10,「足首、失礼しま~す」。
守谷邸には中庭があった。
サッカーの試合ができそうなほどに広い。
勝好くんは、この中庭で待ち構えていた。
僕を待っていてくれるとは、そこは好感が持てる。
「てめぇ、一体なんなんだ? なんだって俺たちに付きまとう!」
「飯山智子さんを殺すからですよ。智子さんにはミカンの恩義があったのに」
「ミカンの恩義だとぉ?」
「とはいえ、もともとSランクのお宅にお邪魔することは決定していましたからね。ある意味ではありがたかったです。初めにどのSランクを選ぶべきか、迷わずに済みましたので」
勝好くんは頭をかきむしりだした。
「ふざけんじゃねぇぞ。さっきから訳のわからねぇことを言いやがって。
俺たちを何だと思ってやがる? いいか、俺たちこそがこの国を動かしているんだぞ。てめぇらのような雑魚──自分たちだけじゃ、まともなことができねぇ庶民どもを、俺たち選ばれた人間が使ってやってんだ。
だからよ、ちょっとガス抜きに殺したっていいだろうが! てめぇら掃いて捨てるほどいるんだから、何人か減ったって構わねぇだろうが!」
長話する人だなぁ。
勝好くんが右手を突き出すと、そこに魔法陣が現れる。
「それを何がミカンの恩義だぁぁ? てめぇいい加減にしやがれよぉぉぉぉぉ!」
魔法陣から異形が現れた。だけどモンスターではない。
ははぁ、あれが召喚獣か。
一説には最上級国民が操る召喚獣とは、悪魔とか天使らしい。授業でそう習った。
勝好くんが荒い息を吐きながらも、勝ち誇る。
「覚悟しろよ、クズが。コイツは俺様の召喚獣アドだ。てめぇをミンチにして食っちまうぜ。命乞いしてももうおせぇ。ハラワタまき散らして死にやがれぇぇぇぇぇ!」
アドという召喚獣が突進してくる。
うーん。悪魔と戦うのは初めてだ。
僕が《地獄神》を召喚した瞬間──
アドが大地に跪いた。そして人間の言葉で、
「おお、陛下!」
陛下? 僕が? 違うな。
《地獄神》のことかな。
…………ああ、これ召喚獣だったの!
僕が衝撃を覚えていると、勝好くんが怒鳴り散らす。
「アドぉぉぉ! てめぇサボってんじゃねぇぇぇ! そいつを殺せぇぇぇ! 血の契りを忘れたのかぁぁぁぁ!」
しかしアドは動かない。《地獄神》はよほど高位の悪魔らしい。オリ子はどうやって、そんな悪魔を電動ドリルにしたんだろ。
アドのそばを通り過ぎて、勝好くんのもとに向かう。
「く、くるんじゃねぇぇ!」
勝好くんが《炎槍》を連射してくる。
僕は歩きながら、炎の槍に串刺しにされていく。そのたびに完全再生するのも面倒だ。よって少しは我慢。
5本くらい貫かれたあたりで、歩くのが大変になるので完全再生。
「ふ、ふざけるな、お、俺はSランクだぞ、こ、こんなこと、あって、たまるかぁぁぁ!」
Sランクにしては、《炎槍》しか出さないのはガッカリだ。
ただ勝好くんのジョブは、召喚士。
最大の強みであった召喚獣アドが戦意喪失では、迫力不足なのは仕方ないか。
ついに勝好くんの眼前へ。
手を伸ばせば届く位置まで来た。
苦労したなぁ。
苦労したからこそ、歓びもひとしおだよ。
「どうも、どうも勝好くん」
勝好くんはショックのあまり呆然。
「こ、こんなことあって、た、たまるか。こんなことが、こんな──」
「足首、失礼しま~す」
屈みこんで、勝好くんの右足首へドリルビットを叩き込む。ぐぉぉぉぉ。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!! ふ、ふざけんじゃねぇぇぇぅぅ!」
抵抗を見せるが、僕は構わず左足首もドリルビットで破壊。
これでまともに歩けなくなった。
「早苗さん、よろしく~」
「は~い」
影から早苗さんが這い出してきて、勝好くんに抱きつき、影へと引きずり込んでいく。
「や、やめろぉぉぉぉぉ……!」
勝好くんと交代して、美弥が出てくる。今のところ早苗さんが一緒に影化できるのは、一人までだから。
「美弥、自力で脱出できる?」
「猫ちゃんの運動能力を舐めないでよ」
「じゃ、【無限ダンジョン】で」
美弥が猫の敏捷さで走っていき、守谷邸の塀を乗り越えて行った。さすが猫娘。
一方、上空からは小梨くんが急降下してきて、僕をつかみあげて飛びあがる。
守谷邸を脱出したところで、まっすぐ【無限ダンジョン】第1階層へ。
そこで勝好くんを影から引きずり出す。
「や、やめろぉぉぉぉ! 考え直せよぉぉぉ。お、俺を殺したら、【無限ダンジョン】なんか報復で潰されちまうぞ! そ、それでいいのかよぉぉぉ!」
うるさいので、脾臓をドリルビットで破壊しておく。
「ぎゃぁぁぁぁぁああああああ!」
そのころには、第1階層のみんながそろっていた。
美弥、早苗さん、小梨くん。さらにカナさん、ホブ雄さん(ホブゴブリンの名前)も。
「せっかくのSランクです。そこで、みんなで代わるばんこで破壊していきたいと思いまーす」
「賛成だけど、順番はどうするの? 誰からSランクを痛めつけるのよ!」
切り刻みたくて仕方ないという美弥。
「まぁ落ち着いて美弥。公正な方法として──あみだくじで決めるよ!」
気に入って頂けましたら、ブクマと、この下にある[★★★★★]で応援して頂けると嬉しいです。励みになります。




