5,ラスボスさんでは?
──主人公の視点──
美弥を連れていくべきかギリギリまで迷った。
とはいえ、ここで置いていくと兄妹の縁を切られそうだ。
というわけで終業後、ダンジョンの外で合流。
メンバーは美弥、早苗さん、カナさん、小梨くん。
ちなみにカナさん自慢のゾンビ軍団は、早苗さんの《影保管》でしまってある。
ここらへんの協力プレイは、パーティらしいよね。モンスターパーティということで、いざ行かん。
「これから楓さんと会うけど、あの人は信用できないから──念のための策を取っておこうか」
策といっても、早苗さんに美弥を《影同化》させた上で、カナさんの影に入ってもらうだけだけど。
ここで早苗さん、抗議。
「知樹くんの影に入りたいよっ!」
「僕の影に入っていても意外性がないでしょ。いつも入っているんだから」
小梨くんも提案。
「意外性を出したいんなら、潮崎さんを《影同化》で隠したほうが意外性があるんじゃねぇか? てめぇの妹がいなくても、相手は影に潜んでいるだろうと予想もつくだろ。だが潮崎さんが同行しているとは、相手は確信が持てねぇはずだ」
ちなみにだけど、潮崎とはカナさんのこと。
「いや、このままで大丈夫。今やカナさんは、存在そのもので意外性だから」
カナさんが〈灼熱の蹂躙者〉を手駒にしたとは、情報通な楓さんもまだ知らないはず。
楓さんの中では、カナさんはまだ雑魚ゾンビ枠にいるでしょう。そこが意外性だよね。
その後、楓さんと落ち合う。
楓さんはカナさんと小梨くんを見やって、
「あれれ。キミの妹ちゃんは?」
「美弥は同行してないですよ。まだ退院したばかりですし」
楓さんはチラリと僕の影を見てから、言った。
「【四徳家】のひとつを襲撃するには、戦力が少ないんじゃないかな?」
「雲林院家の当主さんのもとまで、楓さんが手引きしてくれるんですよね? なら少数精鋭のほうがいいかと」
「ふーん。かもね。ちなみに雲林院当主の名前は、御影」
「御影さんのスキルは?」
「残念だけど、教えられないんだなぁ。意地悪じゃないよ、マジで。ボクたち【四徳家】は、互いに《誓約》をかけられているんだよね。お互いの本命スキルは、他人に教えないってさ」
「本命スキルって?」
「【四徳家】ならではの、ヤバいスキルのことだよ。当主だけが使える唯一無二の。キミの《殺しようがない》みたいなもの。初見殺しスキルともいうよねぇ」
初見殺しかぁ。じゃ、はじめに僕が御影さんの本命スキルで殺されるとしようか。そうすれば本命スキルの内容が分かるよね。
雲林院家の本拠である大豪邸まで移動。楓さんが裏口から、僕たちを侵入させてくれた。屋内警備員を回避しつつ、執務室へ。
楓さんは執務室の前で立ち止まって、
「この中で、御影は仕事中。さ、首を獲ってきなよ。ボクはここで待ってるからさぁ」
「どうもです、お姉さん。それじゃ」
執務室に入り、まずは挨拶だ。
「はじめまして、イコライザーが来ましたよー」
楓さんの話した通り、雲林院御影さんは仕事中だった。執務机の向こうから、僕をちらりと見る。
そのとき僕は感じたのです。
高一の2学期、バイトが忙しすぎて勉強が疎かになった。そのため赤点を取ってしまったのだけど──試験の終わりに『これは赤点だな』と確信したあの感じを。
別名『これはダメだー』の感覚を。
雲林院御影さんは、ノリと勢いで殺せる人じゃないね。
というか、ラスボスさんでは?
僕は両手を叩いた。
「小梨くん、カナさんを連れて逃げる。はい、急ぐ」
「お、おう」
小梨くんがカナさんをつかんで、飛翔。屋内だけど天井が高いし、飛んだほうが速度が速い。
御影さんがゆっくりと立ち上がる。
僕は《地獄神》を召喚。
同時に、『奥の手』の悪魔アドも惜しみなく召喚する。
そして、しみじみと思うのです。
ここで僕が負けると、全滅エンドかなぁ。
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