8,「まずは右手首からいきますか?」。
葉島彰浩さんが《虚無刃》を一閃。
僕は首を刎ねられた。
ところが生きている。
もちろん、これまでも《殺しようがない》のおかげで、死んだことはないけどね。
ただ首とか斬られたら、『通常意識』はシャットダウンされていた。これまでは。
ところが今回は『通常意識』も動いている。
これが何を意味するかといえば、他の人だとしても生きているだろうということ。
どうやら《虚無刃》に秘密がありそうだ。
彰浩さんは僕の生首を持ち上げて、自分の目線の高さにした。
「これが《虚無刃》の能力だ。切断した事実を『先延ばし』にする。おれが認めるまで、貴様は生首のまま生き続けることになる」
言葉を出そうとしたけど、出なかった。
まぁ生首だけだしね。
「この姿で、姉さんの両眼を抉った罪を償うがいい」
彰浩さんが僕(の生首)を持ったまま、邸内へと入っていく。わざわざ運んでくれるとか、この人は親切だなぁ。
大広間では、変態パーティが繰り広げられていた。
多数の美人ゾンビさんがパーツごとに分解されて、他のパーツと組み合わされている。ちゃんと接続することで、問題なく動作もできるわけ。
フランケンシュタインの方向性かなと思ったけど、これはちょっと違うね。
ようは人形遊びだ。
ビッグ・パパこと萱野堅持らしき人を見つけた。
念のため、《個人情報取得》を発動。
最上級国民ランクS。
本名:萱野堅持 男 46歳。
主な悪事:殺人、強姦、モンスター破壊。
得意な魔法:《巻き戻し》。
《斬撃》。
《巻き戻し》という魔法は、興味を惹かれるね。
さらに解析してみよう。
《巻き戻し》:3秒だけ時を巻き戻せる。
ふーん。巻き戻しされる前に、サクサクと殺さないとダメなのかな。
そんな萱野さんが、僕の生首を見つける。
「葉島よ、その生首はなんだ?」
「侵入者です」
「《虚無刃》で斬ったのか? ならまだ生きているな。なかなかボーイッシュで可愛い顔をしているじゃないか。よし、そこの胴体にくっ付けろ」
「承知いたしました」
ボーイッシュな可愛い顔ってなんだ。まさか女子と間違われた? 地味にショック。
そのとき──
大広間の窓を突き破って、美弥が飛び込んできた。
「兄貴~助けにきたわよ~」
わぁ。棒読み。
僕を助けるとか言って、ただ我慢ができなかっただけだよね。
「さらなる敵か!」
彰浩さんが僕を投げ捨てる。
僕は生首のまま床を転がっていき──ゾンビさんの一人に止めてもらった。
感謝の眼差しを向けてみたら、カナさんだ。
奇跡的にまだ五体満足。
カナさんの不運力を思えば、とっくにバラバラにされていると思ったよ。
「南波さん……大丈夫ですか?」
とりあえず玄関に残してきた胴体を《自爆》で処分。
それから視線で訴える。
「えっと。向こうに投げて欲しいんですか? 分かりました。いきますよ!」
僕の計画では、彰浩さん目掛けて投げてもらったところで、完全再生。
ところが上手くいかない。
頭部って、けっこう重いんだよね。非力なカナさんでは遠くまで投げられず、ポトリと落ちた。
「ごめんなさい、わたしには無理です!」
僕は改めて視線で訴える。
「えっと。向こうに転がすんですか? ボーリングみたいに? 分かりました。いきますよ!」
僕の計画では、彰浩さん目掛けて転がしてもらったところで、完全再生。
ところが上手くいかない。
カナさん、ボーリングがクソ下手だった。
変な方向へと転がっていき、萱野さんの足元で止まった。目があう。
完全再生──からの《地獄神》召喚。
「僕は男子ですよ」
萱野さんの眉間にドリルビットを叩きこもうとした。
瞬間。
萱野さんが《巻き戻し》を発動。
3秒戻ったところで、やり直し。
僕はまた生首に戻っていて、カナさんにボーリングのように転がされるところだった。
だが今回は、萱野さんが駆けてくる。
「その生首を寄こせ!」
「わぁぁ!」
カナさんが僕(の生首)を抱き上げて、走り出す。ところが鎖につながれていたので転んだ。
萱野さんが追いつき、僕の生首を踏みつける。
「貴様、なぜさっきは完全再生したのだ? まぁいい。何度不意をついてこようとも、そのたびに《巻き戻し》でなかったことにできるのだからな」
『なかったこと』にされたのに、その時の記憶が僕にはある。
《個人情報取得》で解析しておいたからかな。
とはいえ、《巻き戻し》は面倒だなぁ。
よし、新しいことをやってみよう。
生首はそのままで、胴体だけを萱野さんの背後に再生。
萱野さんは僕の生首に気を取られていて、まだ気づいていない。
胴体を操作して、萱野さんの首筋にドリルビットをねじ込む。
「ぐぁぁぁぁ!」
萱野さんがその場に倒れた。
脊髄をやったので、首から下は麻痺したね。
僕は今度こそ完全再生してから、萱野さんに屈みこむ。
「しつこいようですけど、僕は男子です」
「た、たたたたたたたたた、助けてくれ。わ、私の体が、う、動かんのだ。動かんのだぁぁぁぁ!」
やっぱり肉体に大ダメージを受けると、魔法を使えなくなるみたい。《巻き戻し》敗れたり。
「いま助けてあげますよ」
近くに大鉈が転がっていた。ゾンビの手足を解体する用だね。それを拾い上げて、萱野さんのところに戻る。
大鉈の刃をちゃんと見せてあげる。
「き、きききききき、貴様ぁぁ何をするつもりだぁぁぁぁぁぁ!」
「まずは右手首からいきますか?」
萱野さんの右手首に、大鉈を叩き込んだ。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「じゃんじゃん行きますよー!」
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