13,ピクニックを楽しむ。
「知樹くん、知樹くん! 見ててくれた? 美弥ちゃんとわたしの連携プレーを?」
興奮気味な早苗さん。
「うん、見てたけど」
「恋人と妹さんの連携プレーだよ、知樹くん!」
最近、やたらと自称『恋人』したがるね早苗さん。
連携プレー自体は見事だったけどさ。
まず早苗さんが美弥と《影同化》。
その状態で、葉島彰浩さんの影に入り込んだ。
このとき彰浩さんは、僕に注意を引かれていたので気づかなかったわけだ。抜かったね。
一方、僕も狙撃手のことに気を取られていたので、早苗さんが影に入るのを見逃していた。
あとは彰浩さんの隙をついての、美弥の必殺の一撃。
ただ美弥は両腕を切断されていた。さすがの《自己回復》も腕の再接合はできない。
そこで諦めないのが美弥。殺しへの執念は人一倍です。
切断された腕をくわえて、《闇黒の爪》で彰浩さんの首を斬ったわけ。
アジト前に転がっている、葉島彰浩さんの死体。僕はそれを改めて眺める。
なかなかの強敵でしたね。
「切断腕で首切断ということだね」
ところで大願成就した美弥は、また気絶していた。
彰浩さんを殺したところで力尽き、いまは〈スリープ〉中。
〈スリープ〉とはモンスター共有のスキルで、強制睡眠に入って回復に努めるというもの。
「美弥をモンスター病院に運ばないとね」
すっかり病院の常連客になった美弥です。
「知樹くん、もう一人の敵である狙撃手はどうするの?」
「今から追跡しても、見つけられないと思うよ」
遠距離攻撃には、今のところ弱い。
イコライザーとして改善の余地はまだまだあるようだね。
僕は〈フリーダム〉のアジトに戻って、毒嶋さんに声をかけた。
「じゃ、僕たちは帰りま~す」
「おい、〈鬼神〉の死体は置いていくのかよ」
「〈鬼神〉? 誰です?」
「だから葉島彰浩のことに決まってるだろうが!」
「あー、はい。死体に用はないので置いていこうかと思うんですけど。何でしたら、毒嶋さんの手柄にしてもいいですよ」
〈鬼神〉とまで恐れられた最上級国民を討ったとなったら、毒嶋さんの株も上がると思ったので。
ところが毒嶋さんは顔を青くして、首を横に振った。
「冗談じゃない。〈鬼神〉を殺したなんて噂が立った日には、最上級国民どもの標的№1にさせられちまう」
反政府組織〈フリーダム〉のリーダーなんだから、もう標的リストの上位にいると思うけどね。
「まぁ、提案しただけですし」
ここで毒嶋さんが妙な顔をする。
「だが、やはり〈鬼神〉の死体はもらっておこう」
毒嶋さんの視線は、切断された彰浩さんの頭部に向いている。
切断面を見たら、モンスターの仕業と分かるものかな?
やっぱり、毒嶋さんに彰浩さんの死体を渡すべきではないね。
この死体を証拠にして、『〈フリーダム〉と同盟を結んだモンスターが殺したのだ』と吹聴されても困るし。
そういうフェイク・ニュースは困る。
「いえ。僕たちが責任をもって処分しておきますよ。早苗さん、彰浩さんの死体を保管してくれる?」
「は~い」
早苗さんが《影保管》で、彰浩さんの死体をしまった。
毒嶋さんが残念そうな顔をした──ような。
「それじゃ毒嶋さん。さよならです」
「ああ──なぁ。お前たちも、最上級国民を敵と見なしているわけだよな? ならば、俺たちの同胞と考えていいのか?」
「考えてもらっちゃ困ります。僕たちは政府を転覆させようとか、そんなことは考えてませんからね。僕たちモンスターは、ただ職務に忠実なだけですよ。そして最上級国民を狩るのが、僕たちの仕事なのです」
「だがこの国を裏から操っているのは、【四徳家】だぜ。奴らと戦争するんだったら、それは国を揺るがすってことだ」
「ふーん」
そんなふうには、考えたことがなかったなぁ。
これはオリ子に相談したほうがいいかも?
毒嶋さんと別れたあと、僕たちはちゃんとピクニックもした。せっかく早起きして、お弁当を作ったのだからね。
美弥に食べてもらえなかったのは、残念だけど。
「やったぁ! 知樹くんの手作りお弁当だぁ!」
と、テンション高めな早苗さん。
一方、小梨くんはサンドイッチを齧りながらも、心配そうに言うわけだ。
「おい南波。妹を一刻も早く、モンスター病院に連れていったほうがいいんじゃねぇのか? 半死半生だぞ」
「小梨くん。僕たちがピクニックを楽しむことを、美弥も願っているはずだよ。というわけで、からあげもあるからね」
その後、美弥をモンスター病院に運んだところ、全治22日だった。
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