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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

小人と爆弾

拙い文章で書いていたり、詳しい知識が無いので

色々疑問な点があるかと思いますが

目を瞑っていただければ……(逃)

 ある人の国の外れにある、深い深い森。

 その森には様々なら種族が住むと言われ、そこには人間の手の平程の大きさしかない小人族も住んでいるんだとか




 「おいピヨン今日も狩りサボるつもりかよ」


 家の外から同い年のションの声が聞こえて来る。

 狩りなんて男に任せておけばいいのだ。どうせ「落ちこぼれ」の私が行った所で足を引っ張るのがオチだ。


 「そんな事よりムラサキヒカリダケの研究を進めなくては」


 今私の作業台の上には紫色に妖しく光るキノコが置いてある。これは毒キノコだ。

 毒キノコは面白い、村の人達は毒の有用性と面白さが分からないんだから、小人生、損していると言っても過言じゃないさ。

 私が今取り掛かっているのは毒爆弾の作成だ、爆弾といっても人が使っているような爆弾とは一味違う。

 中に勿論火薬は仕込むが、普通の爆弾より遥かに少ない、その代わりに仕込むのは毒キノコの胞子だ。

 火薬で爆破させて、その爆風と共に胞子を振り撒く事で、敵を毒でやっつけるという物、これで狩りは楽になるし、中々良い発明をしたと思うぞ。


 「では早速……」


 ションに無理を言って狩りの帰りに取ってきて貰った、ムラサキヒカリダケの胞子を採取する。

 小人族に毒は効かないので、そこに関しては気を遣わなくていいが、なるべく胞子を無駄にしないよう丁寧に取っていく。


 そして取った胞子を、これまたションに取ってきて貰った赤鼻バエに食わせてみる、赤鼻バエはもがく暇も無く生きる事を辞めた。

 虫は毒に耐性のあるものが多いが、赤鼻バエは殆ど毒への耐性は無い。

 いつも小人族が主食にしているカエルは残念ながら毒への耐性が強いが、ご馳走としてでる兎は赤鼻バエと変わらない。


 「食べてこれなら、ムラサキヒカリダケは中々期待できるのでは?」


 とりあえず、とムラサキヒカリダケの胞子を布で包んで戸棚にしまい、ベッド脇に置いてある手袋に手を合わせて外に出る。

 もうすぐ狩り組が帰ってきて、広場で晩ご飯が配られる頃だ。


 「今日は兎取れたのか、中々やるじゃんションのヤツ」


 そう言いながら、テーブルの影に隠れて目ぼしい物をくすねて行く、村の人達から変人扱いされ、狩りもサボってる身だ、堂々と晩ご飯を食べるなんて出来ない。

 お、甘酢煮に、香草焼き、クワチラの実のゼリーまであるじゃないか、今日はご馳走だな。


 「おい、ピヨン」

 「……ビクッ」


 うげっ見つかっちまった。幸い相手はションだけれど、ションのやつ、さっきまでよく兎取れたな!って中心でチヤホヤされてたじゃないか!いつこっちまで来たんだよ……。


 「や、やぁションよ、今日はお日柄も良く……」

 「もう、日沈んでるから……そんなくすねてないで、堂々と食べればいいじゃんか」


 堂々と食べればいい?そんな事出来るなら、こんな事やってないってのに!


 「堂々としていて何も言われないなら困ってないさ!」


 全く、これだから無自覚に周りに愛されてる奴は……。

 自分が感じてる幸せは誰でも一緒だなんて思って欲しく無いね!


 「おい、ピヨン!ちょっと待てよ!」


 正直脳内お幸せ野郎に食事の邪魔はされたくないね。

 面倒なのでさっさと家に帰る事にする。




 「あぁ我が家が落ち着く……」


 私の家は村の外れの方にある。村の中心から遠いのは、ご飯を取りに行く時面倒だが、村の騒々しい雰囲気は嫌いだ。

 貰ってきた兎の肉の甘酢煮と、クワチラの実のゼリーをやけ気味にかっこむ。


 こんな時は好きな事をやるに限るのだ。

 まず、ノリの役割を果たす、クワチラの葉をすり潰した物と硬く強い岩を砕いた物と混ぜてペースト状にする。

 それを半球に整形し、焼き、乾燥させるのだ。

 出来た爆弾の外殻に火薬とムラサキヒカリダケの胞子を詰め込み、導火線だけ出してクワチラのノリでくっつければ完成だ。

 一般的な爆弾の作り方とは異なるかもしれないが、それが私流の作り方である。


 爆弾の元をかまどにぶっ込み朝まで置いておく、家事の心配は無い。

 この村のかまどにはみんな同じセンサーの様な物が付いている。これは私の父が発明したらしく、かまどに少しでも異変があるとブザー音で知らせてくれるという物。

 私の両親は立派な発明家だったらしい、カエルを狩る為の槍なんかも両親の発明らしいし、私とは正反対だ。

 その両親は私がまだ幼い頃、猪に食われて死んだらしいが、今でも遺品である父の手袋は大事に取ってある。


 「ふわぁっぁ……」


 あぁ眠い、もう寝よう。

 日々の活力は質の良い睡眠から来ているのだ。



 「上手く焼けたな」


 朝かまどを見ると、バッチリ固まっている黒い半球が六つ転がっている。上出来だ。

 空いている部分に火薬と胞子を詰め込み、ロープを導火線として出したまま、半球同士をくっ付ける。

 これで、毒爆弾の完成だ。

 朝ご飯の配布までまだ一時間ある。その間に威力を試してみようじゃないか。


 森に出ると、そこそこの大きさの兎が一匹。

 やっぱり怖いなぁ……ションとか呼んでくれば良かったか?いやいや、あの無神経野郎なんて呼んでも邪魔なだけだ。

 大事なのは勢いだ。何事にもチャレンジするのが大事だと父も言っていたらしい。


 「とりゃぁあ!!」


 火をつけた毒爆弾を兎の顔面目がけて投げつける。続けてもう一つ!

 バンッという破裂音と共に辺りに紫色の煙が立ち込める。

 うっ臭いなぁ……この臭いはキツい……。

 そんな事を思いながら鼻を摘んでいたら、煙が晴れてきた。よく見ると兎がコロッと転がっているじゃないか。


 「実験成功か……?」


 慌てて駆け寄って見てみると、完全に兎は死んでいた。毒で目と鼻をやられたのかそこだけ変色している。


 「やったぞ!実験成功だ!」


 二発で兎を殺せる威力、中々の物だ。

 村長に報告してやろうじゃないか!

 私は鼻歌を歌いながら、余った一つの爆弾と兎を引き摺りながら村へ向かった。


 「村長ーーー!」


 こんなに晴れやかな気持ちで村長に会いに来たのは久しぶりだ。

 いつもは大体お説教の呼び出しを食らって会いに来るってパターンだからな。


 「なんだ?ピヨン、忙しいから早く行ってくれ」


 この男は少しは自分の感情を隠したらどうだ。

 面倒臭いから早く帰れっていうオーラが滲み出てるぞ。


 「村長私今度こそ良い発明品を生み出したんですよ」

 「その手の話は聞き飽きた、帰ってくれ」


 ちょっと待て、ここで引く訳にはいかない


 「話だけでも良いので聞いて下さい!」

 「いつもそうやって聞いてやったが、お前の発明品はいつも害を及ぼす物ばかりじゃないか、痩せて不味いカエルを美味くする為に餌を開発した時は肥大化し過ぎて手に負えなかっただろう?」

 「……うぐっ」


 過去の話には弱い……でも今回は絶対大丈夫なはずだ!

 何とかしてここは意見を聞いて貰わないと……


 「そういえば、そこに転がってる兎はなんだ?」

 「良い所に気づいてくれました!これ私が取ってきたんですよ!」

 「何を言ってる?」


 やっと食い付いてくれた!何とか説得出来れば!


 「この兎はこの毒爆弾で殺したんですよ、ムラサキヒカリダケの胞子が入ってて二発火をつけて顔に投げつけるだけで簡単に倒せました!」

 「調理場からくすねて来たんじゃないのか?」


 この男って本当に他人を信じないなぁ……。

 私がわざわざこんなデカイ兎くすねて来ないでしょ!


 「違いますよ!この鼻と目、変色しているでしょう?これが毒爆弾で殺した証拠です。他に傷痕も無いでしょう?」


 村長がやっと椅子から降りて、兎をまじまじと見つめ始めた。


 「確かにな……今回はチャンスをやる。これを狩り組に渡す、そこで有用性があると判断されたら、本格的に導入しよう」

 「ありがとうございます!!」


 久しぶりに村長に認められたような気がした。


 その後、急いで爆弾を10個作り、夕方の狩り組に渡した。

 正直狩り組は疑念の表情だが、村長の指示という事で持って行ってくれた。


 「お前、餌の次は爆弾かよ……物騒だなぁ」


 なんて、狩り組だったションに言われたが、今は勝手に侮っておけば良い、その威力が私の素晴らしさを語らずとも教えてくれるだろう。


 そろそろ、狩り組が帰ってくる、という所で私は堂々と広場に向かった。

 広場に立っている私をまじまじと村の奴らが見てくる。なんだよ、そんなに隠れてないのが珍しいか?

 きっと睨むとあっちから目を逸らした、根性の無い奴らだ。

 そんな時村の出入り口から叫ぶ声が聞こえてくる


 「おい!手伝ってくれ!今日は大漁だ!」


 出入り口の方を見ると、狩り組がよっこらせと兎を運んでいた。その数六匹だ。

 いつも兎は取れない事が多いのに何があったと広場では騒ぎになった。

 調理係のおば様達は「これは干し肉とかにしなきゃね」と言いながら笑っている。

 大量の兎達が照り焼きや、包み焼き、煮物になって出てきた瞬間、皆がっつき始めた。

 私は今日は堂々と肉を頂戴できる。


 「皆静かに!」


 皆がお祭り騒ぎになっていた所に村長の声がかかる。

 村長絶対主義のこの村はすぐさま静まり、村長の方へと体を向ける。


 「今日これだけ兎が取れた理由としては新しく使った武器にある。その名は毒爆弾だ、そしてそれを発明したのは、そこにいる、ピヨンだ。皆感謝して食べる様に」


 広場全体から歓声が上がり、周りにいる奴らがハイタッチをしてくる。

 正直態度が一変し過ぎて怖いが、不思議と嫌な気持ちにはならなかった。


 「おい、ピヨン、あの爆弾どうやって作ったんだよ、すげぇ威力じゃん」

 「ふふ、私は天才発明家だと言ったろう?」


 ふくれるションをニヤニヤ見つめながら食べる飯は美味かった。

 久しぶりに良い夢が見れそうだった。

 


 それから、毒爆弾は狩りに持っていく必需品となった。

 村全体で仕事の無い者は毒爆弾の生産に周り、私の生活も忙しくなった。

 食料の調達も楽になり、かなり生活は良くなったと思う。


 私も村での生活は楽しくなったし、村の人との関係も割と改善に向かいつつある。

 まだどこか壁が一枚あるような態度を取られるが、時間の問題だろう。

 そう、私と私達は幸せになれたのだ毒爆弾のおかげで。

 しかし、「アイツら」が来るまでは、だが。


 正直私は自惚れてたのかもしれない、自分に酔っていたのかもしれない、とにかく事件が起きたのは毒爆弾を発明してから一週間経った日だった。

 毒爆弾の生産をいつも通り行っていた時だ。いきなり地面が揺れ始めた。

 どすどすと1秒毎に来る揺れで村は軽くパニック状態だ。

 一体何があったのかと思っていると


 「おい!人間だ!人間が来やがった!」


 そんな声が村の観察塔から聞こえてきた。

 は?人間?この村が出来てから人間なんて一度も来た事ないのに?

 小人族には自分達の数倍の大きさを持つ、人間に敵う術は無い、人間を見たら逃げるしか無い。


 「おい逃げるぞ!」


 生産所には幼い子供だって多い、このままじゃ逃げ遅れて村全体でアウトだ。近くにいた奴の手を掴み外に出ようとする。


 「皆落ち着け!」


 低い声が鳴り響く、どうやら村長の声だったようだ。

 村人達は一瞬で静まり村長の方へ


 「皆、落ち着け!我々は人間に臆する事は無い!我々にはこれがあるじゃ無いか!そう、毒爆弾が!」


 そう村長が高らかに叫んだ。

 そうだ、人間は赤鼻バエ以下程しか毒の耐性を持っていない、毒爆弾なら有効だ。


 村人達は毒爆弾を持ち外に出た。

 幸い人間は一人しかいなかったが、此方に気づいたのか向かってくる。


 「一同、攻撃開始!!」


 村長の叫びと共に村人達は人間の足を狙って毒爆弾を投げつけた。

 毒爆弾の胞子で人間の足はただれ、足を押さえて蹲ったところに、村人達は顔に向かって毒爆弾を投げつけた。


 「おい、勝ったぞ!人間に勝ったぞ!」


 毒爆弾は七十個も消費したが、小人族は見事人間を封じ込めたのだ。

 その後狩り組も帰ってきて、その晩はお祭り騒ぎだった。

 「人間の肉食っちゃおうかな?」なんて言い出す者もいた位だ。


 「本当に、お前の毒爆弾って凄いんだな」

 「もっと褒めたまえよション君よ」

 「あんま調子乗ると天の父ちゃん達に怒られるぞー」


 久しぶりにションとも酒を浴びる様に飲んでぐだぐだになったまま、朦朧としながら家に帰った。

 そして、ベッドに吸い込まれるように眠りについた。


 次の日、何かがおかしかった。

 いつもなら朝飯の準備を進める活気ついた声も聞こえてきて、ションが起こしに来たりするのだ。なのにその声が一切聞こえてこない。

 心配になって、急いで村へ行った。


 だけどそこには村は無かった。


 家が崩れた瓦礫、無数に転がる死体、辺りに広がる焼け焦げた痕、そして鉛のカケラと煙の焦げ臭いにおい。


 あぁ、なんで早く気づかなかったのだろう?

 爆弾の発想源は人間の兵器で、人間が持つ爆弾は毒爆弾より遥かに威力があると言うのに。


 私は自惚れていたのだ、そして盲目になって、発明家としての意義を見失ったのだ。


 瓦礫を漁り、一つの槍を見つけた。

 焦げて折れてしまっているが、はっきりと分かった。

 父が発明し、ションが使った槍を、ただ、ただ、握り締めながら泣いた。


 


 

ここまで読んで頂き有難うございます!

良ければ評価等お願いします´`*

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