7,美弥、臨時リーダーに立候補する、が。
──美弥の視点──
美弥が影から這い出してみると、とんでもないことになっていた。
兄の大親友(という話)小梨は、翼を負傷したらしく墜落。
そのさい〈アンデッド・クイーン〉は右足が捥げたらしい。ゾンビだからたいしたダメージでもないのに、ショックのあまり気絶中。使えない。
兄の恋人(認めていない)早苗は、「知樹くんはどこなの?」とさ迷っている。
とりあえず美弥も、早苗と同じ疑問にいたる。
「まって。兄貴はどこ?」
影の中では状況がつかめなかったのだ。
小梨が答える。
「雲林院御影の執務室だ──」
小梨の説明によると──兄は御影と戦う前に、小梨とカナを逃がした。
その後、小梨はカナを抱えて雲林院邸を脱出──したはいいが、中庭の上空で何者かに撃ち落された。
「見えない弾が飛んできやがったんだ」
美弥は素早く考える。
現状、戦力になるのは自分と早苗のみ。翼をやられた小梨はたいした戦力ではないし、元Sランク・ゾンビを手駒に使える〈アンデッド・クイーン〉は気絶中。
「ちょっと早苗。こら」
基本、外面はいい美弥だが、早苗はウザいので止めた。
「え、妹さん。なに?」
「しっかりしなさいよ。すぐに敵が──」
本能的に美弥が《闇黒の爪》を動かす。その爪に、真空弾が当たって弾かれる。
早苗が拍手した。
「凄い、凄い! さすが知樹くんの妹さんだけあるよね──うん、美弥ちゃん。わたしのことは、お義姉ちゃんと呼んでもいいんだよ?」
「はぁ? なに有りえないこと言ってんの? というか、敵から狙撃されているんだけど!」
「うん防御するね」
早苗が《影塹壕》というスキルを発動。『塹壕』とはいうが、実際は影による結界で覆うスキルらしい。
美弥たち全員を、影結界がガードする。
「これで大丈夫だよ」
真空弾が放たれてきたが、《影塹壕》が弾く。とりあえず狙撃対策はできたが、すぐに追手が来る。
「よく聞きなさい。兄貴が不在の今、このパーティを仕切るのはこのあたしよ。異論はないわね」
ところが異論が出てきた。
まず小梨。
「ふざけんな。オレは年下のガキに仕切られる気はねぇぞ」
さらに早苗まで言い出す。
「う~ん。美弥ちゃんの実力は認めているけど、臨時のリーダーはもっと──総合的な視点を持てる人がいいかも。ごめんね、美弥ちゃん」
「あんた、絶対に兄貴の恋人とか認めないから」
「えぇ!」
ここで〈アンデッド・クイーン〉が目覚める。
「あの、すいません寝ていましたか? 片足が捥げる悪夢を見ました」
「悪夢じゃないわよ」
美弥が捥げた右足を突きつける。膝のところで捥げたので、その下側だ。
「ああ、そんな──こんな時のために、これを持参して正解でした」
カナは木工ボンドを取り出し、捥げた右足断面にべちゃっと塗り付ける。そして右膝にぐっと押し付けて固定。
「乾いたら歩けるようになります」
「……木工ボンドで?」
「はい」
「……ふーん」
ゾンビは理解に苦しむと思う美弥だった。
そして早苗が、さらに理解に苦しむ提案。
「カナさんに任せられないかな?」
カナは小首を傾げる。
「え、何の話でしょうか?」
「臨時リーダーなんだけど。知樹くんとは別行動になっちゃったし。ここは敵陣の真っただ中で、小梨さんは飛べなくなっちゃって──わたし達、ピンチなんだよね。そこで臨時リーダーをカナさんにお願いできないかなと。
知樹くんの『はじめての女』である事実、わたしは受け入れるから!」
「……はじめての……女ですか?」
早苗の隣で小梨もうなずく。
「まぁ、あんたなら適任かもしれんな」
美弥が《闇黒の爪》で地面を叩いて注意を引く。
「ちょっと待った! あたしは認めないわよ! というか、なんでカナなのよ! よく考えてみなさいよ。
このパーティの中で一番強いのは誰よ?──まぁ〈灼熱の蹂躙者〉を手駒にできるカナだけど。
フロアボスを経験したことがあるのは誰よ?──これもカナだけど。
……………じゃ、いいわよそれで」
カナは困った様子だったが、やがて言った。
「あのー。でしたら皆さん、わたしの新スキルを試していただけないでしょうか? 《葬送遊戯》というのですが」
「そのスキル、効果は?」
「土葬されます」
これだからゾンビは、と思う美弥だった。
しかしこの土葬スキル、想像以上の優れものだったのだ。
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