4,カナさん、齧る。
〈灼熱の蹂躙者〉さんたち一行が来るまで、まだ30分ほどあるらしい。
そこまでキッカリの予約とは、意外。
そういえば【無限ダンジョン】って、一応は最上級国民側と契約があるんだっけ。
とりあえず、この30分を有効活用しておこう。
「阿修羅さん、ちょっと出かけてきますね」
エレベーターに乗って、第758階層まで移動。
カナさんの様子を見にきたのだ。
降りたとたん、モンスター同士が争っている。というより、殺し合っている。
僕の足元にも、いま引っこ抜かれた生首が転がってきた。
「盛り上がってますね?」
ふとケンタウロスさんと目があう。
「すいません。こちらのフロアボスであるカナさんに用事が──」
「ブッ殺してやるぜぇぇぇぇぇぇぇ!」
ケンタウロスさんが奇声を上げながら僕に突進してきた。
なので、《自滅》で爆散。
ケンタウロスさんの背中の上で完全再生。
「朝の準備体操ですか? 正直、モンスター人員を減らすようなことはしないほうがいいと思うんですけど?」
「邪魔だぁあ!」
ケンタウロスさんが跳ねて、僕を振り落とした。それからケンタウロスさんが《爆踏》を発動。
踏みつぶされまくった僕は、朝っぱらからミンチにされた。
面倒なのでケンタウロスさんが行ってから完全再生。
「元気なのはいいことだけど。ちょっと暴力的すぎるよねぇ?」
やっぱり階層が深いと、それだけモンスターの暴力度も上がるのだろうか。
平和主義だった第1階層とは、まったく様子が違うようで。
などとのんびり考えていたのが良くなかったらしい。
引き返してきたケンタウロスさんが僕を見つけて、
「てめぇぇなんで生きていやがるぅぅう! 殺ぉぉぉぉす!」
「あ、カナさん」
支柱の陰で身を隠しているカナさんを発見。
カナさんのもとへ歩いていこうとしたら、ケンタウロスさんが奇声を上げながら突っ込んできた。
「すいません。ちょっとうるさい」
ケンタウロスさんの眉間を《地獄神》で貫く。
「うぎゃぅぅぁぁぁぁああ……!!!」
ひっくり返ったケンタウロスさんは、脳を壊されて絶命。ところでケンタウロスさんって、下半身は馬刺しになるよね。
「カナさん、カナさん。ちょっとこの階層、準備運動が激しすぎるよ。フロアボスとして、みんなを止めたほうがいいんじゃないかな?」
カナさんが泣きながら、僕にしがみ付いてきた。とりあえず早苗さんがいなくて良かった。
「知樹さん、わたしはもうダメです。生きていけません。死にます死ぬしかないです」
「まぁまぁ。そんな早まらないで」
「無理です、無理です。わたしがフロアボスとか、しかもこんな皆さんブチ切れているような階層で、無理です」
「確かにみんな元気そうだけど。というか準備運動なんだよね?」
「違います。わたし、フロアボスをクビになったのです。わずか3秒で」
「え、上からのお達しで?」
「いいえ。ここの階層の皆さんから」
「あ、部下による謀反みたいな感じだね」
「そして次のフロアボスを決めるため、皆さんで殺し合いが始まりまして。生き残ったものがフロアボスとかで」
「ははぁ。どうりでみんな、殺気が漲っているわけだ。けどさカナさん──たぶんカナさんは、この階層にあっていると思うよ」
「わたしが? あの知樹さん。わたし、ついこの前まで人間だったんですが」
「うん知ってる。僕がモンスターにしたんだし。ところでカナさん。君は、自分の力を過小評価しすぎだよ。たとえば──」
などと会話していると、通りかかったケンタウロスさんが僕たちに突進してきた。
「クソどもがぁぁぁ! 皆殺しだぁぁぁぁ!!」
こちらは、さっき僕が殺したケンタウロスとは、別のケンタウロスさん。
この階層、ケンタウロス率が高いね。
僕は《自爆》して、ケンタウロスさんの足元に完全再生。
右前脚を、《地獄神》で刺した。
「うぎゃぁああ!」
ケンタウロスさんが転倒したので、すかさずカナさんを手招き。
「さ、カナさん! このケンタウロスさんを噛んで!」
「え?」
「噛んで!」
カナさんが慌てて、ケンタウロスさんの首もとに齧りついた。
「やべろぉぉぉぉぉ!!」
ケンタウロスさんはしばらくの間、その場で暴れまわっていた。
しかし、ついには絶命。
そして、ゾンビとして復活。
カナさんに噛まれてゾンビ化した以上、このゾンビ・ケンタウロスはカナさんに絶対服従だ。
「こうやってゾンビ軍団を作っていくんだよ、カナさん」
「はぁ……馬刺しの味がしました」
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