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16,生肉とレアは違うんだよ。

 

 ──早苗の視点──


 早苗が、身を隠して様子をうかがっていたところ──

 雲林院綱紀が邸内へと入っていく。


 早苗はハッとした。

 先ほどまで邸内の玄関ホール(体育館なみに広い)では、カナが暴走していた。綱紀に見つかったら、戦闘になるのは避けられない。


 不安になって、外の窓から玄関ホールを確かめたところ──暴走カナは姿を消していた。どこか別の場所に移動したようだ。


 早苗はホッと一安心。


(雲林院綱紀と佳奈さんが鉢合わせする危険は、とりあえず回避できたみたい。このうちに佳奈さんを見つけて、暴走状態を解除できたらいいんだけど)


 ところが一安心したのも束の間。

 綱紀を追って、巨大コウモリが邸内へ飛び込んでいったのだ。つまり小梨祐一が。


「潮崎さん、いま行くぞ!」


(えー! 小梨くん、なにしてるのー!)


 どうやらカナを助けにいったらしい。仲間想いなところは高評価だけど、余計なことを。

 あと、先ほど撃たれた翼は自然治癒したよう。


 早苗は外の窓から、玄関ホールをうかがう。


 巨大コウモリの登場にも、綱紀は慌てた様子はない。冷ややかに見やると、言った。


「兄者を襲撃したというモンスターは、貴様か? まさかと思うが、兄者を殺してくれたというのは本当なのか? 真実ならば礼を言うぞ、モンスター」


(うわぁ。あからさまにお兄さん嫌いだよ、あの人。やっぱり弟って、兄にコンプレックスを抱くものなのかなぁ?)


 小梨はようやく、カナがこの邸内にはもういないことを知った。つまり『オレは何しにきたんだ?』状態。蝙蝠的に天井にとまって、綱紀を見下ろす。


 外から様子をうかがいつつ、早苗は念じた。


(逃げよう、小梨くん! 知樹くんも美弥ちゃんもいないんだから、ここは逃げの一手しかないよ!)


 ところが小梨は、ここで謎のモンスター魂を燃え上がらせた。


「四徳家だか何だか知らねぇが、お高くとまりやがって! このオレが、ぶっ殺してやるぜ!」


 そして綱紀めがけて滑空する小梨。


(小梨くーん! そこはおとこを見せなくていいんだよー!)


 綱紀が片手を持ちあげて、手のひらを小梨へと向ける。


「雑魚の分際で、この私に歯向かうか!」


 次の瞬間、小梨は床に倒れ伏していた。両翼と胴体に氷の槍を突き刺されて。


 一方、綱紀は踊り場の上まで移動している。まるで瞬間移動したように一瞬で。


「時を操れるのが、兄者だけと思ったか? 我が《時間支配タイム・ドミネーション:3秒限定》を舐めるな! 3秒のあいだ、時間停止できる私は最強だ!」


 早苗は思った。


(あ、3秒限定なんだ。お兄さんが無限に時間停止できるなら、スキルの差は歴然。そりゃあ、コンプレックスも抱くよね)


 とはいえ、綱紀が脅威であることは事実だ。3秒限定とはいえ時間停止が可能で、氷魔法も得意。

 これまで早苗が戦ってきた敵の中では、たしかに『最強』だ。


(勝てないと思うけど、小梨くんを見捨てられないよね。知樹くん! わたしは、行くよ!)


影跳躍シャドウ・ジャンプ》で、綱紀の影まで移動。そして背後から奇襲の《影弾シャドウ・ブレット》を連射。


 奇襲は成功し、綱紀に着弾! 

 ただ残念なのは、綱紀の防御力の高さ。与えられたダメージは、軽微だ。


「小癪な真似を!」


(逃げきなゃ!)


影跳躍シャドウ・ジャンプ》で逃げようとした早苗。

 ところが──気づけば、床に転がされている。しかも胴体に氷槍が刺さり、床に釘付けにされていた。


「あぅぅ!!」


 早苗は激痛に苦鳴を上げる。たった3秒でも、時間停止されている間にここまでされるなんて。


(やっぱり相手が悪かった、みたい──)


 綱紀の右手に、新たな氷槍が出現。その穂先を、早苗の顔へと向ける。


「この私にダメージを与えた罪は重いぞ。死ね、この売女ばいたが!」


 早苗は目をつむった。


(知樹くん、最後にもういちどだけ会いたかったよ!! というかこの人、『売女』呼ばわりとか失礼しちゃうよね! わたしの純潔は知樹くんのため取ってあるんだから! ……………あれ?)


 いつになっても刺されない。それどころか──


「や、や、やめろぉぉぉぉ!!」


 間違いない。綱紀の悲鳴が聞こえる。それと、


「ムシャ、ぐちゃり、ムシャ、ぐちゃ、ムシャ」


 という咀嚼と肉を噛み千切る音がする。


 恐るおそる目を開いた。

 すると──


 暴走モードのカナが、綱紀に伸しかかっていた。そして、無我夢中で肉を食らっている。もちろん何の肉かといえば、綱紀の人肉を。


「うぎゃぁああああああぁぁあ!! や、やべろぉぉぉぉおお!! た、食べるなぁぁあ、私を食べるなぁぁぁぁあああああ!!! この私はぁぁぁぁ雲林院家だぞぉぉぉぉおおおおおおお!!!」


 絶叫する綱紀。

 早苗は不可解だった。なぜ時間停止して逃げないのだろうかと。


(あ、もしかして綱紀の時間停止は連続発動できないとか? だよね。連続発動できたら、事実上は無限に時間停止できちゃうもんね)


 だから綱紀は時間停止で逃れることもできず──生きたまま喰われている。


 カナはまず綱紀の首を噛み千切っていた。そのため出血量が凄まじい。急激な失血で、綱紀が弱っていく。


 抵抗が弱くなったところで、綱紀の腹部へと狙いを移動。

 そして腹から食らいだした。綱紀の体内へと顔を突っ込んでは、肉を噛んで引っ張って千切って、ムシャムシャ。ゴクリ。


「あぎゃぁぁぁかかかがががががかかかかかかかぁぁぁぁぁぁ私、私、私のぉぉぉハラぁぁぁワタをぉぉぉぉぉ引きずり出すぅぅぅなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああ!!!」


「ムシャムシャ」


 早苗はカナの食べっぷりを見ながら、心配していた。


(生肉はレアと違うんだよ、佳奈さん。あとでお腹を壊さなきゃいいんだけど……)




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