11,鬼神アッキー。
──葉島彰浩の視点──
着信。
スマホのディスプレイを見ると『佐伯楓』とある。
葉島彰浩は正直なところ、この女が大嫌いだ。
しかし【四徳家】からの電話を無視するわけにもいかない。
「葉島ですが、御用ですか?」
〔アッキー、アッキー!〕
「……」
〔ノリが悪いなぁ。いい情報を持ってきてあげたのに〕
「感謝いたします」
〔じゃ、アッキーって呼んでいいね? 彰浩だから、アッキーさっ!〕
「……はい」
〔でね。〈フリーダム〉拠点を襲撃したのに、肝心のリーダーである毒嶋文吉はいなかった──そう残念がっているアッキーに朗報です。実は毒嶋は、さっきのアジトにいたのでーす。ひっそりと隠れていたのだね。アッキーにしては、初歩的なミスだよねぇ〕
言われるまでもなく初歩的すぎるミスだ。
彰浩は自らの失態を恥じつつも考える。
なぜ佐伯楓はそんなことを知っているのか。
〔それとねアッキー。いま毒嶋くんは、イコライザーくんが匿っているようだよ。キミのお姉さんの両目を抉った、あのモンスターが〕
「……なぜ、ここにイコライザーが?」
〔さぁね~。もしかして、【無限ダンジョン】と反政府組織群が手を組むのかもしれないよ~。〈フリーダム〉は、反政府組織群の窓口。で、イコライザー君が【無限ダンジョン】からの代表。ね、辻褄があうでしょうが~? このままでは、日本がひっくり返る!〕
「そのような事態にはさせません。毒嶋、そしてイコライザーを必ずや仕留めます」
〔うん、頑張って。〈鬼神〉とまで言われたアッキーの強さに期待だよっ♪〕
通話が切れた。
★★
──佐伯楓の視点──
彰浩を煽るだけ煽ったので、楓は満足した。
同時にテキトーについた嘘が、ふと妖しく輝き出す。
(実際にさ、【無限ダンジョン】と反政府組織群が結託したら、面白いことになるかもねぇ。この国を壊してからのほうが、ボクの計画は捗りそうだし。
しかし、オリ子は反乱なんかやりたがらないだろうなぁ。いや、いや。それならそれで、やりようはあるかもよ)
★★
そのころ〈フリーダム〉のアジトでは。
──主人公視点──
「美弥、喜んで。サプライズがもうじき来るよ」
「兄貴。いい加減、サプライズの正体を教えてよ」
「葉島彰浩さんさ。萱野邸で、美弥のお腹を裂いた人だよ。是非とも美弥にリベンジして欲しくて、こうしてセッティングしたのだね」
とたん、瞳をキラキラと輝かす美弥。
「あの男を切り刻めるの? 兄貴、こんなの誕生日とクリスマスが一緒に来たようなものよ!」
「そう言ってもらえると、お兄ちゃん冥利につきるなぁ」
兄妹の絆が深まっているのに、水を差す輩がいました。
会話を盗み聞いていた毒嶋さんです。
「なんだと! 〈鬼神〉が戻ってくるのか!」
「誰です〈鬼神〉って?」
「むろん葉島彰浩に決まっている。奴は最上級国民の中でも、最も危険な男だ。反政府組織群の半数は、奴によって解体させられた。すなわち殺戮だ」
「反政府組織『群』なんですね」
そういえば、その手の組織っていくつもあるんだっけ。
かつては貧乏学生、今は【無限ダンジョン】のフロアボス。そんな僕には、関係のない話だけど。
「大丈夫ですよ、毒嶋さん。うちの美弥が返り討ちにしますから」
そんな話をしていたら、いきなり美弥がアジトから飛び出した。
どうやら葉島彰浩さんが到着したらしい。
僕もアジトから出る。
すると──アジト前の空地に、美弥が倒れていた。
両腕は切断され、頸からは激しく出血して。
両腕切断は《闇黒の爪》封じということかな。
頸の傷は、美弥が〈自己回復〉を持ってなかったら、致命傷だったね。
うーむ。
美弥がアジトを出てから、2秒も経っていないのに。
もう彰浩さんに倒されちゃったのかぁ。これぞまさしく秒殺。
「ところで彰浩さんは?」
「ここだ!」
頭上から、彰浩さんが襲撃してくる。
振り下ろされる《虚無刃》。
別に両断されてもいいんだけど、何となく《地獄神》のドリルビットで弾いた。
「あのですね、葉島彰浩さん。2度も妹を斬られたとあっては──さすがに優しい僕もキレますよ?」
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