5,アンデッド・クイーンと呼ぼう。
ゾンビの増加とは、倍々ゲーム(みたいな感じ)。
一体作ったゾンビが、新たな犠牲者に噛みつきゾンビ仲間を増やす。こうして、ゾンビ友達100人できるかな状態。
しかも、それらのゾンビは全てゾンビ化現象の始まり、すなわち〈オリジナル・ゾンビ〉に従順となる。今回の場合は、まさしくカナさんに。
ただし、第758階層の皆さんをゾンビ化するのは得策ではない。いくらカナさんに従順とはいえ、ゾンビさんの頭は悪い。
いや、カナさんは別だけど。
つまり、ゾンビにも二種類あるわけです。
カナさんのような種族としてのゾンビ(つまり、〈オリジナル・ゾンビ〉)。
対して〈オリジナル・ゾンビ〉が噛むことで仲間にした、ただのゾンビ。
ただのゾンビは、知能指数がガックリ下がる。残念です。
だから第758階層がゾンビ・パラダイスになるのも考えもの。こういう時は、バランスが大事。
「カナさん。配置表によるとこの第758階層には、128体のモンスターがいるようだよ」
かつての第1階層に比べて大所帯だね。まぁ、元第1階層はそれこそ精鋭中の精鋭ぞろいだったけど。
「はぁ。それで知樹さん、わたしはどうしたら良いのでしょう?」
「う~ん。フロアボスをめぐる殺し合いで、すでに18体は死んだとしようか。すると残りは110体。カナさんは半数の55体をゾンビ化してみよう」
そうすれば残りの55体への脅しになる。
カナさんに逆らえば、ゾンビ化待ったなしという脅しに。誰だって、ただのゾンビにはなりたくないものだから。
「知樹さん……やっぱり、わたし自信がないです」
「カナさん。いまここで踏ん張らないと。ゾンビに転職先はないんだよ」
失業の不安が、カナさんを叱咤激励するのだった。
「わたし、頑張りますっ!」
やる気になったカナさん。
はじめのうちは、僕も協力した。新たな獲物を見つけるたび、僕が《地獄神》で弱らせる。そこをカナさんが、ガブリとやる。
次第に僕の協力は不要になっていく。
さっきも言ったように、ゾンビ増加は倍々ゲームみたいなもの。はじめこそゾンビ仲間づくりが大変だが、一定数を超えればあとは楽々。
放っておいても、ゾンビたちが新たな獲物に噛みついていく。
復習だけど、『ただのゾンビ』が噛んで『ただのゾンビ』にしたのも、カナさんに絶対服従する。
ただここで注意しなきゃいけないのは、噛むまではいいけど、ムシャムシャ食うのは禁ずること。
せっかくゾンビ仲間ができても、肉体を半分も食べられた後では戦力にならないからね。
やがて目標だった55体のゾンビ化に成功した。
カナさん、達成感に満ちたいい表情。
「やりました、知樹さん! 失業しなくて済みそうです!」
カナさんの前には、55体のゾンビモンスターたちが跪いていた。
この光景には、僕も感動。
これはもう、カナさんのモンスター名を改めるときがきたようだ。
〈アンデッド・クイーン〉に!
(どうでもいいけど、ゾンビよりアンデッド呼びのほうが好み)
やがて残りの第758階層モンスターたちが、ぞろぞろとやって来る。
その中の代表として、一体のケンタウロスが歩いてきた。ここの階層、本当にケンタウロス率が高い。
「お、おれ達は降伏します閣下。ですからゾンビ化はお許しくだせぇ」
カナさんが僕を見やる。
「閣下って誰でしょう?」
「カナさんのことだよ。さ、部下のモンスターたちに許しを与えてあげて」
「あ、は、はい。えーと。あの皆さん、聞いてください。わたし、至らぬところもあるかと思いますが、それでも頑張ります。ですから一致団結して、第758階層を盛り上げていきましょう!」
「おおー!」と呼応するモンスターたち。
目頭が熱くなってきた。
元部下が、こうして立派に羽ばたいたのです。育てた甲斐があったよ、別に育ててないけど。
感涙していたら、エレベーターからララさんが降りてきた。
「イコライザー様! イコライザー様!」
「だから『さま』呼びはやめて」
「たいへんなの、早く戻って! 奴らがきたよ、〈灼熱の蹂躙者〉たちが!!」
あ、もうそんな時間か。
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