3,退院おめでとう。
「じゃあ知樹くん。わたしのことを、はじめての女にしてくれる? 本当の意味で、はじめての女に?」
と、早苗さんがうるんだ瞳で言ってくる。
「うーん。頑張る」
早苗さんはなぜか驚いていた。
「それって頑張るところなの!?」
とにかく早苗さんが元気そうで安心した。
僕は第3階層を後にし、つづいて第73階層に行き巨大コウモリを探す。
あ、いたいた。
「おーい小梨くん」
まてよ。早苗さん的に言うならば小梨くんは──
「僕の初めての男!」
巨大コウモリが吐きそうになっている。
「南波、てめぇキモいこと言うんじゃねぇ!」
「早苗さんなら喜ぶんだけど」
「つーか何の用だ。配置替えになったんだから、もうてめぇとは無関係だろうが」
「何を言うかな小梨くん。僕と君の友情は永遠じゃぁないか」
また巨大コウモリが吐きそうになっている。
「まぁいいや。ちかぢか四徳家を狩りに行くから、そのときは小梨くんも参加よろしく」
「ふざけんじゃねぇ。てめぇを運ぶために呼ばれるのは、もうウンザリだ。オレは行かねぇから、他をあたれ」
「え、そう? う~ん。じゃいいよ」
「は? いいのかよ。おいおい。オレ以外の誰が、てめぇを飛翔して運べるってんだ?」
「今は、小梨くん以外にも当てがあるんだよ」
ララさんのことです。
「……まぁあれだ。てめぇがそこまでオレに来て欲しいってんなら、行ってやらねぇこともねぇぜ」
「う~ん」
考えてみると、巨大コウモリって目立つよね。そこいくとララさんは、翼は生えているけど基本はヒト型。
もしかしてララさんのほうが適任なのでは?
しかし──ここでさらに女性が増えると、なんか早苗さんが拗ねそう。それにララさんも我が強い性格だから、美弥と上手くいかないかもね。
「小梨くん。やっぱり君しかいないよ!」
「……いま50秒は迷っていやがっただろ」
★★★
20日後。
ついに美弥の退院だ。
モンスター病院へ向かいに行くと、美弥は《闇黒の爪》を出し入れしながら待っていた。
「兄貴。ようやく実戦復帰よ」
「勘が鈍ってなきゃいいけどね」
「ところで兄貴。新しい配置表によると、あたしの行先が第2222階層とか意味不明な数値なんだけど? そんな深いところにいて、最上級国民なんか来るの?」
楓さんは第4274階層まで降りたそうだけど──
「年に一回来るか来ないか、じゃないの?」
「そんな退屈なところに送られるなんて最悪よ! オリ子に文句言ってやるわ!」
「オリ子は行方不明だよ」
配置替え以来、何度かダンジョン内でオリ子を探しているが見つからない。さらに言うと、現在のダンジョン・マスターが誰かもよく分かっていない。
「配置替えのことは、あとで考えよう。とりあえず美弥は、実戦の勘が鈍ってないことを証明しないと。早ければ今夜にでも、楓さんから連絡があるし」
楓さんの手引きで、雲林院家の本拠へ向かう。利害が一致しているので、罠ということはないだろうけど。
ただ楓さんは、200パーセント信用ができない人だ。
「何が起こるか分からないけど、それこそがモンスター人生というものだよね」
「で、あたしは誰と戦って、実戦の感覚が鈍っていないことを証明すればいいの?」
「カナさん」
とたん美弥がお腹を抱えて笑い出す。
「あんなゾンビ女に、このあたしが負けるはずがないでしょ! 兄貴、冗談も休み休み言ってよね!」
★★★
16分後。
〈灼熱の蹂躙者〉ゾンビによって、ボコボコにされる美弥。
そんな妹を眺めながら、僕は言った。
「おーい美弥~、口ほどにもないぞ」
「ま、まって、こ、こいつ、反則、でしょ、ちょっとその炎はもうやめ──きゃぁぁぁああ!!」
「ネコ耳が燃えている」
もしかして今の美弥は、カナさんどころか早苗さんにも負けるのでは?
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