13,友達をたくさん作ろう!
〇そのころ雲林院邸の敷地内では〇
──カナの視点──
いつまでも《葬送遊戯》で、土葬されているわけにもいかない。
そこでカナは勇気を出して、地上に出ることにした。
ふいに吠え声がしたので見ると、巨大な黒い犬が駆けてくる。
あれは──美弥が〈猟犬野郎〉と名付けた最上級国民だ。つまり雲林院邸の守備隊員。
一緒に地上に出てきた小梨祐一が前に出る。
「潮崎さん、ここはオレに任せろ──」
ふとカナは、幼いときの気持ちを思い出していた。
あれは小学一年生のころ。まだ無邪気に世界を眺めていたころ。友達100人できるかなを信じていたころ。
「ま、待ってください小梨さん。戦う必要はないんです。話し合えば、わたし達は分かり合えるはずなんです!」
「あ、待て!」
カナは駆け出し、〈猟犬野郎〉へと接近する。
「お願いします! どうか、話し合いを──」
「侵入者は殺ぉぉぉぉぉす!」
問答無用で〈猟犬野郎〉が飛びかかってくる。このときカナは、本能的に噛みついていた。
〈アンデッド・クイーン〉として覚醒してから、カナの『噛みついてからゾンビにする』までの時間はわずか2秒。
圧倒的速度のち、〈猟犬野郎〉はゾンビ化していた。
「もうこれで、お友達ですよね?」
〈猟犬野郎〉の口から漏れ出たのは、
「あうううううううう」
カナのような〈オリジナル・ゾンビ〉に噛まれてゾンビ化すると、ヒトの言葉も発せられなくなる。
ただし、カナにはちゃんと通じているのだ。
いまの「あうううううう」は、「俺はあんたの友達」という意味(に違いない)。
カナは〈猟犬野郎〉ゾンビを連れて、小梨のもとに戻る。
「わたし、こんなにお友達作りが得意になれて、本当に嬉しいです!」
人間のころは内気だったこともあって、友達作りは苦手だったのだ。
小梨はなぜか一歩後退した。
「お、おお、そうか……良かったな」
カナは『よしやるぞ』の両手ガッツポーズ。
「今夜は、もっとお友達を作れそうな気がしますっ!」
「な、なんだって?」
「行きましょう〈猟犬野郎〉さん!」
いつになく積極的な気分で、〈猟犬野郎〉ゾンビに乗るカナ。
〈猟犬野郎〉ゾンビはカナを乗せたまま、雲林院邸へと駆け込んでいく。
邸内に配備されていた守備隊員たちは、すぐには敵の侵入とは気づかなかった。
それも当然。〈猟犬野郎〉は仲間なのだから──
しかし、やがて一人の守備隊員が気づく。
「お、おい! 田淵の奴、様子が変だぞ──あぁゾ、ゾンビ化していやがるぅぅぅ!」
〈猟犬野郎〉の本名が田淵らしい。
〈猟犬野郎〉は声に反応。その守備隊員に圧しかかる。カナが身を乗り出して──噛みつく。新しい友達のできあがり。
他の守備隊員たちが、悲鳴を上げる。
「ゾ、ゾンビだぁぁぁあ! ゾンビが出たぞぉぉ!!」
「田淵だけじゃなく、萩元までやられちまったぁぁ!!」
「頭だぁ! 頭を狙えぇぇぇぇ!!」
いつになく高ぶった気持ちで、カナは背筋をのばした。
「皆さんも、ぜひわたしのお友達に──あ」
この『あ』のとき、《炎矢》がカナの額に命中したのだった。
弱点の頭部を射抜かれたカナが、仰向けに倒れる。
〈アンデッド・クイーン〉の機能停止により、ゾンビの〈猟犬野郎〉と萩元の動きも止まる。
守備隊員たちが恐るおそる集まってきた。
「殺、殺ったのか?」
「ああ、殺ったさ。ゾンビって奴は、防御力は最弱だからな。頭さえ攻撃すりゃあ、楽勝よ」
「ざまぁみやがれ」
守備隊員の一人がカナを蹴とばした。
すると突然──
★★★
──早苗の視点──
美弥がいきなり消えてしまって、早苗は動揺していた。
(どうしよう! わたしの将来の妹ちゃんが消えちゃったよ! どうしよう知樹くん!)
地上に出て探していると、ふいに雲林院邸から悲鳴が聞こえてきた。さっきも騒がしかったが──これはその時の比ではない。
早苗は《影跳躍》で、雲林院邸の近くまで移動。窓からホールの様子をうかがってみると──
一体のゾンビが、凄まじい速度で走っている。しかも関節無視の動作で、守備隊員たちを捕まえては生きたまま引きちぎっている。
問題は、この暴れているゾンビがカナということ。
早苗は愕然として、思った。
(佳奈さん──もしかしなくても、暴走してる?)
ふいに上空からプロペラ音が近づいてくる。
見上げると、一機のヘリコプターが降下してくるところだった。中庭のヘリポートに着陸。
そして一人の男が降りてきた。
早苗は事前に雲林院家について、ネットなどで情報収集していた。
だから、その男の正体も分かった。
雲林院綱紀。
当主である御影の弟だ。
(知樹くん、わたしはどうしたら……早く戻ってきてー!)
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