4,オリ子、友達からカネを借りていた(ダメな奴)。
天空が落ちてくるのに、注意を取られていたら──
気づいたら、脳天から股下まで真っ二つにされていた。
うーむ。デス子さんは、先ほどの位置から動いていない。それに斬撃とかが飛んできたわけでもない。それなのに、あっけなく真っ二つです。
真っ二つからの完全復活。
それを見て、デス子さんが視線を鋭くさせる。
「ほうほう、ほーう。《殺しようがない》の持ち主ということは、てめぇ、オリ子の知りあいか?」
デス子さんとは、戦わずに済ませたいものだ。話し合いで解決できるに越したことはない。
そこで考える。オリ子とデス子さんは、友達に違いない。
同じ女児仲間だし。きっと友情テレカ的なものを持っているはずだ。
という、浅はかなことを考えました。
「そうなんですよ。オリ子さんとは、僕はツーカーの仲でして。友達の友達は、友達といいますよね? かくして、世界は平和になるのです」
デス子さんはうつむき加減になり、両肩をぴくぴくと震わせた。3秒後に、これが怒りのためであると分かるのだ。
「オリ子……あいつのせいで、こっちは【原初ダンジョン】に閉じ込められるハメに……しかもあいつには、カネを貸したまま……取り立てようにも、こっちはここから出られねぇし……しかも大切にしていた、鯱を食われるし……許せねぇ」
わぁ、うちのオリ子さん。
各地で、恨みを買っていた。
やめてほしいものだなぁ。僕が迷惑するから。
「あのー。さっき、オリ子さんと友達的なことを言いました? 違うんですよ。僕も、アンチ・オリ子でして」
「てめぇを殺して、鬱憤を晴らしてくれるぜ!」
そのときだ。後方から、声をかけられた。
「知樹さん! 新しい顔ですよ!!」
で、ボーリングの玉のようなものが、僕の後頭部に思い切りぶつかる。
「痛っ!」
足元をゴロゴロと転がるのは、ボーリングの玉ではなく、カナさん生首だった。
「……何がやりたかったの、カナさん?」
カナさんは真摯な瞳で言うのだ。
「ごめんなさい。一度、やってみたかったのです」
まてよ。カナさんはいまも生首だけ。胴体は【無限ダンジョン】にあるから当然なのだけど。では、いまはどうやって飛んできたのだろう?
尋ねてみると。
「はい、実はパーティ仲間を増やしまして。いうなれば、下僕を増やしたのですが──えーと、彼らに投げてもらったわけですが──なんといいますか」
カナさんは、何やら言いにくそう。
というか、まるでトラウマでも吐露するかのように、苦しそうだ。一体、行方不明になっている間に、カナさんの身に何が起きたというのか──
すると牡牛ゴキが5匹ほど、猛スピードで走ってきた。今回は失神しないように頑張る。
そして、そんな牡牛ゴキたちは、なぜかカナさんの周囲で、ひざまずく(ゴキでもひざまずける、という新発見──別に嬉しくないぞ、こんな発見)
そして僕は、あまりに恐ろしいことに気づいたのだ。
「……この蟲たちが、カナさんの新たな下僕たち? つまり、ゾンビにした牡牛ゴキ?」
「……はい」
ゾンビ化するためには齧りつかなければいけないわけで。
あぁ、カナさん。
おえっ。
ゲロった。
「知樹さん! 想像で吐くなんて酷いですよ! 齧った当人は、どうすれば良いのですか!」
「まぁ。とりあえず、逃走用の足にはなりそうだね」
心から、いやだけど。
背に腹は変えられない。
僕はカナさんを抱えたまま、牡牛ゴキゾンビの一匹の背にのった。
「ひとまず、退却~」
デス子さんを倒すには、能力を解明する必要がありそうだ。