1,デートする。
──主人公の視点──
「知樹くん、知樹くん」
「なに早苗さん?」
「明日、休みだよね? 一緒にどこか遊びに行かない?」
いまはEランク冒険者パーティと交戦中。
僕はといえば、敵のパーティ・リーダーの頭頂部にドリルビットを叩き込んでいた。
早苗さんは別の冒険者を、背中から《影刃》で切り裂いたところ。
「デートってこと?」
「え、デート? そんな重たい感じなの? 重たい感じでいいなら、それはもうデートだよね? よし、デートしよう!?」
謎のテンションに陥る早苗さん。
2人目の冒険者の胸部に《影刃》を突き刺してから、やたらと捻る。
捻るたび、冒険者が叫ぶ。
「痛ぁぁぁぁ、もうもう殺し、殺しでぇぇぇ!」
しかし、なかなかトドメを差してあげない早苗さん。
いたぶっているわけではなく、突き刺している冒険者のことを失念している様子。
「いいよ早苗さん、デートしよ」
「本当に? やったぁ!」
嬉しさ一杯の早苗さん。《影刃》を思い切り上下させて、冒険者を両断した。
こうして早苗さんとデートをすることになった。
ちなみに美弥はいまも入院中。先週、彰浩さんに裂かれた腹部は、まだ完治していなかった。
お見舞いに鬼〇全巻差し入れしたので、ご機嫌だけど。
翌日。
早苗さんとは【無限ダンジョン】で待ち合わせ。ここがお互いの家の、ちょうど中間地点だったので。
早苗さんはちゃんと衣服を着ていた。
最近は人間に偽装するのにも慣れて、自宅にも帰っているらしい。小梨くんと違って、モンスター化しても姿形はほとんど人間だったしね。
とはいえ、全裸ではない早苗さんを見るのは新鮮だ。
「ね、知樹くん。なんだか、衣服を着ていると落ち着かなくて。やっぱり脱いでいい?」
「うーん。たぶん全裸でデートしていたら、補導されると思う」
「じゃ我慢する」
「それで、どこに行くの?」
「ふふん。知樹くん。これ、なーんだ?」
早苗さんが突き出してきたのは、地図だった。
「観光MAP?」
「ただの観光MAPじゃないよ。最上級国民Sランクのお家MAPだよ!」
公表されているSランクの豪邸を巡ろうということらしい。
「でも、どうして?」
「だって知樹くんは、『Sランク皆殺し』コンプリートが野望なんだよね? これから殺す予定の人たちを遠くからでも眺めたら、ワクワクするんじゃないかなと思って。どうかな?」
だんだん早苗さんに惚れてきそう。
さっそく出発。Sランクの豪邸を見てまわり、遠くから支配者然とした最上級国民たちを眺める。
はじめは楽しかったけど、だんだん辛くなってきた。ご馳走を前にして、指をくわえているようなものだよ。
東間というSランク豪邸に来たところで、事情が変わる。
ちょうど東間正という当主が、邸宅から出てきたところ。
その人物には見覚えがあった。先日、萱野邸から逃げた5人の一人だ。
「早苗さん。ちょっと仕事してもいいかなぁ?」
「知樹くん。そんな許可とか求めなくていいんだよ。知樹くんは、仕事しているときが一番輝いているもんね」
だんだん早苗さんに惚れてきそう。
「じゃ、さっそく」
《地獄神》を召喚しながら、駆けだす。
東間家の敷地内に入ったとたん、警報が鳴りだした。さては『モンスター警報』みたいな魔法がかけられていたのかな。
高級車に乗り込もうとしていた東間正が、ハッとする。
僕を見るなり、その顔には恐怖が浮かんだ。
うーん。Sランクなんだから、もっとタフでいて欲しいものだよね。
第1階層のフロアボスを見たくらいで恐怖するって、どういうことだ。
「東間正さーん。【無限ダンジョン】第1階層フロアボスのイコライザーでーす。先日は、うちのカナさんがお世話になりましたー」
「く、来るな! 《土人形創造》!」
大地が盛り上がり、土塊の巨人と化す。ゴーレムだね。
ゴーレムの巨大な拳が振り下ろされ、僕は潰された。
僕の肉片が、ゴーレムの拳にこびり付く。
東間さんが安堵しつつも、勝ち誇る。
「はっ、どうだ! 最底辺のクズモンスターが! 私の敵ではないぞ!」
そんな東間さんの真横に、僕は完全再生。
東間さんの右耳の穴に、ドリルビットをねじ込んでみた。
「ぎゃぁぁぁああああぁぁぁ!!!」
「Sランクさんは、耳の穴も綺麗ですね~」
「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「このまま脳味噌までいきますよ~」
「あががががかがががかかかかかかかかかぁぁぁぁぁぁぁ……………!!!」
息絶えたので、ドリルビットを引き抜く。
ゴーレムが崩壊していく。
早苗さんが駆けてきて、スマホを取り出した。
「知樹くん、一緒に自撮りしよっ! デートの思い出に!」
「いいよ。じゃ東間さんの死体をバックにして」
「撮るよ~。3、2、1──」
カシャ。
なかなか、いいデートだったね。
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