4,拷問されるのが気持ち良くなってきたら、いちど立ち止まって考えてみよう。私はドMではない、ドSだと。
さて。そのころ我が愛する妹はどうしていたかというと──
というか、【無限ダンジョン】に忘れてきちゃった。
~美弥の視点~
復活した佐伯楓に、美弥は手足切断祭の被害にあった。その後、最下層では兄貴と楓たちが戦い──置いてきぼりをくった。
「兄貴。覚えてなさいよ。妹を置き去りにするなんて……とにかく、ここから離れないと駄目ね」
自前の《自己回復》では切断された手足までは回復できない。そこで仕方ないので、ごろごろと転がることにする。ごろごろ転がるのは、自宅に炬燵があった者ならば、誰しもが得意。
しかし気分よく転がっていたところ、何者かに踏まれて止められた。
睨んで見上げると、神子島とかいう男だった。
「ちょっと、人さまを踏みつけないでくれる? 何より、あたしはこのダンジョンのボスなのよ。もっと敬意を払いなさい」
「あいにくだけど、この【無限ダンジョン】は僕が制圧させてもらったよ。ま、悪く思わないでくれたまえ。だるま娘」
「正しいモンスター名は、猫娘! いまは手足なくだるまだとしても、正しく言って欲しいわね」
「さて。君を生かしているのは、まだ君には利用価値があるからだよ、メス猫」
「う~ん、間違ってはいないけれど、メチャクチャ腹立つわね。あんたの顔を生きたまま剥いで、むき出しになった神経中枢にタバスコをぶっかけてやりたいわ」
「君の兄は、どこに逃げたのかな?」
「知っていたら、教えてあげるのよね」
と、心から言った美弥だが、神子島は信じなかった。または基本的に誰の言うことも信じない方針なのかも。
「聖羅さん、彼女をお願いしてもいいかな?」
新たに現れたのが、金髪の白衣を着た女子高生。なぜ女子高生と分かるかといえば、女子高の制服の上に白衣を着ていたので。
「承りです、神子島さま。さぁ美弥ちゃんだっけ? お姉さんと遊びましょうね~」
手足のない美弥の襟首をつかんで、引っ張っていく聖羅というJK。
とある部屋に入ると、そこには歯科医の装置的なものが置かれていた。
「美弥ちゃん、紹介したげる。これがアタシのスキル《精神破壊の王》が具現化した拷問器具。この拷問器具からは、数多の小型ドリルが伸びてきて──」
《精神破壊の王》の拷問器具から、チューブにつながった小型ドリルが、無数に伸びてきた。
「美弥ちゃんの痛いところを、がんがんイジメてくれるというわけ~」
「小型ドリルって、兄貴のパクリじゃないの」
「パクリじゃありませーん」
というわけで、数多の小型ドリルが、美弥の全身を刺し貫きだした。
「ああぁぁぁぁあぁあ!!」
さすがに痛いので、悲鳴をあげる美弥。聖羅とかいうバカ女を喜ばせるのは癪だったが。
そして地獄の時間が終わったところで、聖羅が自慢の様子で説明しだす。
「《精神破壊の王》が優れているのはね、《精神破壊の王》でイジメた傷は、治せちゃうということ」
聖羅の言うとおり、《精神破壊の王》の小型ドリルで開けられた身体中の穴が、一気に回復していった。
一方、楓に切断された手足は変わらず無いままだが。
「凄いでしょ、美弥ちゃん。こうすれば、何度でも美弥ちゃんの全身を穴だらけにできるわけ。死にそうになったら、回復させちゃうからね。
何百回、何千回と身体中をイジメ抜かれる痛みを味わえるんだよ? さ、殺してほしいなら、お姉ちゃんに教えてみようか。君のお兄ちゃん、6代目イコライザーの居場所を」
「知らないものは、知らないわよ」
「美弥ちゃん。そんなに痛いのが好きなら、またやってあげるね~」
というわけで、またも無数の小型ドリルが、美弥の全身を貫きだした。
この地獄のような痛みが続いていると、だんだんと気持ちよくなってきた。
新しい世界に目覚めそう。それは痛みと快楽が同一の世界。それにただ痛いだけではなく、残酷に虐げられながらの痛みというのが、またポイント。この被虐の海に身をまかせ、心地よい気持ちは絶頂にむかい──
で、美弥はハッとする。
(ちょっとまって! あたしはドMでなく、ドSのはず。痛みは与えられるものではなく、与えるもの。あたしは常に、手足切断祭の主催者側であるべきよ!!)
真の自分を取り戻したことで、猫娘の美弥は進化した。
《自己回復》がバージョン更新。《自己回復LEVELⅡ》は、切断された手足の再生さえも可能。
もちろん、速攻で手足再生。
五体満足に戻った美弥が、跳ねるように立ちあがる。
驚愕する聖羅。
「ちょっ、なんで復活してんの?!」
美弥はそんな聖羅へ、《闇黒の爪》を突き付けた。
「さてバカ女、ぬるい拷問しちゃって。このあたしが、本場の拷問というものを教えてあげるわよ。当然、あんたの身体でねっ!」
やはり拷問とは、されるより、するものだ。
アクティブ最高。
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