14,その名は《残機無限》。
──佐伯楓の視点──
佐伯家には【四徳家】に非常事態が起きた場合、呼集をかける権限があった。
【四徳家】を守るための制度だが──今回はそれを悪用させてもらおう。
都内某所にある《終末シェルター》。
終末世界に備えた核シェルターで、ほとんど地下都市の規模。【無限ダンジョン】の、モンスターしか入れない第50階層の都市にも似ている。
楓の呼集によって、雲林院家の一族がこの《終末シェルター》に集まった。
「やぁ~諸君。大急ぎで悪かったねぇ」
雲林院家の連中を見回す。分家の連中も含めると、とんでもない数だ。佐伯家のように『子殺し』しとく習慣がないと、こうなる。まるで豚の群れ。
ここで楓は内心で舌打ち。
(うげげ。綱紀とその一派がいないじゃん)
しかし、綱紀にこちらの企みを勘付かれたわけでもないようだ。それならば、ここに集まってきた者たちにも警告していたはず。
となると──たんに佐伯家の呼集には従いたくないということか。または御影が殺されたという報告を信じなかったのか。
そこまで考えて、楓は(逆に好都合かもよ)と思い直した。
御影の生死を確かめるため、綱紀は雲林院本家に向かうだろう。そこでイコライザーたちと鉢合わせすれば──
(雲林院家の№2も、イコライザーくんたちに片付けてもらえるかもねぇ)
いずれにせよ、綱紀など問題ではない。雲林院家がでかい顔できていたのは、当主の御影がいてこそ。
つまり御影亡きいま──雲林院家など【四徳家】にふさわしくない。
(というわけで、みんな生きてる価値なーし)
雲林院家のご意見番である〈爺や〉が口を開く。ちなみに〈爺や〉といっても、まだ50歳くらいだが。
「御影さまが殺害されたというのはまことですか?」
そのように伝えられたからこそ、雲林院家の連中は呼集に応じたくせに。
しかし改めて楓の口から、じかに聞きたいらしい。まだ半信半疑なのだろう。
「さよう、さよう。雲林院御影くんは殺されたのさ。とあるモンスターに──イコライザーという奴に」
「な、なんと!」
「まさか御影さまが……」
「これは国家の一大事だぞ!」
「悲劇だ! 悲劇だ!」
雲林院家の豚たちが騒然となる。
まさか御影が仕留められるとは、夢にも思っていなかったのだろう。《時間支配》を持つ御影は、歴代の当主の中でも『最強』と崇められていたのだから。
面白いことに【四徳家】のいまの各当主は、みな同年代だ。庶民として学校にでも通っていたら、同じクラスだったかもというくらいに。
その4人の中でも、御影のスキルは頭ひとつ抜けていた。
そんな御影は、王のように振る舞っていた。【四徳家】すべてを支配下に置く勢いで。
そんな自称『王』が消えたとすると、さてどうなるか。【四徳家】の他の当主たちが、それを知ったら?
楓は両手をぱんぱんと叩いて、みなの注意を引いた。
「ところで、もうひとつ報告があるよー。御影がくたばったことより、もっと大事な報告がね~」
楓の不遜な言い方に、一斉に敵意の視線が向けられる。
〈爺や〉が敵に対するように言う。
「小娘、いまなんと言った?」
「え? 御影の間抜けがくたばったってこと? んなことより大事なのは、キミたちもここで皆殺しにされるということだよ?」
さすが〈爺や〉、判断力と行動力がある。
楓が言い終わったころには、〈爺や〉から《不可視砲》が発射されていた。
まさしく『見えない砲弾』が、猛スピードで楓に襲いかかる。
「よけちゃえ!」
右に跳んで回避。ところが──
「バカめ! 『見えない砲弾』が一発だけと思ったか!」
楓が回避することも見越して、その場所にも放れていた。
かくして楓は『見えない砲弾』の直撃を受け──その肉体が吹っ飛んだ。
〈爺や〉がほかの一族に声をかける。
「御影さまがモンスターなどに敗北するはずがない。すべては佐伯楓の虚言だ!」
「うーん。フェイクニュースじゃ、ないってば~」
肉体を再生させながら、楓はそう言った。
〈爺や〉がギョッとした様子で、
「貴様の正体は、ゾンビか何かなのか!?」
「ゾンビ~? 失礼だなぁ。ボクはれっきとした人間だよ」
「信じられるか! 殺されても死なない人間などいるはずがない!」
「いるんだよねぇ、ここにさ。
エクストラスキル《残機無限》を持つ、この佐伯楓さまがねぇ~」
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