15,✓✓✓✓✓…………阿鼻叫喚。
──佐伯楓の視点──
「えー、豚の皆さん。豚の皆さん」
という楓の問いかけに、雲林院家の連中はみな当惑した顔。
楓はギョッとした。まさか、まさか──通じていない?
「あのね、いまの『豚』というのは、キミたちのことだよ? なんなのキミたち。生まれてから一度も侮辱されたことないので、こんなあからさまな『バカにされている言葉』にもピンと来ないわけ。マジで豚なみの脳味噌ですねぇ!」
ここまで懇切丁寧に説明してあげたところ、やっと通じた。
雲林院家の分家の若いのが怒鳴る。
「このクソ女! 俺たちを誰だと思っている! 偉大なる雲林院家だぞ!」
楓はあきれ果てた。だいたい雲林院家というのは、【四徳家】の中では最も下等だった。金儲けしか能がない一族として。
ところがその状況を変えたのが、『時を支配できる』当主の出現だった。そういえば、御影は最年少で家督を継いだのだ。
とにかく、楓は雲林院家の能無しどもにはウンザリ。
(いやぁ、イコライザー君が最上級国民どもを殺したがる気持ちも分かるね。これはもう腐ってる。富と権力で堕落しているだけの糞を詰め込んだゴミ袋じゃぁないか。
ボクが立て直すしかないよ。この国が──すっかり腐乱死体になる前に──さぁ)
楓は《収納》先から、人をダメにする座椅子を取り出し。座った。
「この≪終末シェルター≫の鍵は、ボクが持っているよ。ボクから奪わなきゃ、鍵を開けて地上には出られないってことだね。
そこでキミたち豚どもに、100秒チャレンジで~す。100秒のあいだ、ボクは何もしません。そのあいだにボクを殺せたら──キミたちは生きてここから出られる。シンプルでいいよね♪」
そう言い終えるのと同時に、楓の頭部が消えていた。
先ほどの分家の男が、《死神鎌》で刈ったためだ。
首なしの楓の体が拍手した。
それから頭部が再生される。
「いまの容赦ない一撃には、17点~」
「どけ村雄!!」
《死神鎌》の村雄がどくと、その後ろから別の男が火炎弾を猛射してきた。《火弾連射》だ。
せっかく再生したばかりなのに、楓は全身に火炎弾を浴び──跡形もなくなった。
そして不死鳥のごとく、灰から完全再生。
「惜しい! 惜しいよ! ボクはいま、ちょっと死んだ気がしたもんね! 三途の川の向こうで、おばあちゃんが手招きしていたし! 『のびちゃんのお嫁さんをひとめ見たいねぇ』とか言っていたような──あ。それは別のおばあちゃんか」
「殺せないのなら、凍結するのみだ!!」
ここで出てきたのが、雲林院晤郎。
晤郎は、御影の伯父。つまり御影の父親(すでに故人)の兄にあたる。
御影の父親が先代だったので、晤郎は弟に家督を取られたわけだ。ようは弟(御影の父親)のほうが優秀だったということ。
それでも現状、晤郎は綱紀に次ぐ雲林院家の№2の実力者(御影がくたばったので)。
そんな晤郎が放った《氷河》で、楓は瞬時に冷凍睡眠状態にされてしまった。
晤郎が勝ち誇って言う。
「死ぬことで再生するのならば、死なせずに動きを封じれば済む話だ」
ほかの雲林院家の連中が、晤郎を称えた。
「さすが晤郎さんだ!」
「御影さまにもしものことがあっても、晤郎さんがいてくれるなら安心だ!」
「俺は前々から思っていたんだよ。先代が亡くなられたとき、年若き御影さまではなく、貴方こそが雲林院家を率いるべきだったって!」
現金な奴らだなぁ、と楓は思う。
晤郎もまんざらではない様子。
そして約束の100秒が終了した。
楓は《自害》を発動して、死亡。
これで《残機無限》が発動し、氷漬けとは違う場所で完全再生。
「はい残~念!」
「な、なんだとぉぉぉ!」
衝撃を受ける雲林院家の連中。とくに晤郎の落胆ぶりといったら。
このとき、すでに楓は準備を終えていた。
雲林院家の全員に、✓を入れたのだ(頭の上あたりに)。ただしこの✓は、楓の視界内によるもの。当人たちには見えない。
楓は《神殺し》を取り出し──ふと悪戯心である真実を口にした。
「皆さん。実はね、ボクは本当の意味では、佐伯楓ではありません」
この言葉を理解できたのは、ただ一人──晤郎だった。
驚愕の表情を浮かべ、
「ま、まさかお前は──」
楓は《神殺し》を捻った。
《神殺し》の力で、体内から心臓を引きずり出す。
✓を入れた全員の心臓を、一斉に。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁああああオオオオオオオオオオオオ……!!」
「いやだぁぁぁぁぁあああああァァァァァアアアア……!!」
「ママぁぁぁぁああああああああああああ……!!」
「わ、わしのしん、し、しん、心臓がぁぁぁああきぎぁぁぁぁぁぁあアアア……!!!」
「こんなバガナアァァァあぁぁぁぁぁあああああ……!!!」
生きたまま心臓を引きずり出されて死んでいく人たちの阿鼻叫喚。
「男も女もお子様も、雲林院家の血を引く者は皆殺しでーす♪」
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