8,「夜まで待てないので、来ちゃいました」。
──守谷勝好の視点──
昼過ぎ。
良汰が約束の時間に来ないので、勝好は腹が立った。
それで思いついたのが、良汰の姉の華だ。
これまでは、子分の姉なので手を出さないでいた。
だが時間に遅れた良汰への罰として、今日は華とヤリまくるとしよう。
最上級国民といっても、たかがBランク。阿相華に拒否権はない。
最上級国民の中もまた、階層社会だ。
Sランク守谷家の長男である勝好は、その中でもトップクラス。全てを思い通りにできる。
それでタワマンの良汰の住まいへと向かった。
管理人に命じてマスターキーで開けさせたところ──
リビングには良汰と、その父親の死体。
父親は首がなく、良汰は腹から『中身』が引きずり出されていた。
「な、なんなんだ、こりゃあ……?」
気づけば、警護主任が後ろにいた。
葉島小夜。
ヒエラルキーでいえば、葉島の身分は最上級国民の最下位クラス。
しかし突然変異の戦闘力だけは、並みのSランクさえも上回る。
そして、いい女だ。
今はまだ手出しできていないが──いつか口実を設けて、モノにしてやるつもりだった。
「畜生。おい葉島、良汰のバカが殺されていやがる」
「勝好さま、ただいま報告が入りました」
それから、キーのことを聞かされた。
キーの実家は全焼。焼け跡からは、キーを含めた死体の山。
司法解剖によると、火事の前に殺されていたようだ。拷問され、全身の皮をはがされて。
「……な、なんだそりゃ」
「旦那様より、ただちに戻るようにとのことです」
守谷家に戻り、父親である守谷卓が待つ書斎へ。
「バカ息子が! 貴様、何を怒らせた?」
これが守谷卓の第一声だった。
デスクの向こうで腰かけたまま、鋭い眼光を放っている。
「お、親父。俺のせいじゃねぇよ。どこかのイカレた野郎が、俺のダチたちを殺してんだよ」
「安藤の死体も発見されている。何か思い当たることはあるか?」
「安藤が?」
安藤とは守谷家が使っている警察官の一人だ。
昨夜は勝好の指示で、目撃者を消させたはず。東京湾に沈めたはずだが。
ハッとした。
目撃者の妹は、キーへのプレゼントにしたのだった。
だが、たかが庶民のクズが、最上級国民を殺せるはずがない──。
その時だった。
書斎の窓を突き破って、人が転がり込んできたのは。
そいつはゴロゴロと転がっていき、壁にぶつかって止まる。
それから、ゆっくりと立ち上がった。
高校生か? 男だろうが、中性的な顔立ちをしている。
そいつは室内を見回してから、お辞儀した。
「どうも、はじめまして。南波知樹といいます。夜まで待てないので、来ちゃいました」
そして勝好を見た。
「ようやく会えましたね」
「てめぇが良汰たちを──」
刹那。
南波知樹の体が虚無に飲み込まれ、消滅した。
葉島小夜のユニークスキル《虚無球》だ。
どんな物質も飲み込み消滅させてしまう最強のスキル。
「勝好さま、お怪我はございませんか?」
「ああ──」
それから勝好は腹を抱えて笑い出した。
「南波知樹ってのは、とんだ間抜けだったな! 自分から殺されに来るとかよ! なぁ、親父? たいしたことはなかっただろ──あぁ?」
デスクの上に、南波知樹が立っている。
電動ドリルのドリルビットを、守谷卓の頭頂部に押し込んでいる。
ぐぉぉぉという電動ドリルの音。
さらに頭蓋骨が砕け、脳みそが破壊される音。
守谷卓は座ったまま、激しく痙攣していた。
眼と鼻と口から血が流れ出ている。
「……お…………おや……じ………????」
南波知樹がドリルビットを引き抜いた。
笑顔で、
「どうもです」
守谷卓が顔面からデスクに倒れた。
「…………お……オヤジぃぃぃぃぃぃい!」
★★★
時は5分ほど遡る。
──主人公視点──
僕は、守谷家に投げ込んでもらうことにした。
というのも、守谷家のセキュリティが半端ない。ゆったりと侵入していては、すぐに発見されてしまう。そこで、守谷家の敷地の外から投げ込んでもらう作戦だ。
「小梨くん、遠慮せずに投げてくれていいよ」
小梨くんは僕の体をつかんで、
「誰が──遠慮なんかするかよぉぉぉ!」
投擲!
何だか憎しみがこもっていた気がするけど──気のせいだよね。だって小梨くんは友達だもの。
とにかく、僕は物凄い勢いで飛んでいき──
守谷家の書斎の窓を突き破って、室内に転がり込んだ。
僕の影の中には、美弥と早苗さんも入っている。
さぁ、スポーツ漫画の主人公のように爽やかに言おう。
楽しんでいこうっ!
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