6,小指からGO作戦。
念のため、左手の小指を切断して放り捨てる。
同時に、悪魔アドを召喚。御影さんの注意はこちらに向いたはず。
このアドは、かつては守谷勝好くんが使役していた召喚獣。
先日、自宅で寝ていたところアドが現れた。何でも、地獄にいてもヒマなので召喚獣として使ってほしいということ。
つまり、就職活動。
就活の辛さは、僕もしみじみと分かる。ので契約。
ただそれ以来、一度も召喚していないので、この事実は誰も知らない。不意打ちとして、結構いけるでしょう。
「アドさん、GOです!」
アドさんが全身を燃え上がらせ、御影さん目掛けて突進。
御影さんが指をパチンと鳴らす。
「《時間支配》!」
次の瞬間には、アドさんが蜂の巣にされていた。
うーん。アドさん、僕のところに来て初仕事だったのに。
召喚獣が本質的に死ぬことはない。ただ致死的ダメージを受けると、しばらくは使役できなくなる。というわけで、アドさんリタイヤ。
「いま、なにをされたんです?」
「時を止めたのだ。貴様のような下等国民に対して使うには、もったいないスキルだがな」
僕はモンスターなんだけど──ただ日本人としても生活しているので、やっぱり国民か。
とにかく時間停止中に、アドさんは蜂の巣にされたのかぁ。
「時を止められるとは、なんかチートすぎませんかね? 使用制限とかあるんでしょ?」
「そんなものはない」
いやいや、それは卑怯では? 抗議したい。
しかし、時を止められた状態で殺されても問題はないよね。時の流れが再開したら、完全再生すれば済む話だし。
ところが御影さんは言うわけだ。
「あいにくだな下等国民よ。貴様に勝ち目はない。私の《時間支配》には、空間限定モードがある。すなわち、貴様の存在だけ時の流れの外に出すことが可能だ」
「え、僕だけを──」
「このようにな」
再度、《時間支配》が発動された。今回は空間限定モードで。
瞬間、僕の『時間』だけが止まる。
厳密にいうと、僕の存在だけが時間の流れから出されたらしい。
うーむ。これだと死んだことにはならないので、《殺しようがない》は反応しない。
また時間停止状態では、《自爆》もできない。
これは詰んでしまった!
などと考えている時点で、まだ抜け道はあるのです。
魂自体は、時間停止と関係なく存在している。いまは肉体から離れて漂っているところ。
そして先ほど投げておいた切断した小指。
この小指から、本体を完全再生できる。
しかしタイミングが大事。御影さんが再度、《時間支配》を発動する前に──その脳味噌にドリルビットを叩き込まねばならないので。
小梨くんたちを追跡するため、御影さんが動き出すのを待って──待って──ふむ、動かない。
視線が動いて、僕の切断した小指に至った。
「小細工を弄したな? 《熱線》」
御影さんの人差し指から熱線が発射。
熱線は、僕の切断小指を焼失させてしまった。
……あらら、困った。
ようやく御影さんは歩き出し、時間停止中の僕の体まで歩いてきた。ここで僕の体を破壊してくれると、完全再生できるんだけどね。まぁ、そんなことはしないでしょう。
御影さんは興味を惹かれた様子で、僕の体を倒して靴を脱がせた。左足を見て呟いた。
「なるほど」
★★★
──【無限ダンジョン】第656階層──
念には念を入れて、左足の小指を切断して、ここに置いてきていた。
仕方ないので、その左足小指から完全再生。
「雲林院家へ急がないと」
小梨くんとカナさんが脱出できたか確かめないといけない。
足の小指、小梨くんに渡しておけば良かったなぁ(ゴミ箱に捨てられた可能性も高いけど)。
にしても、御影さんを殺すには──こっそりと《一心同体》をかけるしかないよね。それには視認する必要があるんだけど。
エレベーターを目指していると、ララさんに声をかけられた。
「あら、イコライザーさん。こんなところで何しているの?」
「ララさんこそ」
「わたしは、ここに住んでいるのよ」
「へぇ。あ、そうだ」
僕は、ララさんの右肩をがしっとつかんで、
「ララさん、お願いがあるんだけど」
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