11,恋も殺しも、逃げられると追いかけたくなるんだよね。
ダンジョン攻略においては、戦略的撤退というものは存在しない。
逃げ出した最上級国民さんは、格好の獲物です。
はじめ僕は先頭に立って、最上級国民さんたちを追跡していた。
けど、すぐに疲れてリタイヤ。モンスターたちは僕を追い越していき、最上級国民さんたちに背後から襲いかかっていく。
いやぁ、みんなスタミナがあるなぁ。
ララさんが僕のそばに降り立った。
「ララさんも最上級国民さん狩りに参加したら?」
「イコライザーさん、聞いて。どこにも阿修羅さまの姿がないのよ」
「そういえばそうだね」
阿修羅さんの姿は目立つから、人混みならぬ『モンスター混み』の中にいても発見できるし。
「それに〈灼熱の蹂躙者〉の姿もないわ。どういうことだと思う、イコライザーさん?」
「うーん。とりあえず、阿修羅さんを捜してみようか」
20分後、阿修羅さんを発見。
撃破された姿で。
頭部は破損し、6本ある腕の半分はもぎ取られていた。それでも生きているので、タフだなぁ。
「阿修羅さん、阿修羅さん。誰にやられたんですか?」
「イコ……ライザーさま。お恥ずかしい限り……です。〈灼熱の蹂躙者〉に……やられました」
「〈灼熱の蹂躙者〉さんはどこに? あと『さま』付けはやめて」
「〈灼熱……〉は、すでに次の階層……へ」
「え、一人だけで? 仲間は置いていったんですか?」
「奴は言って……いました。この第656階層は鬼門になった、と……仲間すべてを囮にしてでも……すぐに通過せねばならないと……敵ながら……鋭い考え……」
ここで阿修羅さん、ガクッと気絶した。
僕は首を傾げたい気分。
「この階層が鬼門になったって、どういうことだろうね?」
ララさんが得心がいったという様子で、
「分かったわ。配置替えでイコライザーさんが来たことが、〈灼熱の蹂躙者〉にとっては想定外だったのよ。だからパーティの仲間を見捨てでも、イコライザーさんとエンカウントする前に次の階層に行く必要があったんだわ」
「えー本当?」
最上級国民さんの中で、僕は有名なのか無名なのか。どっちなんだろ。
「僕は恋も殺しも、逃げられると追いかけたくなるんだよね。だから、〈灼熱の蹂躙者〉さんを追いかけてくるよ」
「まってイコライザーさん。この階層はどうするの? フロアボスの阿修羅さまは戦闘不能だし、〈灼熱の蹂躙者〉以外にも強敵はいるのに」
「ララさん。君がみんなの指揮を執るんだ。君ならできる。君を信じる僕を信じてー」
「……イコライザーさんと会って、まだトータルで3時間も経ってないわよ?」
「『翼があるモンスターは強い』の法則があるから、大丈夫!」
というわけでララさんにあとは託して、僕は第657階層へと進んだ。
そこは爽やかな地獄絵の状態。
フロア一帯が火の海で、モンスターたちが生きたまま燃やされている。
この炎、まさしく〈灼熱の蹂躙者〉さんの仕業だねぇ。第656階層で阿修羅さんを倒すときは、目立つ炎攻撃は使わなかったらしい。
そして、〈灼熱の蹂躙者〉さんが次なる階層へと進んだ後なのも確か。急がないと、追いつけないぞ。
ふいに僕の足元に、火だるまが転がってきた。
ヒト型モンスターが燃えているのです。まだ生きているようで、こもった悲鳴を上げている。これでは肺もすっかり焼けただれちゃっているね。
「大丈夫ですか? まぁ大丈夫じゃないですよね」
消火器とかないものかなぁ。僕のスキルじゃ、炎は消せないんだけど。
火だるまのモンスターが、僕の右足をつかんだ。
瞬間、僕の全身にも炎が燃え移る。一瞬のことだ。
「うーん、燃えてる燃えてる」
試しに炎を消そうとしたけど、まったく消える気配がない。それもそのはず。《個人情報取得》によると、これはただの炎ではない。
《絶炎》というスキルによるもの。
《絶炎》の炎を消すことができるのは、発動した者だけだ。
つまり〈灼熱の蹂躙者〉さんが消さない限り、いつまでも燃え続けているわけ。
ふーむ。この最上級国民さん、かなり強いね。
「これは僕が殺さないと、まずいかもねぇ」
とりあえず《自爆》して、肉体を跡形もなく吹き飛ばす。これで炎も消えたので、完全再生。
「〈灼熱の蹂躙者〉さん、いまイコライザーが行きますよー!」
気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。




