6,未来の芽を育てよう。
則子パパから、萱野さんの自宅住所を入手。
僕は《地獄神》のドリルビットを、まだ則子ちゃんの頭頂部にあてていた。
「ありがとうございます。じゃ、娘さんもお返ししますので。僕たちは行きますけど、大声を上げて僕たちを殺せとか言わないでくださいね。約束してくれますか?」
則子パパは青ざめたまま答える。
「や、約束する」
「則子ちゃんの命にかけてですか?」
「そ、そうだ」
「分かりました」
《地獄神》を消す。娘を思う父親を信じなくて、誰を信じるというのか。
「じゃ行こう、美弥。ばいばい、則子ちゃん。冒険者になったら【無限ダンジョン】においでね」
僕と美弥が歩き出す。工場の周囲は非常線が張られていた。
「美弥。解体工場のお客さんだったフリをして、通してもらおう」
そのとき則子パパが怒鳴る。
「おぉぉぉい! そいつらはモンスターだぞ! 私の娘を傷つけもしたんだ! 殺せ、殺せ、殺せぇぇぇぇ!」
慌てて冒険者パーティが駆けて来る。《個人情報取得》によると、パーティ総合ランクがD。いまの美弥の敵じゃないか。
「美弥。僕は約束を果たしてくるから、ちょっとよろしく」
「しょーがないわね」
美弥が冒険者パーティへ突撃。
迎え撃つ冒険者パーティが魔法攻撃を放ってくる。
しかし美弥の敏捷性が勝り、魔法攻撃は命中しない。
跳躍した美弥は、パーティの中央に着地。うーん。美弥を相手にするのに、あのパーティは密集しすぎだね。
そこからは美弥のダンス。華麗なるステップを踏みながら、《闇黒の爪》を数閃。
冒険者たちの首やら腕やら足やらが切断されていく。
「うわぁぁぁぁぁぁぁあ!」
「な、なんだコイツはぁぁぁ補足できなぎゃぁぁ!」
「誰か、誰か回復魔法をぉぉぉぉ死にたくないよぉぉぉ!」
「おれの右腕、右腕、拾って、拾ってくださぃぃぃぃ!」
「腹からぁぁ、腹の裂け目からぁあ、臓物が出りゅぅぅぅぅぅぅ!」
僕は則子ちゃんのもとへ走って行く。
則子パパが慌てて娘を抱き上げて、死に物狂いで走る。
「誰かぁぁぁ! 誰か助けてくれぇぇぇ! 娘がぁぁぁ」
則子パパも最上級国民だが、戦闘力はたいしたことないようだ。速度もあまり出ていない。これならすぐに追いつけそう。
ところが、邪魔が入る。
「貴様、とまれぇぇ!」
こちらは冒険者ではなく、機動隊の皆さん。一列になってシールドを立てて、僕の行く手をふさぐ。
うーむ。職務に忠実なだけの一般市民は殺したくないなぁ。
そこで《自爆》を発動。
いったん粉みじんになってから、機動隊の向こう側にて完全再生。
機動隊を通りこせた上に、則子パパとの距離も縮まる。一石二鳥。
「則子パパさぁぁぁぁぁぁん! 約束は守ってもらいますよ! あなたも大人でしょう、たとえ口約束でも死んでも守らせますからねぇぇ!」
「ひぃぃぃぃぃ! く、来るなぁぁぁぁぁぁぁ!」
蹴躓く則子パパ。
倒れた拍子に、則子ちゃんが前方に転がった。
「則子ぉぉぉ!」
僕は滑り込むようにして、則子ちゃんのそばで停止。
「では則子ちゃん。パパさんの約束のため死んでね」
《地獄神》を則子ちゃんの頭頂部に叩き込──む瞬間、ふと思い直す。
このまえ観た洋画で、子供のとき父親を殺された主人公が、復讐マシーンとなる話があった。
則子ちゃんも、いけるかもしれない。
そこで僕は則子パパのもとへ歩いていく。
「た、頼む、娘だけは助けて」
「いいですよ。則子ちゃんを狩るのは、10年ほど待ちます」
則子パパの右眼球にドリルビットを叩き込む。さらに押し込んでいき、脳味噌まで達する。
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
いったん引き抜く。
まだ則子パパは生存中。ただ視線が意味不明な方向に向いていて、片側の顔面の筋肉がボコボコ動いているけど。
ふーむ。脳破壊が中途半端だったみたい。今度は左眼にドリルビットを叩き込んで、やはり脳まで侵攻。ぐぉぉぉぉ。
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあがかかかかかかかかかか……………!」
これで良し。
「パパぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
悲鳴を上げている則子ちゃんの右掌にも、ドリルビットで穴をあけた。
「痛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃぃい!」
「この穴を見るたびに、お父さんの仇を思い出すんだよ。そして鍛えに鍛えて、素晴らしい復讐マシーンになってください。僕は【無限ダンジョン】で待ってるからね」
未来の芽は摘まず、育てる。
それもまた、フロアボスの仕事なのです。
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