表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/180

2,やっぱり暴力が地球を救うよね。

 


 僕のゾンビ娘が、跡形もなく吹っ飛んで──


 いや、僕の顔に脳味噌の欠片が張り付いていた。これがカナさんの、最後の断片か。さすがのアンデッド・クイーン(死体女王)も、これではお終いじゃないか。


 まてよ。まだ時間さえ稼げれば手はある。しかし。


 後ろには、【乱打の王(ランダムヒット)】のラン子さん。

 前には復活した楓さんと、神子島さん。


 うーむ。もしかして、絶体絶命?


 というわけで楓さんが、僕の心境を代弁してくれた。


「どうやらイコ君。いよいよキミのイコライザー人生も終わりを迎えるようだね。ボクが喜んでいると思っちゃ困るよ。ボクとしても、この展開は残念なわけだよ。けど、なるようにしかならない」


「甘いですね、楓さん。僕には、心強い味方がいるのです。そろそろ駆けつけてくるころですね。……あと五秒。はい、いま! あれ、来ない……まぁ、いいや。一人で頑張ろう」


 とたん影が落ちてきて、早苗さんの姿となった。


「なんだ早苗さん、かぁ」


「知樹くん、そこ、ガッカリするところじゃないよね!?」


「もっと『意外なあの人が味方に駆けつけてくれた!』的なのを期待していたんだけど」


「ふっふっふ。知樹くん、わたしもやるときはやるモンスター。『意外なあの人』を影の中に入れてきたよ」


 早苗さんの影を見やる。


「え、もしかして小梨くんが? 男の熱い友情?」


「あ、小梨くんは家の用事があるから帰った」


「男の熱い友情は?」


 ラン子さんが前に進み出てくる。あの女児のパンチは、一発でカナさんを吹き飛ばしたんだっけ。しかも間合いも関係なしに。


「神子島くん、ここで6代目イコライザーを殺しちゃって、構わないんスね? あとでオリ子が怒っても、ウチはかばわないっすよ!」


 対して神子島さんは、親しみ深く微笑みながら。


「問題ないよー。オリ子は、この程度で死ぬイコライザーには興味ないさ。また『繰り返し(リピート)』が起こって、7代目を探すだけだ。さ、だから殺しちゃって」


 ラン子さん、やる気まんまん。


「覚悟するっスよー、6代目イコライザー!」


「いちおう言っておきますけど、僕は死んでも生き返ります」


「わかってないっスねぇ。イコライザーにはただ一人、『殺せる者』が設定されているんスよ。それがウチなんスよ、6代目イコライザー。それこそが、【乱打の王(ランダムヒット)】の存在理由!!」


 えー。そんなの、いま聞かされても困るんだけど。

『初回特典ではじめの一か月が9割引きなので購入したネット商品が、実は12ヵ月払い縛りでキャンセルできない』と知ったときの、詐欺感。


「では死ぬっす!」


 ラン子さんの拳が、いま放たれる──。


 まいった、死んだ。


 瞬間、早苗さんの影からサニ子さんが飛び出る。


「《絶対幽閉(パーフェクト)》!!」


 サニ子さんのスキルが創った小箱が、ラン子さんを閉じ込める。

 しかし、すぐにラン子さんが『ただのパンチ乱打』で箱を壊し、出てきた。


「サニ子! お久しぶりっすね!!」


「まぁなラン子」


 僕も挨拶せねば。


「サニ子さん、おはようです」


 サニ子さんがちらっと僕を見てから、


「南波知樹!! 今回ばかりは手を貸してやるよ!!」


「僕が好きだからですか?」


「バカか。何度『繰り返し(リピート)』が起きても、私は自分のダンジョンを持てんからな。だからここいらで、シナリオを壊すときだ。私の、つまり【衛生化の王(サニテーション)】のためのダンジョンを持つためにな!」


 おお。これぞ素晴らしき利害の一致。


 神子島さんが腕組みして、首を振る。


「やれやれ、これは意外な展開。これ以上、シナリオを壊してもらっちゃ困るなぁ。楓くん、頼むよ」


「はいはい」


 楓さんが複雑そうな表情で歩いてきた。


「イコくん。またキミと殺し合えるんだから、ボクも嬉しいんだけどね。神子島の駒に成り下がってなかったら、もっとワクワクしていた」


「ですよねぇ」


自爆(セルフプレイ)》から、楓さんの背後で完全復活。


 楓さんの頭頂部に、《地獄神(ヘル・ゴッド)》のドリルビットを叩き込んで。

血管巻き取り(ウィンディング)(脳神経VERSION)発動〉!


「痛痛痛痛っっっ、イコくん、これ、地味に痛いぞ、ボクの脳神経、痛覚あったのかぁ、痛痛痛っ」


 楓さんの脳神経を巻き取りながら、早苗さんを呼んだ。


「早苗さん、ちょっと《地獄神(ヘル・ゴッド)》もってて。脳神経を巻き取っている間は、楓さんは動けないから」


「え、」


 早苗さんに《地獄神(ヘル・ゴッド)》を渡して、僕はまだ顔に張り付いていた『カナさんの脳漿』をはがした。


 そして、かつてオリ子からもらった《種族チェンジ》(使用可能回数ラスト)を発動。


「さぁ、カナさん。ゾンビを越えたモンスターとして、復活するのだ」


 通常の使用方法は、人間をモンスター化することだろうけど。ここでゾンビの欠片を、さらにモンスター化することで、より強いモンスターが生まれる──たぶん。


 しかし脳漿の欠片はビクしもしなかった。


「失敗? そんなカナさん──」


 瞬間、脳漿の断片が飛翔。

 サニ子さんと戦闘中だったラン子さんの、その右耳に飛び込んだ。右耳から脳内まで這いずっていく。


 ラン子さんが両手をつきあげて、絶叫する。


「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁあウチの脳味噌がぁぁぁぁぁあ喰われるぅぅぅぅうゥゥゥゥゥゥゥぅぅ!!!、あっ」


 とたん頭部が破裂。


 つまり、カナさんの脳味噌の断片が、ラン子さんの脳味噌を食らい尽くしたのかぁ。


 そしてカナさんの『頭部から右上半身』だけが、ラン子さんの残骸から出てきた。

 それが一生懸命、こちらまで這ってくる。


「ゾンビも進化すると、クリーチャー度が増すようです」


 と落ち込んだ様子のカナさん。


 ハッとして神子島さんを見やる。ラン子さんの死は、さすがの神子島さんにも予想外だったらしい。組んでいた腕を、解く。


「どうやらイコライザーを狩るのは、同じイコライザーの仕事らしい。6代目くん、覚悟してくれ」


 サニ子さんが言う。


「南波知樹! 初代イコライザーに《八大地獄神(エイトヘル・ゴッド)》の力を使わせるな! とんだことになるぞ!」


 いやぁ、いきなり言われても困る。


 瞬間。次元が裂けて、配達トラックが飛び込んできた。急ブレーキ。


宅配の王(デリバリー)】のデリ子さんが、運転席から顔を出す。


「オリ子さんから、配達の予約頼まれたんだけど。荷物、どこ?」


 僕と早苗さんが挙手した。


「「ここ!」」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ