2,『冒険者を狩ろう! 狩れなかったらハンバーガーの具材だよ!』週間。
『冒険者を狩ろう! 狩れなかったらハンバーガーの具材だよ!』週間、開始。
早々に結果を出したのは美弥だった。まぁ驚かない。
4人パーティの冒険者(パーティ総合ランクはD)を、皆殺し。とくに四肢切断からの連続首チョンパは、芸術の域まで到達していたね。
ところが、その後も美弥が冒険者を殺しまくるので、僕は注意した。
「あのね、美弥。独り占めはよくないよ。楽しいことは皆で分かち合わないと」
「何よ兄貴。殺したいときに殺せるのがモンスターの醍醐味でしょ」
駄々をこねる妹が可愛い。
しかし僕はフロアボスであり、美弥は妹の前に部下なのだ。
そこで命じた。
「今週はもう冒険者を狩ることは禁ずる!」
「ぎゃぁっ!」
胸を撃たれでもしたように倒れる美弥。それだけショックだったらしい。
続いて冒険者を狩ったのは、小梨くんだった。
小梨くんの最近の習慣というのが、冒険者に対して『俺はモンスターじゃねぇ被害者だ!』と訴えること。
モンスター言語なので通じるはずもないのに。
たいていの冒険者は強敵モンスターが現れたと勘違いし、猛攻を仕掛ける。
小梨くんも気が短いので、すぐに逆切れする。ダメだよね、逆切れは良くない。
「だから被害者だって言ってんだろうがぁぁぁ! 攻撃してくんじゃねぇぇぇぇぇ!」
で、《拳落》発動。
グチャリと潰れる冒険者。
「やったね、小梨くん! 冒険者狩りおめでとう!」
「……畜生が、めでたくなんかねぇ」
3体目の成功者は、ホブ雄さん。
実は第2階層のフロアボスだったホブ雄さん。第1階層に来るために、フロアボスの地位を捨ててきてくれたという。これぞモンスターの鑑。
ホブゴブリンの必殺スキル《棍棒流星》が、Dランク冒険者を襲う。あっという間に、ミンチにしてしまった。
そんなホブ雄さんの勇姿を見守りつつ、早苗さんが不安そうに言う。
「わたし、あんなふうに戦えないよ。知樹くん、どーしよう?」
「とりあえず、僕の影から出るところから始めたら?」
僕の影から顔を出していた早苗さんが、傷ついたという顔で。
「わたしを捨てるんだね、知樹くん!」
フロアボスとして、僕はどうするべきか。厳しく接するだけがマネジメントではない。部下をやる気にさせることも大切だ。
コンビニ入店音。
新たな冒険者が来た。60代の夫婦だ。ランクはC。退職してから【無限ダンジョン】にハマる最上級国民も少なくない。
「早苗さん。あの冒険者たちを狩ってきたら、何でも一つだけ言うこと聞いてあげる」
「え、知樹くんが! じゃぁ、わたしと〇▼×□●△×□してくれるの???」
「……そんなエグイことはしません」
「じゃキス」
「口はちょっとなぁ」
「頬っぺたでいいよ!」
「じゃそれで」
「やったっ!」
早苗さんが影から飛び出し、《影球体》を発動。
自らを影の球で包み込み、猛スピードで転がるスキル。影球は防御力が高いので、突撃に向いている。
熟年夫婦の最上級国民も、早苗さんに気づく。
ここで早苗さんは《影霧》を使い、影の煙幕をまく。
冒険者たちの視界を奪ったところで、《影球体》を解除──からの《影弾:連射モード》。
夫婦ともに被弾。共に倒れるが、まだ息はある。
早苗さんはまず、旦那さんのほうまで歩いていく。
「ま、まってくれ。わ、私たちには、こんど初孫が──」
と、命乞いする旦那さん。
早苗さんは至近距離から《影弾》を撃って、そんな旦那さんの頭を吹き飛ばす。
飛び散る脳漿。
「あ、あなたぁぁぁぁ!」
と叫んでいる奥さんの頭部にも、《影弾》をぶち込む。
嬉しそうに駆け戻って来る早苗さん。
「知樹く~ん、ご褒美タイム!」
「はい、はい」
早苗さんの右頬にキスした。やわらかい。
「ふぎゅぅぅぅぅぅぅ…………」
という変な声を上げて、顔を真っ赤にした早苗さんが腰を抜かす。このまま昇天しないか心配だ。
何はともあれ、『冒険者を狩ろう! 狩れなかったらハンバーガーの具材だよ!』週間もまだ半分のうちに、カナさん以外がクリア。
僕の部下たちは優秀なようで何より。
「あとはカナさんだけだね。で、うちのアンデッドはどうしたの?」
ここ数日、カナさんを見ていないような。
みんなでカナさんを捜していると、オリ子が第1階層まで上がってきた。
「みなの尊敬するボスが来たぞ~」
「どうもです、オリ子さん」
「イコよ、快調に冒険者を殺しまくっているようだな。ほかの階層のモンスターたちも、お主に一目置いているぞ。なかでも第888階層フロアボスである刻竜なんかは、お主の部下になりたがってな。第888階層から出られちゃ困ると説得するのに、一苦労だったぞ」
「はぁ。そんなことより、うちのカナさん知りません?」
「おお、カナのことは残念だったな」
「え?」
「ショッピングセンターにいたところを発見され、ゾンビ狩りに捕まってしまうとはな。今頃はゾンビ解体工場だろう──なんだ初耳だったのか?」
「はい。というか、カナさんはアンデッドなんですけど」
「一般的には、ゾンビもアンデッドも同じだぞ」
「ゾンビ解体工場ってなんです?」
「最上級国民が運営している、【無限ダンジョン】のパクリみたいなものだな。そこでは、ゾンビ限定で殺しまくっているわけだ」
「うちのアンデッドを拉致するなんて──そこの人たちは、よほど皆殺しにされたいようですね」
気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。




