3,【破滅の王:デストラクション】のデス子さん。
ご無沙汰です。
………
……
…
「うーん。長らく気絶していた」
説明口調で目覚めたところ、じめじめした洞窟の中だった。
何か忘れているような。
そう、なんかボールみたいなのを持っていた。ボーリングの玉みたいなのを。
譬えるならば、生首を。
いや、本当に生首を持っていたんだった。
カナさんの生首を探してみたが、見当たらない。生首というものは、おむすびのように転がるものです。
ここの洞窟は緩やかに傾斜しており、奥へ奥へと続いている。
カナさんの生首を求めて、僕は地道に降りていった。
やがて、思いがけなく広い空間に出る。
そこには質素な村ができていた。ほう。【原初ダンジョン】にも、悪魔さん以外に人が住んでいたのかぁ。
これぞ長老です、という方が、村人を伴って現れた。
「ようこそ、外の世界からの来訪者よ!」
「あのー、これくらいの大きさの生首、見ませんでしたか?」
僕の質問はスルーされて、
「我々は、【原初ダンジョン】に何万年と住まう種族です。《殺しようがない》の所有者であるあなたさまに、是非とも我らを脅かす悪鬼羅刹を退治していただきたい」
「ははぁ。牡牛ゴキのことですね」
「ハギロゴキブリのことでしょうか? いえ、あの程度の低俗な蟲は、我らが駆逐できます。しかし、あの悪鬼羅刹は、我々では対処できない。どうか、あなた様のお力が必要なのです」
僕の《殺しようがない》が知られているとは。いつのまに、別世界にまで知られていたのだろう。やっぱりSNS効果?
にしても牡牛ゴキブリって、僕の中では最強なんだけど。
とりあえず安請け合いしておく。
「任せてください」
これ、自分で言うのもなんだけど悪い癖だと思う。
長老さんからMAPをもらった僕は、さっそく出発。
入り組んだ洞窟を歩いていくと、外に出た。
そこにはハリウッドあたりで見かける大豪邸(なんという場違い)が建っていて、近くには全自動の食肉加工工場まであった。
うーむ。
豪邸の中へと入る。とくに警報とかは鳴らなかった。
「お邪魔しまーす」
テニスができそうなリビングの中央には、ふかふかなソファ。そこに腰かけるは幼女。
鋼色の髪をツインテにした、オリ子とはまた違うオーラを漂わせた幼女がいた。
「まって、当てます。あなたは──デス子さんですね!」
というのも、その幼女は大きな大鎌を装備していたので。
サウザンドアイランドさんの過去回想が役にたったなぁ。
「気安くデス子と呼ぶんじゃねぇ! わしのことは、【破滅の王】のデス子さま、と呼びやがれ!」
僕は挙手して、
「デス子さま、だけではダメですか?」
「不可だ、ボケ!」
「でしたら、【破滅の王】のデス子さま」
【破滅の王】のデス子さま、実に満足そう。
「正しく呼べた褒美として、らくに殺してやろうじゃねぇか!」
「あのー、いちおう言っておくと、僕は殺されても死なないんですけど」
「なにを意味のわかんねぇことを言いやがる!」
デス子さんが大鎌を一閃。
──させたとたん、外から百万の落雷が起きたような音。
窓から見てみると、【原初ダンジョン】の天空が切り裂かれ、落ちてきた。
ふーむ。
以前、サニ子さんを倒すのにも、けっこう苦労したけど。
これはまた、大変そうな──。
やはり安請け合いなんて、するものじゃない。