10,《殺しようがない》のアップデートが完了しました。
──美弥の視点──
ふいに美弥の脳内で機械音声がした。
〔【無限ダンジョン】緊急事態にともない、モンスターのセーブポイント使用制限を限定解除いたします。侵入者を討伐してください〕
一瞬で周囲の景色が変わった。さっきまで地上にいたのに、いまはダンジョン内。
(ちょっと、なに勝手に空間転移しているのよ?)
ふと視線の先に、男がいるのに気づいた。その男は時間停止の中で動いている。
ところで、その男は眉目秀麗。美弥のタイプではないが、これはだいぶ女にモテそうだ。外面良くして、笑顔で声をかける。
「すいませーん。そこの、女をたくさん泣かせていそうな人。あなたが侵入者?」
男は不可解そうに言う。
「なぜ貴様は動いている? 時の流れが止まったこの世界で?」
「……」
美弥は男の言葉から、だいたいのことを推測した。
この男が時間停止スキルの持ち主なのだ。
そして、それほどのスキルを持っているということは、この男こそが──
「雲林院御影ね! うちの兄貴はどうしたのよ!?」
「質問しているのは、こちらだ!」
御影が右手を動かすと、数多の氷矢が発射されてきた。
美弥は通路をバックして角を曲がって退避。
とにかく、いま御影とまともに戦えるのは自分だけのようだ。
(いいわよ。このあたしが、【四徳家】のひとつを潰してあげようじゃない!)
ふいに視界にメッセージが浮かび上がった。
『スキル《時間支配》のレンタル返却時間まで10秒を切りました』
(は?)
美弥が混乱しているうちに10秒が経過。
『《時間支配》が返却されました。またのご利用をお待ちしております』
(……ちょっと待っ―─)
続いて、ポイント残高というものが表示されて──
『2pt』とある。
(……なにポイントって?)
実は──
これまでは美弥が無意識にレンタルした《時間支配》が、御影の《時間支配》の効果を打ち消していた。
しかしレンタル終了とともに美弥の《時間支配》は返却されたので──効果の打ち消しも終わる。
結果、美弥も時間停止した。
★★★
──主人公の視点──
朗報です。
《殺しようがない》のアップデートが完了しました。
アップデート後の《殺しようがない》は、時間停止の状態を『死んでいるようなもの』と解釈。
よって時間停止中からの《殺しようがない》による完全再生が可能となった。
つまり、時間停止からの脱却を意味する。
これで《時間支配》の中でも、自由に動けるわけ。
自由になったところで、まずは伸びをする。
「うーん。一時はどうなることかと思ったよ」
御影さんはまだ第656階層にいることだろう。そこまで降りていかないと。
しかし時間停止中だから、エレベーターも動かないのだろうなぁ。
ふいに脳内で機械音声がした。
〔【無限ダンジョン】緊急事態にともない、モンスターのセーブポイント使用制限を限定解除いたします。侵入者を討伐してください〕
瞬間、僕は第656階層へ空間転移していた。
すると──通路の真ん中に、なぜか美弥が固まっている。
固まっているのは、時間停止を受けているからだが──
なんでここにいるんだろ?
その美弥の後ろから、御影さんがやって来た。なんか怒っている。
「こんどは貴様かぁぁ! 貴様ら兄妹はなんなのだ! 《時間支配》の影響を受けないなどと、この私を愚弄するか!」
「愚弄なんかしていませんよ。御影さんは、チートな敵でしたし──心から尊敬します。ただ──」
僕は改めて《地獄神》を召喚して、
「さすがに、そろそろ、いい加減──殺させていただきますね~」
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