11,気長に待つ者が勝つのです。
「貴様のような下等国民が、この私を殺すだと?」
「ハッキリさせておきますけど、僕はモンスターですよ。そりゃあ、スーパーの値引きシールには敏感に反応する生活をしていますがね」
「この私が誰だか分かっているのか? 事実上、この国を統べる王、それがこの私だ」
ははぁ。王と来ましたか。御影さん、【四徳家】の中でも自分が一番と思っているようで。
僕は《地獄神》のドリルビットを、自分の右こめかみに当てる。
《一心同体》は発動中。よって『自分で自分を壊したダメージを標的にも共有させる』状態。
つまり僕が脳を壊せば、御影さんの脳も壊れる。
「さよならです、御影さ──」
風が横切ったと思ったら、僕の右腕が消えている。
いやいや、いまの『風』と感じたのは、神速移動してきた御影さんか。《疾風》の神速で走り抜けるとき、僕の右腕を切断していったらしい。
魂状態ならともかく、生身では《疾風》を目で追うことはできない。
そして《一心同体》はいったん視界から外れると、接続が切れる。再発動するためには、もういちど御影さんを視認しないとね。
さて──御影さんはどこに行ったのでしょう? 《疾風》を常時発動されていると、姿を視認できな──
またも風が通過したと思ったら──今度は僕の首が刎ねられていた。
ちょっと速すぎですよ。
《自爆》してから、離れた場所で完全再生。
「さーて。困ったなぁ。御影さんの移動速度が速すぎて──」
瞬間、背後から貫かれた。胸部から、御影さんの右手が現れる。
「どうもです御影さん」
後ろから御影さんが言う。
「貴様、命を複数持っているのか?」
「まぁ、そんな感じです」
「ならば、命が尽きるまで殺すまでだ!」
すると氷刃の花が咲き乱れ、僕の肉体を八つ裂きにした。
そして──
僕はひたすら殺されることになったのです。
御影さんは《疾風》を常時発動。おかげで、僕はまともに視認することができない。
そんな状態で、首を刎ねられたり、心臓を抉られたり、八つ裂きにされたりした。
御影さんの殺し方は、主に2パターン。
その1,剣のように鋭い手刀と《疾風》の合わせ技。神速で走り抜けながら、僕の肉体を斬るまたは貫く。
その2,氷系スキルを使っての、遠隔からの攻撃。無数の氷刃が作るのは大輪の花。この花が僕の体内で咲き乱れるのです。
結果、僕の肉体は八つ裂きにされる。
そして完全再生するたびに、すぐさま殺される。
御影さん、徹底した仕事ぶり。
殺されて殺されて殺されて、789回ほど殺されたところ──
御影さんの気配が消えた。
僕はハッとして《地獄神》片手に走り、走りに走った。
御影さんは上階(第655階層)への階段のところにいた。振り返ると、ウンザリした様子で指を鳴らす。
無数の氷刃が飛んできて、僕の全身を貫く。
しかし僕は走り続けた。
「御影さ~ん! 僕はまだ殺され足りないですよ~!」
「ふざけるな! 私は──この国の王だ! 貴様のような下等国民ごときに、これ以上、時間を消費できるはずがあるまい!」
「もしかして御影さん──残存MPがヤバいんですか?」
「そんなはずがあるかぁぁあ!」
御影さんは《疾風》を発動──したはずが、神速にならない。
「な、んだと──」
《疾風》は、神速移動を可能にするスキル。スキル発動のためのMP消費も激しそう。
だいたいこの人、《時間支配》というチートスキルを今も発動している。僕の援軍が来ないようにしたかったのだろうけど。
時間停止とか、燃費が悪そうなスキルだよね。
そりゃあ、MPも切れかかりますよ。
「ま、まさか、こんなはずが──」
「御影さん、仕方ないですよ。時間停止スキルなんていう、卑怯チートなスキルを持っているわけですからね。これまで長期戦なんて経験したことなかったのでは?」
「な、なんだと? まさか貴様、初めからこれが狙いで──」
「値引きシールと同じですよ。じっと待っていると、いつかは値引きシールが貼られるものなんです。今回も、気長に待った甲斐がありました」
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