3,〈灼熱の蹂躙者〉が来るよー。
「何はともあれ、阿修羅さん。これからよろしくです」
僕が頭を下げると、思い切り恐縮する阿修羅さん。
「こ、こちらこそ宜しくお願い致します! あの~それでイコライザー様?」
「『さま』付けはやめてくださいよ。僕が部下なんですし」
阿修羅さん複数の手を使って、『手を揉む』。
「いえいえ、しかしですね。イコライザーさま、ではなくイコライザーさんほどのお方が、なぜいまさらフロアボスの位を外されてしまったのでしょうか? あの〈殲滅使い〉を始末されたイコライザーさんが?」
〈殲滅使い〉?
あー、守谷勝好くんのことかぁ。懐かしい。
「たぶん、ダンジョン階層が深いところに異動になったので、一般モンスターからやり直せということだと思うんだけど」
そう言いつつも、僕も納得はできていない。
そもそもオリ子は、『調子に乗っている』最上級国民たちを狩るため、僕を第1階層に配置したはずなんだけど。
まぁいいか。
フロアボスの阿修羅さんへの挨拶も済んだことだし、僕の元部下たちはどうしているのかな。
「ダンジョン内の新しい配置表とかあります?」
「はっ、ただいま! ──おい、そこのお前、イコライザーさんに配置表をお持ちしろ! チンタラするな、殺すぞ!」
「いえ殺さなくていいです。あと別に急がせなくてもいいです。ゆっくりでいいです」
「はっ、承知いたしました! ──おい、急ぐなゆっくりやれ! 半殺しにするぞ!」
こうして配置表を手に入れたので、さっそく『元第1階層メンバ―』を探す。ホブ雄さんだけは分かっているので、残りのみんなを。
まず美弥だ。
美弥はまだ入院中だけど、配置表にはちゃんと記されていた。
第2222階層のフロアボスとある。
眩暈がした。
これ大丈夫? 間違ってない? 美弥にフロアボスをさせるだけで心配なのに、まさかの四桁階層で?
お兄ちゃんは、心配です。
つづいて小梨くん。
第73階層の一般モンスター。
うん、小梨くんなら余裕だよね。三桁階層もいけたと思うし。何といっても、僕の大親友だもの。
僕の恋人(???)の早苗さんはどうかな──。
第3階層の一般モンスター。
本当に? モンスター覚醒を繰り返してきた早苗さんは、すでに三桁階層のフロアボス並みだと思うけど?
どうもおかしいなぁ。
最後にカナさんを調べてみた。
しかし、二桁階層のどこにもいない。
おかしいなぁ。まさか三桁階層に?
やがて見つけた。第758階層のフロアボスとある。
………………とりあえず、いまごろカナさんが発狂しているのは想像がついた。
あとで様子を見に行ったほうがいいね、これは。
そして、気づいた。
もしかして、ダンジョンの管理者が変わったんじゃないの?
【三千世界のラスボス】のオリ子が、僕たちのボスのはず。企業でいえば代表取締役みたいなもの。ところが、そのトップが変わったりしてない?
オリ子が配置転換の監督をしていないのならば、この配置表にも納得できる。
うーん。ここらへん、調べてみる必要がありそうだね。
「あの~イコライザーさん? よろしいでしょうか?」
「どうかしました阿修羅さん? あと阿修羅さんがフロアボスなんですから、僕には敬語とかいらないですよ。びしばし命令してください」
「はっ、承知いたしました!」
うん、何も承知していないのは分かった。もういいや。
「それで阿修羅さん、どうしたんです?」
「実は本日、この第656階層のセーブポイントが使用される予定でして」
セーブポイントとは、最上級国民たちが『その階層から再開できる』というもの。
これのせいで、Sランクさんは滅多に第1階層を訪れなかったのだ。おかげで、こっちから狩りに行くことがしばしばだったけど。
「セーブポイントの使用って、事前に分かるものなんですか?」
「予約制ですので」
それは初耳。
「で、どんなパーティが来るの?」
「〈灼熱の蹂躙者〉──という二つ名を持つSランクが率いるパーティです。彼らは2年かけて、第655階層まで攻略してきましたが──そのやり口は、まさしく蹂躙に次ぐ蹂躙。攻略された階層では、モンスターたちは地獄を見ています」
配置換え早々、やり甲斐がありそうだね。
「じゃ阿修羅さん、命令をよろしくです!」
「私のかわりにフロアボスしていただけませんか?」
「うーん。それは却下」
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