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逆鱗のハルトⅢ  作者:
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思惑の交錯⑤

「……で? 俺たちになにをさせたい」


 そこでグランが自慢の顎髭をじっくりと擦りながら問いかけた。


 揺らめくランプの灯りは濃厚な陰影を描き、円になって座る俺たち以外にも誰かがいるような感覚に陥る。


 するとウィルは唇の右側だけを持ち上げ、器用に笑った。


「俺のためによきに計らえ。それだけだ。説明はストーに任せる」


「丸投げですか――まったく。では皆さん、とりあえずの目的は達成したので今後のことを決めるために一度戻りましょう。この道も封鎖しておきたいので――いいですねウィル?」


「ああ。俺とていい加減着替えたい。おい〈爆風〉、お前は俺と一緒に『中枢』から帝国宮ていこくきゅうに戻るぞ。ここから繋がっているんだろう? ストー、終わったら来い」


 ウィルは言うが早いが立ち上がると、〈爆風〉に案内しろとばかりに顎をしゃくった。


 伝説の冒険者を顎で使うのはなんだか見ていてもやもやするけど、考えてみたらウィルは皇帝なんだよな……。


「いいだろう。熱い湯には入れるか?」


〈爆風〉は飄々と言ってのけ、軽い――だけど重心を崩さない綺麗な足取りで立ち上がる。


 ウィルは足を広げて腕を組み堂々とした態度で〈爆風〉に頷いてみせる。


「湖を一望できる最高の湯を提供してやろう。――ファルーア、湯は好きか?」


「あら、勿論好きよ」


「ではとびきりの湯を用意しておこう」


「楽しみにしているわ、皇帝」


 突然話を振られたにも関わらず余裕たっぷりで妖艶な笑みを浮かべてみせるファルーアに、ウィルは優雅な動きで一礼してくるりと踵を返す。


「ではあとでな。気を付けて来るといい、〔白薔薇〕」


 片手を上げる〈爆風〉に俺たちがそれぞれ手を上げたり頷いたりして返すと、彼らは長い階段を背にして右の道へと進んでいった。


「……そういえば久しぶりなのに、俺たち〈爆風のガイルディア〉と全然話してなかったねー」


 それを見送ってからぽつんとボーザックがこぼす。


「うん……災厄を倒したあともほとんど話してなかったもんね」


 ディティアは名残惜しそうに通路を眺めていたけど、ぱっと振り返って笑顔を見せた。


「でも、帝国宮ていこくきゅうに行けば会えるんだよね! ハルト君、せっかくだから双剣のお手入れも一緒にしてもらおう!」


「うっ……お手柔らかに頼むよ……」


 俺がそっと視線を逸らすと、その先でグランが可哀想なものを見るような目をしていた。


******


 そんなこんなでトレジャーハンター協会アルヴィア帝国帝都支部に戻ってきた。


 どうでもいいけど本当に噛みそうな場所だよな。


 ストーはすぐに支部長のシヴィリーを呼んで奥に消えてしまったんで、俺たちは広間の一画で集まっているトレジャーハンターたちを眺めているところだ。


 がっつりと鎧を着た人は少なくて……というか、あっても体の一部を覆う革鎧程度。


 正直、俺たちはかなり浮いている。 


「なあグラン。とりあえず俺たち、遺跡調査をするってことになるのかな」


 俺が言うと、グランが唸った。


「そうなるだろうよ。どういう思惑があったにせよ魚の魔物も見ちまったしな――そういやさっき『漁師組合』がどうとか言ってたな、そいつらに会ってみるって手もあるか」


「そうね。たしか帝国宮ていこくきゅうの進入不可水域とも言っていたから……きっと帝国宮に近い場所は人が立ち入れないようにしているんだわ」


「皇族がいる場所に湖から簡単に近付けるのはちょっと危ないもんね」


 頬に手を当てて物憂げに応えるファルーアに、ディティアが頷きを返す。


 俺は少し気になって口を開いた。


「魔物ってさ――一匹なわけない、よな」


「だねー。この帝都に粉を蔓延させようとするほどでしょ――相当な数が必要なんじゃないかな」


 ボーザックが応えて両手を胸の前に翳し、真剣な表情で手のひらを見詰めながら続ける。


「ねぇグラン、俺思ったんだけど……浮き袋買っておかない? あと、申し訳ないんだけどダガーみたいなのも用意していいかな……」


 ボーザックは広げた手を握って顔を上げた。


「そりゃ名案だ。遺跡が広けりゃいいんだが、毎回あんなに狭いんなら動きにくいったらねぇしな――また水が入ってきても最悪だ。念には念を入れておくぞ」


 グランは一も二もなく頷くと、俺たちをぐるりと見回す。


「ストーが戻ってきたら買い物と聞き込みだ。借りた道具は返すとして……それぞれ必要なもん考えとけ」


『おー!』


 俺たちは声を重ねて返事をすると、早速荷物の確認を始めることにした。


14日分です!

よろしくお願いしますー。

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