオカのぷにぷにが、なんか癖になりだした。
「それは仕方ないのじゃ。【取締役会】の決定には逆らえんのじゃよ」
「え、【無限ダンジョン】に【取締役会】なんかあったんですか。だって取締役会って、株式会社にあるものですよね?」
「お主の知っている取締役会とは、少し異なるがの。ただ【無限ダンジョン】を会社と見て、ダンジョン・マスターを代表取締役と解釈すると分かりやすいのじゃな。
【取締役会】の過半数の決議で、ダンジョン・マスターを解任することが可能じゃ」
「えー。自称【三千世界のラスボス】のオリ子さん、解任されたんですかぁ」
オリ子は遠い目で言う。
「人生は辛いのじゃ、イコよ」
「実感がこもってますねぇ」
タピオカミルク片手に【無限ダンジョン】に行くと、呼び出しがかかった。
現在のダンジョン・マスターが、この僕に会いたいそうだ。
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