12,カナさんメンタル覚醒。
途中で昼食休憩を取ったこともあって、〈灼熱の蹂躙者〉さんに追いついたのは第758階層だった。
〈アンデッド・クイーン〉のカナさんを発見。
ゾンビたちを引き連れて、カナさんは困った様子だった。
「先ほど〈灼熱の蹂躙者〉という方がいらっしゃったのですが──」
「いまどこにいるの?」
「セーブポイントを使って、地上に引き上げていかれました。ですが、すぐに戻ってくるとのことです。あのー、知樹さん。わたしのゾンビさんたちでは、あの最上級国民に勝てる気がしないのですが?」
燃えても死なないのがゾンビの強みだけど──すぐに灰にまで燃やされちゃ、確かに戦えなくなるよね。
しかもゾンビって敏捷性が落ちるから、炎攻撃を回避し辛そう。
「じゃ、僕が殺すからね」
ここでカナさんが、〈アンデッド・クイーン〉らしいアイディアを提案。
「あの知樹さん。わたしが噛みついた場合──最上級国民でも、わたしのゾンビになってくれるのでしょうか」
カナさんや、カナさん。
これこそが『立場こそが人を作る』的なことなのかな。
さっきまでは『フロアボスなんてできません』と言っていたのに。今やSランク最上級国民さんをゾンビとして使役しようと企むなんて。
これぞメンタル覚醒。
「試してみようか」
とにかく、カナさんたちにはセーブポイント付近から避難してもらった。〈灼熱の蹂躙者〉さんは広範囲な炎攻撃を得意としているので。
にしても──さっきお昼を食べたばかりなので、なんだか眠くなってきてしまった。
セーブポイントの前でウトウトしていたところ、ふいに燃やされた。
「キャンプファイヤーみたいですね!」
自分でもよく分からないテンションのまま、燃え尽きた。
灰の中からの完全再生。絵になる。
目の前には、長身の男がいた。〈灼熱の蹂躙者〉さんだ。
火炎系スキルを乱発しているせいなのか、髪が燃えるように赤い。
「貴様、イコライザーか」
「はい。はじめまして、イコライザーです」
〈灼熱の蹂躙者〉さんが歯噛みする。
「なぜだ? モンスターは持ち場以外の階層には移動できないはずだぞ! だというのに、なぜ第656階層にいた貴様が、この第758階層にいる? ふざけているのか!!」
「えーと。〈灼熱の蹂躙者〉さんを追いかけてきました」
ちょっと照れるじゃないですか。
「追いかけてきただと!? バカな! なしだ、なし! そんなことが通るか! ダンジョン・マスターに抗議させてもらう!!」
変わったことをいう人だね。
ところで今のダンジョン・マスターって、誰だろう。オリ子でないことは確かだと思うけど。
「まぁ細かいことは気にせずに──〈灼熱の蹂躙者〉さん、いま行きますよー」
僕が〈地獄神〉片手に走りだそうとしたら、〈灼熱の蹂躙者〉さんが慌てて言う。
「まてまてまて! いまの話を聞いていなかったのか! 私はダンジョン・マスターに抗議すると言っているんだ! その前に、私を攻撃するなど許されん! 許されんぞ! モンスターとして、ルールを守れぇぇ!!」
「モンスターがルール守って、どうするんですかー」
「話にならぁぁぁん!!」
〈灼熱の蹂躙者〉さんが〈絶炎〉を噴射、噴射。その上でセーブポイントへ駆けだす。
「もう逃がしませんよー」
〈自爆〉からの完全再生。〈灼熱の蹂躙者〉さんとセーブポイントの間に出る。
「くそがぁぁ! ルールを守れぇぇぇ!」
〈灼熱の蹂躙者〉さんが拳に〈絶炎〉を纏って、殴りかかってくる。
僕は殴りに殴られ、燃やされに燃やされる。それでも連続完全再生で、〈地獄神〉の連続突き。
〈灼熱の蹂躙者〉の全身に、ドリルビットで穴をあけていく。
「や、やめろぉぉぉ!! ルールを、ルールを守りやがれぉぇぇえ!!」
締めに〈灼熱の蹂躙者〉さんの胸部へドリルビットをねじ込み、グルグル回す。血がドバドバ噴き出してくる。
「や、やべろぉぉ!!! せ、せっかく、鬼門を突破したと、思ったのにぃぃぃぃい!!!!」
〈灼熱の蹂躙者〉さんが白目をむいて倒れた。まだ息はある。
僕はカナさんを手招きして、
「さ、噛みにきて噛みにきてー」
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