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6,人類はみな兄弟だよねっ!

 


 ~主人公の視点~


 配達トラックが異次元を出て、国会議事堂に突っ込んだ。ところで議事堂内は無人だ。


「あのー、デリ子さん。運んでもらって文句を言うのは筋違いだとは思うんですが。なぜに議事堂に突撃することに?」


 デリ子さんは運転席から出て、ストレッチ体操をはじめた。長距離運転は大変だよね。


「うんっ。安牌家から配達の依頼があったから」


「安牌家?」


「そ。かつて【四徳家】が封印した、最も恐ろしい一族。安牌家の四兄弟は、誰もが【四徳家】当主格の力を秘めている」


「はぁ。その安牌家さんたちが、なんの配達を依頼したんですか?」


 デリ子さんはニッコリ笑って、僕を指さした。それから笑顔のまま運転席にすべりこみ、僕たちを残して走り去ってしまった。

 残された僕は、早苗さん、カナさん、サニ子と顔をみあわす。


「もしかして『オリ子さんの依頼』というのが嘘だった? 僕たちを配達トラックに乗せるために?」


 サニ子が腕組みして唸る。


「デリ子。あいつは昔から、どこかずる賢いところがあったからな。癪な奴だ」


 一方の早苗さんは、そこまで騙されたという感じは抱いていない様子。


「だけど考えようによっては、助かったわけだよね? だってあのままだと、神子島+佐伯楓との戦いだったわけでしょ。勝てなかったよ」


 僕としては、オリ子の支援じゃなかったのが、残念といえば残念。


「けど何が嬉しくて、議事堂内に安牌家さんはいるのだろうね」


 という僕の素朴な質問に、ちゃんと丁寧に答えてくれる人がいた。


「それは、今やおれ達が日本という国を動かしているからだ」


 と、議事堂中央に現れたのは、長身でにこやかな男の人。

 ははぁ、さては安牌家の人だな。まさか通りすがりの人ではあるまい。

 いやまて。通りすがりの人だったら、失礼だろう。まずちゃんと、名前を聞いておこう。


「どなたですか?」


「俺は安牌家の三男、丹治だ。いまや日本の舵取りは、われら安牌家が行っている」


【四徳家】が治めていたというのに? いまや一つの家族が──それも初耳な家族が。


「なんじゃらほい、という気分だね早苗さん」


 早苗さんが推察する。


「知樹くんが【四徳家】の強いところを殺しすぎたせいで、すっかりパワーバランスが狂っちゃったとか?」


 えー。そっか。

 僕は安牌丹治さんに尋ねた。


「ところで、僕を配達させて、なんの用ですか?」


「貴様の首をとれば、神子島尊を出し抜けるからな」


「え?」


「とぼけても無駄だぞ、イコライザー。神子島が、『イコライザーを保護せよ』指令を出したんだからな」


 ふむ、これはおかしい。神子島さんは、僕を殺したがっていた。なのに、なぜ『イコライザーを保護せよ』なんていう命令を? 

 それで気づいた。

 なるほど。さすが神子島さん。僕を保護せよ、という命令を出せば、神子島さんの敵対勢力が、僕を殺そうとするわけですよ。まさしく、この安牌家のように。


 ただまさか神子島さんも、僕を追い詰めたときに、横から掻っ攫われるとは思っていなかったのだろうなぁ。


「みんな、仲良くすればいいのにね」


 早苗さん、なぜか返答に困る。


「知樹くん、うーん、知樹くん。可愛いなぁ知樹くんっ!」


 で、なぜか僕の右耳の穴を舐めてきた。たぶん深い意味は、ない。


 僕は安牌丹治さんに向かって言った。


「聞いてください。ここは平和的な話し合いを行いましょう。おそらく僕たちの利害は一致するはずです。というのも、僕は神子島さんから保護されるような立場ではなく──」


「問答無用だ。貴様の首をいただき、神子島に安牌家を軽んじたことの罰を受けてもらうのさ。そうだろ、姉さんたち?」


 丹治さんの呼びかけにこたえて、三人の男女が現れた。

 つまり安牌家の四兄妹が全員集合なのかぁ。


 ところで安牌家の人たちが、なぜ【四徳家】から嫌われていたのか分かってきたぞ。それは彼らの戦闘力だけのことじゃない。話し合いをしない人たちだからでは?


 安牌家の長男、佐嘉さん。


「わが領域に入る者は、砂と化す。わがスキル《砂漠の世界(サハラ)》でな!」


 佐嘉さんの周囲の椅子とかが一瞬で砂と化した。


「おお、凄いですね」


 安牌家の次男、路田さん。


「オレ様の刃は、どんな物質をも切断できる。《完全なる裂断(ブレイドイン)》だ!」


 と言って、両肘から真空刃が出現。


「おお、こっちも凄いですね」


 安牌家の長女、由香里さん。


「わたしは標的の心臓を止めることができる、完全暗殺スキル《生存確率0パーセント(エンドオブワールド)》でね!」


「おお、それは極め付きに凄いです」


 そして丹治さん。


「俺は家族の守護者だ。俺のスキルは、《家族の聖域(セーフゾーン)》。《家族の聖域(セーフゾーン)》内では、俺や俺の家族への攻撃は無効化される」


「おお──ふむ」


家族の聖域(セーフゾーン)》は、この議事堂内にすっかり展開されているようだ。つまり、僕は安牌家の皆さんに攻撃ができない。

 なぜならば、僕は彼らの家族ではないからだ。


「貴様の敗北は決定的だイコライザー! 貴様たちは、おれにもおれの家族にも攻撃できない! 《家族の聖域(セーフゾーン)》のもとでは無力だ! おれたちの家族ではないのだからな! はっはっはっはっ!」


 いや、まてよ。

 本当にそうなのかな?


 人類は、みな兄弟ではないか。


 人類みな兄弟なのだから、僕は《家族の聖域(セーフゾーン)》の部外者ではなく、同じ側。すなわち、家族同然ではないか。


 安牌家の皆さんと家族同然ならば、もうこれは《地獄神(ヘル・ゴッド)》で脳髄破壊しても良いということでは?


 なぜならば、ときには殺し合うことが、家族の愛情表現となるから。


 そう、これは愛情表現に他ならないのです!


「愛していますよ~、皆さん!」


 僕は朗らかにそう宣言してから、《地獄神(ヘル・ゴッド)》片手に駆けだした。


 不思議なことに、安牌家の皆さんにドン引きされたけど。


 さぁ、行きますよー。



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