3,「15分のカウントダウンをはじめますよー」。
《人狩りゲーム》当日。
集合場所で早苗さんと待っていると、迎えのワゴンが走ってきた。
さっそく乗り込むと、車内にはすでに2人のバイト仲間さんたち。
自己紹介タイム。
有岡さん──大学生の男性。
湯川さん──派遣切りにあったばかりの女性。
自己紹介が済んだころに、スタッフ側からコーヒーが配られた。
ははぁ。睡眠薬入りだね。では今回の《人狩りゲーム》はこのメンバーで確定らしい。
コーヒーは美味しかった。
爆睡。
のち起きる。
心配だ。こんなに昼寝してしまって、夜ちゃんと寝れるだろうか。
ところで僕はてっきり、先日の山地内に放置されているものとばかり思った。
本間さんの体験談ではそうだったので。
ところが人狩りさんたち、少し趣向を変えたようだ。
僕たちバイトメンバーは、建物の中にいた。
隣では早苗さんが眠たそうに目をこすっている。
そして3人の最上級国民もいた。
《個人情報取得》を発動。そのまえに設定を変更して、Sランク以外は苗字のみ表示に切り替えた(名前を覚えるのが面倒なので)。
まず1人目。樽みたいに太った男の人。
最上級国民ランクA。
苗字:前広 年齢:32歳。
主な悪事:殺人(人間狩り)。
得意な魔法:《業火刃》。
先日、本間さんにトドメを差したのは、この人かな。
2人目。厚化粧が目立つ女の人。
最上級国民ランクA。
苗字:境野 年齢:45歳。
主な悪事:殺人(人間狩り)。
得意なスキル:《支配する鎖鎌》。
本間さんの背中に刺さっていた鎌。あれはこの人のスキルか。
ところで、僕はいまだに魔法とスキルの区別がついていない。
3人目。やたらと手足の長い男の人。
最上級国民ランクS。
本名:赤岩二郎 年齢:38歳。
主な悪事:殺人(人間狩り)。
得意な魔法:《征服竹》。
Sランク来たー。
嫌でも、テンションが上がるよね。
赤岩さんが代表して言う。
「諸君、喜ぶがいい。君たちは我々の退屈しのぎのため、犠牲となる名誉を得たのだ。──という説明をこれまでは省いてきたが、それではあまりに簡単に狩れてしまうのでね。だから、こうしてルールの説明をすることになった。なにか質問はあるかね?」
有岡さんが恐るおそると手を挙げた。
「あの、あなた達は最上級国民の方ですよね? ぼくたちはゴミ拾いをするため雇われたんじゃ?」
とたん最上級国民さんたちが大笑い。
「これだから、一般市民は頭が悪くて困る」
うーん。説明不足なほうが悪いと思うけどなぁ。
「ケチな日給に釣られた貧乏人どもが。だがいいだろう。もしも生きて下山することができたら、褒美として3000万円くれてやろう。我々にはこれでもはした金だが、君たちのような下賤の者には涎が出る額だろう?」
今度は湯川さんが挙手して、
「生きて下山できたら、とは? 命の危険があるんですか?」
これには厚化粧な境野さんが答える。
「あんたらはね、私たちに狩られるんだよ」
「狩るって、そんな──そんなの犯罪です!」
「バカだねぇ。法律ってのは、あんたらのような下等な連中たちを律するためにあるのさ。私たちには通用しないんだよ。だからいくら狩ってもお咎めなし」
「そ、そんな」
肥満体型の前広さんが、肉厚な両手をぱちぱちと叩く。
「もういいだろ。残りのルールを説明して、さっさと始めよう。お前たちは身を守るため、一つだけ武器を持つことが許される。それらは隣の部屋に置いてあるから、好きに選べ。
お前たちがこの建物から出たら、俺たちは10分だけ待つ。それから追跡を始める。死にたくなければ、せいぜい死ぬ気で逃げることだな。はっはっはっ!」
脂肪をふるわせて、爆笑する前広さん。
僕もなんとなく笑えてきた。
ハッピーな気持ちになったので、挙手。
前広さんがゴミでも見るような目で、僕を見た。
「なんだ?」
「ルールを変更しましょう。僕はここで15分だけ待ちます。だから、あなた達はそのあいだに逃げてください。死にたくなかったら、死ぬ気で逃げてくださいね」
今度は最上級国民が3人で大爆笑。
笑いを提供できて、ぼくも嬉しい。
「じゃ、15分のカウントダウンを始めますよー」
前広さんが僕の前まで歩いてくる。
「下等市民が、恐怖のせいで頭でもおかしくなったのかぁ? 死ぬのはお前だよ」
炎の回転刃が現れ、僕を頭から股へと両断する。
有岡さんと湯川さんが悲鳴を上げ、前広さんは唾液を飛ばしながら笑う。
それから有岡さんたちが逃げ出す。
早苗さんは僕の考えが分かったようで、ひとまずバイト仲間に同行して駆けて行った。
それから10分が経過。今度は赤岩さん、境野さん、前広さんが出発。
「今日は、ちゃんといたぶってから殺さないとね。前広、あんたは簡単に殺しすぎ」
「すいません境野さん。俺の《業火刃》はコントロールが難しくて」
「まぁいいじゃないですか、境野さん。楽しく狩れればそれで」
「赤岩さんが、そうおっしゃるのでしたら」
などと会話しながら。
僕はといえば、両断された死体のまま待った。
待って、ようやく約束の15分が経過。
完全再生。
そして《地獄神》を召喚。
「じゃ、僕も出発しまーす」
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