12,あれ、天敵さん?
僕の影から早苗さんが顔を出して、
「知樹くん、知樹くん。確認なんだけど、いまの『優しい僕』は『優しい鬼畜の僕』という意味だよね?」
「早苗さん、顔を引っ込めてないと危ないよ」
葉島彰浩さんが《虚無刃》で再度、攻撃してくる。
それを僕は《地獄神》のドリルビットで受けた。《地獄神》でなければ、とっくに切断されているね。
「姉さんの両目を抉った貴様を、今度こそ俺の手で殺してくれる!」
「いまさら訂正しておきますけど、葉島小夜さんから抉ったのは右眼だけですからね」
さらに厳密にいえば、抉ったのは美弥だし。
膠着状態も何なので、僕は《自爆》を発動。
早苗さんは《影跳躍》で、屋内へと退避。
彰浩さんの背後で完全再生。ところがさらに僕の背後から、《虚無刃》が伸びてきた。
背中から心臓を貫かれながらも、後ろを見やる。
《虚無刃》の刃が、何もない空間から出現していた。
うーむ。この刃、空間内を移動できるのかぁ。
《自爆》で、とりあえず彰浩さんから距離を取って完全再生。
「今のはビックリしました」
「貴様、殺しても死なないというのは本当のようだな。【無限ダンジョン】が、代表として送り込んできただけのことはある」
「はぁ。何か勘違いされているようですけど、僕は別に【無限ダンジョン】の指示で動いているわけではないですよ」
「ならばなぜ、〈フリーダム〉のアジトにいた? 反政府組織群と同盟を結ぼうとしていたからではないのか」
「同盟なんか興味ないんですけどね。〈フリーダム〉のアジトにいたのは──」
あ、さては楓さんが何か彰浩さんに吹き込んだね。
だとしたら僕が否定すれば否定するほど、彰浩さんに間違った確信を抱かせそうだ。
「まぁ、何だっていいんですけどね──」
あぁ美弥が負けちゃったので、サプライズも失敗だ。
何を間違えたのかなぁ。僕の考えが甘かったのか──
いやいや。彰浩さんが強すぎたのが問題です。
《一心同体:24時間で使用できる回数制限ありバージョン》を発動。このスキルは、『自分で自分を破壊した負傷を相手にも共有させる』スキル。
自傷癖があると強いぞ。
同時に《地獄神》のドリルビットを、自分のこめかみに押し当てて。
「彰浩さん、さよならですよ!」
彰浩さんとは、《一心同体:24時間で使用できる回数制限ありバージョン》でリンク済み。
よって僕が自分の脳を貫けば、彰浩さんの脳も壊れます。
ところが──
ドリルビットをねじ込む前に、僕の右手が吹き飛んだ。
うーむ。右手に持っていた《地獄神》は、落下。
地面に落ちきる前に、召喚解除で消した。
ところで、今のは彰浩さんからの攻撃ではないね。
《個人情報取得》で確認。
やっぱり、今のは《狙撃》というスキル。
魔力弾を射出し、狙撃可能な最大距離は4000メートル。
えー、4キロも先にいるの?
どうりで《個人情報取得》でも、狙撃手の名前とかは分からないわけだよ。離れすぎていて。
いまのところ完全再生で移動できる距離が、66メートル。とうてい届かない距離です。
ほう。もしかしてこの狙撃手さん、僕の天敵では?
彰浩さんが勝ち誇る。
「単身で突撃してくると思ったか? 俺には常に頼れる相棒がいる」
彰浩さんが近接攻撃を担当し、狙撃手さんが遠距離攻撃で支援かぁ。
「そうなんですね~」
《一心同体:24時間で使用できる回数制限ありバージョン》のネタも知られているみたい。楓さんが教えたのかな。
もう一度、試そう。
まずは《自爆》。
ちなみに《自爆》での消滅は、《一心同体》でリンクできない。残念。
場所を移動して完全再生。同時に《地獄神》で、自分の心臓を貫こうとした。僕の心臓を貫くことで、彰浩さんの心臓をも貫くことになる。
ところがまたも狙撃されて、僕の右腕が吹っ飛んだ。《地獄神》がまた落ちる。
僕は右利きだからなぁ。まぁ左手で持っていても、同じことだろうけど。
気づいたら彰浩さんがアジトに向かっていた。
「イコライザー。貴様を殺すのは後回しだ。まずは毒嶋、そして貴様の仲間を皆殺しにしてくれる!」
僕は別のことにも気づいた。
あれ、美弥がいないぞ。
刹那。
彰浩さんの影から、美弥が飛び出す。
切断された右手をくわえながら。
くわえたまま、頭を振る。
右手の《闇黒の爪》が、彰浩さんの首を斬り落とす。
彰浩さんの頭部が「な、なんだとぉぉぉ!」と言いたそうな表情のまま、大地を転がった。
僕はひとこと。
「やったー!」
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