9,育ててから、食べるんだよ。
「どうも、はじめまして。南波知樹といいます。夜まで待てないので、来ちゃいました」
挨拶したところ、いきなり消滅させられてしまった。
今までも、体を跡形もなく吹き飛ばされてきたけど。
これは別格。
完全なる虚無の世界。
そこを泳いでいって、デスクの上で完全再生した。
同時に守谷卓氏の頭頂部へ、《地獄神》のドリルビットを押し込む。
【無限ダンジョン】内で殺さないと一円も貰えない。
けど、僕に後悔はない。これが僕にとって、はじめてのSランク殺し。
我慢などできるはずもない。初体験は済んだので、次からはじっくりいこう。
なんといっても、メインディッシュの守谷勝好くんがいるじゃぁないか。
守谷卓さんの脳を破壊しきったところで、ドリルビットを引き抜いた。
実は守谷卓さんは、《守護神》という防御魔法を常時発動していた(《個人情報取得》で確認済み)。
《守護神》とは、全ての攻撃を防ぐ最強の防御魔法──だったけど、《地獄神》だけは例外でしたね。
デスクから降りる。
勝好くんは叫んでいた。
「オヤジぃぃぃぃい!」
「勝好くん、元気がいいね」
ところで美弥たちは無事かな?
影を見下ろすと、早苗さんが右手だけ出してきて、OKサイン。
良かった。僕が消滅したとき、影だけは切り離されていたようだ。早苗さん、《影女》として腕を上げたね。
さて。ようやく会えた勝好くんのもとへ向かう。
ところが、女の人が立ちふさがった。
年齢は20代半ば。長身で、切れ長の目が印象的。護衛の人かな。
「貴様! よくも旦那様を!」
《個人情報取得》を発動。
最上級国民ランク:???
本名:葉島小夜
これまでの主な悪事:殺人(ただし護衛任務中に限る)。
得意なスキル:《虚無球》
ははぁ。さっき僕を消滅させたのは、この人か。
にしても国民ランクが『???』というのは、どういうことだろう。
さらなる解析をして知った。
『???』とは、まだ先があるということだ。今はEランクかもしれない。だけどいつかはSランク、それどころか伝説のSSランクにまで到達するかもしれない。
葉島さんには、その可能性がある。
そのとき僕はひらめいた。これぞ新しい領域。
激昂する葉島さんが《虚無球》を発動。
「消えろ!」
消された。
ので、葉島さんの目の前で完全再生。
「なっ!」
驚愕する葉島さんの右鎖骨に、ドリルビットを打ち込む。
「ぐぁぁ! き、貴様ぁぁぁあ!」
再度、《虚無球》で消し飛ばさる。
虚無の中で、僕は気づいた。
《虚無球》は、まさしくチートスキルだ。なぜなら回避も防御もほぼ不可能なのだから。
ところが、僕にとっては相性抜群。
丸ごと消してくれたほうが、好きなところに完全再生できるからね。
今度は葉島さんの後ろで完全再生し、連続ドリルビット。
左わき腹、臀部、右わき腹、肩の付け根とランダムに穴を開けていく。ただし致命傷には至らないよう気をつけて。
「こ、この──!」
またも《虚無球》で消されてから、今度は屈んだ状態で完全再生。
目の高さにあるのは、葉島さんの膝小僧。
両方ともドリルビットで破壊。
「ぐぁぁぁああぁぁぁ!」
最後に、彼女の腹部にも連続打ち込みをしてから、僕は離れた。
ついに葉島さんが倒れる。ドリルビットによる穴からは、どくどくと出血中。
僕の影から美弥が現れて、
「兄貴、この女のトドメはあたしにさせて」
「ダメだよ、美弥。葉島さんは殺さない」
「えー、どうしてよ?」
「僕たちも次の段階に進むときだよ。僕たちで最上級国民を育てるのさ」
この言葉だけで、美弥は全てを理解したようだ。さすが僕の妹だけはある。
「つまり葉島という女が最上級国民として『ランクが肥えた』ところで──」
「美味しく食べる。もちろん、【無限ダンジョン】で」
僕は葉島さんのもとに歩み寄った。
闘志は失われていないようで、僕を睨んでくる。だが《虚無球》は、もう発動できないようだ。MP切れのためか、負傷のためかは不明。
「葉島さん。復讐したかったら、【無限ダンジョン】に来てください。ただし今のランクのままだったら、僕たちは相手しませんので」
「貴様は、何がしたいんだ……なんなのだ……一体、なんの恨みがあって、こんなことを──」
美弥が口笛を吹きながら来て、《闇黒の爪》を一閃。
葉島さんの右眼球を抉り取った。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁああ!」
「美弥、なにしてるの?」
転がり落ちた右眼球を、美弥は靴で──
「これで毎朝、洗面所の鏡を見るたび、あたしたちへの憎悪が膨れ上がるでしょ?」
通常の回復魔法では、失われた器官までは再生できない。
よって葉島さんは片目を失った原因を、常に覚えていることだろう。
憎しみこそが冒険者を強くする。
さすがは美弥。
可愛い妹だけはある。
ところで──
僕と葉島さんが遊んでいる間に、勝好くんは逃走してしまった。Sランクのくせに。
まぁ追いかける楽しみができた。
「勝好くーん、いま行くよ~」
いよいよクライマックスだね。
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